お友達
リリィだ〜!目の前にちっちゃいリリィが居る〜!神様ありがとう!やっぱり死ぬ前にやってたゲームに転生するってあるあるなんだ~。六年経っても忘れないって私リリィ大好き〜!でもアグネーぜ侯爵家って聞いてたのに気づかないなんて私もドジだな…まぁリノア・リオルヴなんてキャラ出てこないよなんて絶望してたのが大きいかな。しかもリリィがメイドに紛れて驚かそうとしてきたんだよ!ゲームでは淑女前としてたあのリリィがいたずらなんて最高すぎる!思わず目論見崩しちゃったよ。あぁメイクしてても驚き顔可愛かったなぁ。
「リノア嬢すまないね娘のいたずらに付き合ってもらって…」
「大丈夫ですわアグネーぜ候爵,私は気にしておりませんしとても可愛らしいではないですか。」
「そう言ってもらえると助かるよ。まぁ実は私の提案なんだけどねメイドに紛れると言うのは。でもここまで本気になるとは思わなくて気づかないと思ったのだけれど杞憂だったかな。」
私がリリィを見間違えるわけないでしょう。どんなに姿を変えても気づきますわ…
「しっかし本当にリリヴィア嬢とは…全く気が付かなかったよ。」
「無理もない。私だってメイクに立ち会っていなかったら気づかなかったさ。」
もしかしなくてもリリィの生まれる前の婚約者って…あのクズ王子…!アグネーぜ侯爵とお父様には悪いけど私リリィを幸せにするために王子を潰す。
「どうしたんだいリノア。」
「何でもございませんわお父様,ただ少しばかり私とリリヴィア様との将来を考えておりましたの。」
そしてクズ王子断罪計画も。
「それは頼もしい限りだ。外で話すのもなんだ,中に入ろうか。」
その後アグネーぜ侯爵からリリィの婚約者の話を聞いた。どうやらちゃんとクズに育っているようで喋っている言葉に私怨が込められていた。これは…私とリリィ結婚するときになったら助けてくれそうだな。失望されないように今以上に頑張らないと。
「すみません遅くなりましたわ。」
リリィだ~!ゲームでのリリィをそのままちっちゃくしたみたいで可愛い〜!
「私達はちょっと話があるから二人で遊んできなさい。」
「はい,行きますわよリノア様。私がお庭を案内いたしますわ。」
「よろしくお願いしますリリヴィア様!」
リリィとお庭デートだやった〜!
「リノア様は私とお友達になるために来たと聞いていたのにさっきは申し訳ございませんわ,騙すような真似をして…」
「そんな!私は全く気にしてませんわ。むしろ緊張が消えたみたいで感謝しております。」
「それは良かったですわ!」
ねぇ見た?!今ぱぁってまるで花が咲くように笑って…ゲームでは笑えてなかったからすごく新鮮で,絶対幸せにしてあげるからね!
「ここがお庭ですわ!我が家の家紋にもある菖蒲を中心に育てていますの。」
わぁこの庭園めっちゃ見た事ある〜...確かここでリリィが暗殺者に殺されるんだよなぁ。あぁ思い出したら更にクズへの殺意が湧いた。
「お気に召しませんでしたの?」
「い,いえ。とてもお綺麗で見とれてしまって...リリヴィア様はここの菖蒲と同じような髪の色をされていますのでとても絵になるなと!」
「そうかしら!お父様もよく褒めてくれるのよ!ほらどうかしら?」
そう言ってサイドの髪を持って顔に寄せて上目遣い...可愛過ぎる!溶ける,溶けちゃう!
「とても素敵ですわリリヴィア様!まるで花の精です。」
幸せぇ...生きててよかった。いや死んでよかったか?どっちでもいいや。
「まだまだこんなものじゃないのよ!さぁ行きましょうリノア様!」
「あのリリヴィア様...」
「なんですの?」
「私の事はどうぞリノアとお呼びください。」
「わかりましたわリノア...私の事も呼び捨てで構いませんわ。だって...私達お友達でしょう?」
「はい!リリヴィア!」
やったぁ!リリィとお友達になれた!このままいつか私が男だって打ち明けても友達...いやそれ以上に発展する関係になってみせる!
「そうと決まれば行きますわよリノア。初めてのお友達ですもの,止まっている時間が惜しいわ!」
その後私達は花を愛で,木陰で休み,駆け回って...初めて年相応な事をした気がする。でもそれだけ楽しかった。
「リノア!リノア!私貴方のことをノアって呼んでも良いかしら?」
「もちろんですリリヴィア。なら私はリリィって呼びますわ。」
「ノア!」
「リリィ!」
「「あはははは!」」
楽しい!凄く楽しい!こんな時間がいつまでも続けば良いのになぁ。
「リリヴィア!リノア嬢!」
「あら,お父様ですわ...ここですわ〜!」
「おお居た居た。もうすぐお別れの時間なんだが...その様子なら仲良くなれたようだね。」
「もちろんですわお父様!ノアったらすっごく物知りなの!まるで菖蒲の花だわ!」
「褒めすぎですよリリィ。」
「こんなに楽しそうなリリヴィアを見たのは久しぶりだ。どうだいリノア嬢,うちの子になるかい?」
「おい!」
慌ててお父様が飛び出します。全くこんな冗談を言い合える仲だなんて,私もリリィとこんな関係になれたらいいな。
「リノア,名残惜しいかもしれないけどそろそろお別れだ。帰ろうか。」
「もう帰ってしまうんですの?私もっと一緒に居たいのに...」
「リリィ...最後にいい事教えてあげます。待つ時間が長くなれば長くなる程次会えた時の喜びが大きくなるの。今日は日程を合わせたけど次はいつになるか分からない。でもきっとすぐ会いに来ますわ,私達お友達でしょ?」
「わかりましたわ...またね,ノア!」
「またね,リリィ!」
次会えるのはいつかなぁスケジュール管理はお父様にやらせるとして...あぁもう待ちどうしいわ!馬車に乗るまでずっととぼとぼ歩いちゃった。
「楽しかったかいリノア?」
「もちろんですわお父様!リリィとまたお会い出来るよう私お勉強も頑張ります!」
「その事なんだけどねリノア...カルヴィンに領地経営について教えて貰っているだろう?それをアグネーゼ侯爵家でやってはどうかって話をしたんだよ。なんでも最近忙しくなりそうで顔を出せないらしいんだ。」
「それは...こちらからお願いしたい程ですわ!我が家とアグネーゼ侯爵家は共に宮廷貴族ですから移動距離が隣の領地なんて事は無いですし!」
何故領地も持ってないのに領地経営を学ぶかって?この国では男性への王からの報酬はだいたい領地らしい。だからこの国の男子は領地経営を学ぶのだ。もちろん私も男子だからね。
「リノアが...年相応の顔をして...!」
お父様がまた遠い目を...やっぱり乗り物が苦手なんだわ。