娘さんを近ずけないで
イルルさん視点です。
「姉貴!どうしたんだそんな慌てて!」
「カルル...」
カルル・ミハイル。私,イルル・ミーシャの弟。無属性。
「良い話と悪い話...どっちを先に聞きたい?」
「悪い方。」
「そう...」
私は,無属性の人でも魔力暴走を起こす危険性と無属性でも魔道具を扱える事を話した。弟は複雑な顔をしている。
「姉貴...それ,家の頑固ジジイが納得出来る証拠あんの?」
「何言ってんの?あんたがその証拠よ。」
「は?」
「ほら,時間が無いし行くわよ。」
「行くって何処に?」
「最高会議。」
――――――
「序列十二位,十字のイルル・ミーシャの権限において最高会議を始める。」
欠席は...嫁狂だけですか。最近妊娠が分かって浮かれぽんちになってるから居なくてもいいわ。
「十字のや,何故お前の弟が居る?議題と関係があるのか?」
「はい,今回の議題は...無属性の魔力暴走です。」
「馬鹿な!無属性とは,現存する全ての魔法において適正が無い出来損ないじゃろう!」
「それに関しては見てもらった方が早いですね...カルル。」
カルルが魔灯に向かって手を伸ばし...
バチンッ
あの時と同じ音が出る。
「これは...!」
「えぇ...無属性も体外に魔力を放出出来るという事の証明です。これにより無属性の魔力暴走の懸念が今日の議題です。」
はぁ...頑固ジジイも納得したか。見たものしか信じないこいつらの為にカルルが協力してくれてよかった。
「すげぇなイルル!どうやって見つけたんだ?カルルとなんかやってた時か?」
ライ...私の従兄弟が嬉々として聞いてくる。正直苦手。
「『タンク』の初測定時の魔力量をおそらく上回っている少女が教えてくれたわ。」
「おい!」
序列一位『タンク』カイル・ミハイル...
「パパと呼べ,イル。」
私のお父さん...
閑話休題。
その後の議題は阿鼻叫喚の一言だった。魔力暴走の事例を集めると一度解散になったもののパパを超える可能性の高い少女,リノアちゃん。あの娘の事根掘り葉掘り聞かれても今日初めて会っただけだし...いやリリヴィアちゃんから色々聞いてたけど。まぁ無属性だって話したらものすっごくガッカリしてたけど。ライが水槽の再来って言ったから本気で殴ったけど。
「それにしてもその子の発想力はすげぇな。俺言われて初めて確かにって思ったもん。」
「リノアちゃんは律者の家系よ。リノア・リオルヴ,リオルヴ伯爵家長女ね。」
「どうやって知り合ったんだよ。」
「ほら,私アグネーゼ侯爵家のご令嬢の魔法監督官してるじゃない?その子の友達なのよリノアちゃん。有名でしょ?侯爵と伯爵の関係。」
「理想の友人同士か。そりゃ子供同士も仲良いか。」
それはちょっと偏見かと思うけどね。まぁ一緒に湯浴みとか言ってたし相当仲がいいのは事実ね。
「それにしても無属性の魔力暴走ってのがいまいち想像出来ねぇんだよなぁ。魔力を体内に止められなくなって魔力欠乏で倒れるとかか?無属性の患者も居るらしいじゃん。」
「それって無属性狩りの被害者でしょ?ほんと誰が何の為にしてるんだか。」
無属性狩り...無属性の人が魔力欠乏で至る所に倒れている現象。倒れてる人は近所の住民だったり隣町の人だったり,ずっと昔から同じような現象が起きている為悪魔や妖精,それに準ずるものが原因だと言われている。
「カルル...ほんとになんか見てねぇのかよ?『天使』以外にさぁ。」
弟のカルルは一度無属性狩りにあっている。急に目の前の景色が変わったかと思うと体が動かなくなりその場に倒れ込んだそうだ。その時三歳前後の幼女に助けられ,以後その子を天使と称している。全くロリコンにはなってほしくないものだ,いや三歳前後の天使の姿形をそのまま愛しているならベビコン?流石にそこまで言ってたら記憶が無くなるまで殴ってやろう。
「ほんとになんも見てねぇよ。」
もう三年くらい前の事だし記憶も薄まって来ているのだろう。
「天使様の顔を忘れられるはずも無いがな。幼いながら整った顔立ち,薄い紫の髪から覗く綺麗なロゼの瞳!珍しい組み合わせだし見れば一発で分かる!また会ってお礼がしたい!」
はぁ...こりゃ殴った方がいいか...な...?ん?私最近そんな子見なかった?
「その子の他には何か見てないの?」
「ん〜,天使様が連れてきた水色の髪の男かな?その時はもう限界でうろ覚えだけど。」
「...だ。」
「ん?」
絶対こいつが言ってる天使ってリノアちゃんだ!リオルヴ伯爵って水色の髪だったし!今度会った時お礼しなきゃ!三年前弟を助けて頂きありがとうございますって。弟は元気ですけど絶対娘さんを近ずけないでって言わなきゃ!
来週から魔王様の更新を再開しようと思ってます。なのでこっちの更新は相当空いてしまいそうです。何かあったら魔王様ストップで戻ってきます。ちなみにカルルくんは負けヒロインではなくぼろ負けヒーローになる予定です。