プロローグ
急遽連載開始です。こちらもストックが少ないので交互に連載になるかな...?
「制作陣は狂ってんのか?!」
薄暗い部屋で一人叫ぶ。私は最近発売された乙女ゲームを夜通しプレイしていた。仕事帰りに目に入ったパッケージにいるキャラクター達のビジュアルが良すぎて衝動買いしたのだが...特に好きなビジュの悪役令嬢の扱いが酷すぎる!何?!自分の婚約者に色目を使ってるやつが居るなら文句の一つや二つ言うでしょ!それも嫌がらせとかじゃなく人の物をとってはいけないって感じの五歳児にする諭し方だし!それで泣き出して助けを求めるって何?五歳児以下か!それを聞いた婚約者も"お前何言ってんだ"って蔑んだ目で見るのも意味がわからない。親が決めた婚約だとしても悪役令嬢...リリヴィア・アグネーゼことリリィちゃんは幼い頃から国母になる為の教育を受けてるし少なくともあんたを愛そうと努力してるのに踏みにじるんじゃなねぇよ!ぽっと出の五歳児令嬢に国母が務まるわけねぇだろ!百歩譲って側室だ。譲らせねぇけどな!...と思っていた矢先。
「おいこのクズ!今お前の攻略してねぇよチョロ過ぎだろ!」
他のヒーロー攻略中でも勝手に好感度を上げリリィちゃんを捨てる。しかも好感度上がりやす過ぎて何度もクズルートに入ってしまった。それならいっそ嫌われてやろうとクズの好感度をマイナスにして攻略完了すると...
「女性不信になってリリィを捨てた?!殺すぞクズ野郎!」
その後どう頑張ってもリリィを捨てるので殺意が上がる...リリィの事を考え過ぎて"ちゃん"って付けるのが他人行儀に感じて呼び捨てになっている。
「少なくとも私ならクズ野郎よりリリィを幸せに出来る自信がある。」
と言っても所詮はゲーム,シナリオ通りにしか動かない。そう...例え友情エンドでも密かに恋心抱いてますってリリィを捨てるクズ野郎制裁ルートもリリィが幸せになるルートも無いのだ。そう考えると制作陣にも殺意が湧いてきた。
「神絵師よ...リリィが幸せになる未来のファンアートを大量生産してくれ...」
全ルート攻略完了したらもう夕方だ。貴重な休みの一日が無くなってしまった...明日日曜日だけど何しようかな。
「えっと...今は日曜日の午前二時?!」
おかしい!空はこんなにオレンジ色なのに!そして私は知った。今空をオレンジ色に染めている存在を...
「火事だ...」
財布,通帳,仕事用具,スマホ...これぐらいでいい!走...れ...
「嘘でしょ...」
目に入った光景は凡そ現実とは思えなかった。燃えているのは窓側ではなく私が住んでるマンションの周り...いや,このマンションも燃えてる。火が強すぎて高所作業車?がこっちまで来れていない...
「おいおいまじか...」
これから先の運命に絶望し涙が溢れる,段々と視界が暗くなる...
「最後にリリィの幸せな顔が見たかった...」
そうして私...あれ?私の名前は...