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ただ父として

滑り込みセーフ!です。

 ドオオオオオン!


「なんだ!何があった!」


「中庭からです!中庭にはお嬢様方が!」


「リノア...」


「リアム!俺も行く!」


 俺とカルヴィンが走る。お互い娘(・・・)の事しか考えていないのか全てをかなぐり捨ててひた走る。全くなんだって言うんだ!さっきまでカルヴィンの雷を浴びていたが外にも飛び火したか?...なんて軽口が叩けるのは娘(・・・)達の無事を確認したからだ。


「お父様?!」


 驚いた顔でこちらに振り返る...我が最愛の娘(・・・)リノア。本当は男の子だが女の子として育てている。その顔は母さんをそのまま幼くしたようで,カルヴィンには悪いがリリヴィア嬢より可愛いと身内贔屓無しで常々思っている。その髪は薄く紫色で...母さんのピンクと俺の水色を混ぜたような色。その髪から覗くのは...お袋のロゼ!何故だ!俺の遺伝子が弱かったのか?!瞳の色で不貞を疑われたが疑った本人の瞳の色で何も言えなくなったお袋を見て思わず笑ってしまって...ダメだ。思い出すと寒気がする。その後俺の黒歴史暴露大会が...って違う!今は状況を...


「何があったんだ?」


「じ,実は魔計に手を乗せたら...凄く強く光って,二つとも爆発して...」


 背中に嫌な汗が流れる...子供の魔力を計るのには簡易版で十分と判断し持ってきたのだろうが...それでは容量が足りなかったという事か。子供の魔力計測は全国民の義務である。当然だ,万が一魔力暴走を起こして辺り一体を破壊してしまったら被害が大き過ぎる上に魔力暴走を起こした者も死に責任問題が発生する。だから五歳になるまでに必ず魔力計測をしなければならない。主に年に二度,教会で測定するのだが貴族は例外である。魔力の才は現実問題出世に大きく関係する。ミーシャ家がいい例だ。魔法の才で王国の上位貴族まで上り詰めた平民の一族だ。魔力の才が無いなら終わりとまで行かないがそれだけで有利なのだ。


「...リオルヴ伯爵。」


「君は...」


「ミーシャ家序列十二位,十字のイルル・ミーシャです。リノア様の事でお話があります。」


「...聞こうか。」


「リノア様は今のままでおそらく私以上の魔力を有しております。...ですが"無"属性であらせられます。」


「そ...んな...」


 リノアが無属性…?いや,それで何かある訳では無い。可愛い娘(・・・)が魔法を使えないだけで変わるはずがないからだ...初計測で序列十二位以上?...私だって魔法使いの端くれだ。そして端くれ達の憧れであるミーシャ家の序列十二位が目の前に居て自分以上と告げている。それは喜ばしいなんてもんじゃない。リノアが...これから先不自由なく暮らせると言われているようなものだからだ。無属性でなければ...


「無属性とはそんなに悪いものなのですか?」


 リノア...そうか。この子は初めて魔法に触れたのだ。無理もな...


「属性が無ければ魔法は使えないのですか?魔道具は?先の物は魔道具では無いのですか?」


「...カルヴィン!なんでもいい!魔道具を!」


 私の勘が告げている!この子の言葉が...今まで見てきた!あの時(・・・)も!この子の言葉を私が...子供の戯言と一蹴出来るはずが無い!


「至急魔道具を!誰でもいい!」


「魔灯です!侯爵様!」


「リノア...」


「はいお父様。」


 頼む!光ってくれ!一瞬でもいい...ただ!父として子どもの才能を素直に...喜ばしてほしい...!


「行きます!」


 バチンッ!


 光った...のか?分からない。あまりに一瞬で...


「魔灯はまだありますか!」


「ここに!」


 バチンッ!


 リノアと同じようにミーシャ家の方が魔灯からおかしな音をたたせる...


「...同じです!リノア様は確かに魔道具を使う事が出来ています!...大発見ですよリノア様!これで...これで!」


 何か...並々ならぬ思いがあるのだろうか。感極まって泣いている彼女に私もつられて泣いてしまった。


「リノア...もし君が魔法を使えなくても私は同じように愛していただろう。だが,それでも使えるという事実に...喜んでいる自分は...」


「いいんですよお父様。正直私は魔法というものの価値を理解していません。ですが嬉しそうなお父様を見て私も...良かっただなんて思えたんです。」


「リノア...!」


「お父様!」


 私達は抱き合った...本当に久しぶりにリノアに触れた気がする。この子はいつもしっかりしていて,なんでも一人で抱え込んで,そんな所も愛おしくて...


「あ,アグネーゼ侯爵!」


「どうしたんだ?」


「今回の一件で一つ...懸念される事があります。今まで無属性だと魔力制御の鍛錬を免除されてきた者たちの魔力暴走です!」


「なんだって?!」


「詳しく聞かせてくれ。それが本当なら国を揺るがす問題だ。無属性は少ないとは言え我が国にもそれなりの数は居る。その一人一人が...言い方は悪いが不発弾という事か?」


「...はい。今日この場で無属性でも魔道具が扱える事...つまり魔力操作が出来る事が確認できました。それは...無属性でも制御が効かなくなれば魔力暴走を起こす。という事の裏付けになると考えられます。」


 まずいな...早期発見が出来て良かったとは喜べない状況だ。なんせ無属性は自分で魔法を使う事が出来ない。適正がなくて使える魔法が無いからだ。魔道具があればいいのだが魔灯のように人の魔力に耐えられるものは少ない。どうすれば...


「イルル・ミーシャ殿...今すぐにでもミーシャ家一同に連絡できるか?」


「...出来ます!」


「ありがとう。リアム,俺たちは王に謁見する準備だ早くて今日,少なくとも明日には片付けるぞ!」


「あぁ!」


 忙しくなるぞ...!

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