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異世界転生・転移の文芸・SF・その他関係

異世界転生における商人としての成り上がりのような話

作者: よぎそーと
掲載日:2023/04/30

「こんなもんか」

 買い集めた数々の日用品。

 それを馬車に乗せていく。

 行った先々で売り払うために。

「おかしな事になったよなあ……」

 こうなった成り行きに少しばかり首をかしげた。



 男は転生者だった。

 地球からファンタジーな異世界に移って生まれた。

 なんでそうなったのかは分からない。

 分からなかったが、この世界で生きていくしかなかった。



 とはいっても特別な力を持ってるわけではない。

 前世にあった超人的な力を持って転生して大活躍、というお話のようにはいかない。

 前世の知識、人生経験があるのは長所にはなるだろうが。

 それでも、能力そのものはごく普通の一般人である。



 そんな人間に何が出来るのやら、と思っていた。

 実際、その後の人生もとりたてて珍しいものでもなかった。

 王侯貴族でも富裕層でも知識階層でもなく。

 ごく普通の農民に生まれて育った。

 特別貧しくは無いが、さりとて裕福でもない。

 そんな人間に人生の選択肢はさほどない。



 ただ、前世と違って、一般人でも成り上がれる道はあった。

 探索者である。



 異世界には怪物がいる。

 怪物がはびこる迷宮が世界各地にある。

 その怪物をたおし、迷宮に踏みこむことで稼ぐことが出来る。

 命がけではあるが、頑張れば成果を積み上げることが出来る。

 地位や身分が関係することはない。

 一般人から成り上がった者もいる。

 家業を継ぐことが出来ない者は、ここで踏ん張るしかなかった。



 そうした者達を探索者と呼ぶ。

 迷宮を探索するからという安直な理由でこう呼ばれるようになった。



 転生者もそういった者達の中に入っていった。

 他に道もない。

 農民の三男坊で家を継ぐこともない。

 継いだとしても、そう豊かでもない。

 まともに食っていくなら、探索者で成り上がるしかなかった。



 とはいえ、無理が出来るわけではない。

 能力は人並みで秀でた何かがあるわけではない。

 なので、生き残ることを心がけていった。

 立身出世が出来れば良いが、それが狙えるのは一部の者だけだ。

 そうではない凡人は、可能な限り生き残ることを優先しなければならない。

 無理して死んだらどうにもならないのだから。



 その心がけもあってか、転生者はそこそこまで強くなった。

 共に戦う仲間もいて、それらを率いる立場になっていた。

 そんな仲間と共にあちこちの迷宮を転戦することもある。



 探索者の活動場所となる迷宮はあちこちにある。

 そこを巡って転戦するのは珍しいことではない。

 そうして各地を巡ることから、探索者の集団は旅団と呼ばれるようにもなっている。

 生きのび続けた転生者は、そんな旅団を率いるほどにまでなっていた。

 残念ながらそれほど有力というわけではないが。

 しかし、人を率いるようになれる者は多くはない。

 ここまでこれただけでも成功者と言える。



 ここまでなら、成功した探索者というだけで終わっていただろう。

 だが、旅団を率いてあちこちを巡ってるうちに、別の商売も担うことになった。

 行商だ。



 仕事のためにあちこちの迷宮を巡るのが探索者だ。

 当然、その為に必要な物資を大量に持ち運ぶ。

 人がいない場所に出向くこともあるので、生活物資が必要になるからだ。

 そうしてあちこちに向かうと、自然と様々な集落を通り過ぎることにもなる。



 そういった場所の中には、行商が来ない所もある。

 商人からすれば、利益が出ないような場所だ。

 迷宮の位置の都合で、旅団はそういう所に立ち寄りこともある。

 そういった所では、集落では手に入らない物が求められる事が多かった。

 困窮というわけではないが、欲しいものが手に入らないで困ってることもある。

「それなら」と転生者は必要なものを持ち寄って販売することにした。

 小遣い稼ぎになれば良いと思って。



 これが意外なほど需要があった。

 集落からすれば、望んでた物が手に入るのだ。

 持ち込んでくれるならこれほどありがたい事は無い。



 その話を聞いて周辺の集落の者も集まってくる。

 行商人すらやってこない所に、様々な物を持ってくるというのだ。

 ならばと足を運んでくる。

 せっかくの機会を見逃すわけにはいかないと。



 そんなわけで、迷宮に出向くついでに様々なものを持ち寄ることにしていった。

 おかげで最近は行商人のようになってきた。

 探索者の旅団なのか、隊商なのか分からなくなってしまっている。

 さすがに本業そっちのけというわけにはいかない。

 しかし、頼ってきてる者を無下にも出来ない。

 なかば惰性で転生者は様々な品を商うことになった。

 迷宮に行く途中のついでと割り切って。



 さすがに行商で食っていくほどの利益は出てこない。

 商人が利益にならないからと出向くのを諦めた場所なのだ。

 そんな所で黒字が出るわけがない。

 だから他の旅団も商売などはしない。

 たまに都合がついた時に手持ちの物を売り払うことがあるだけだ。

 その程度の取引しか存在しなかった。



 ただ、赤字になるわけでもない。

 それに、本当についでなのでそれでも良いかと転生者は思っていた。

 誰かが困るわけではない、集落の者達はむしろ助かっているのだから。



 しかし、全く何の効果もないわけではない。

 集落からすれば欲しいものや必要なものが届くようになったのだ。

 それらによって少しずつ集落は発展していく。

 劇的なまでに改善するわけではないが。

 足りなかったものが補われることで、少しずつ物事が良い方向に向かっていく。



 立ち寄る集落は少しずつ整備されていく。

 生活が改善し、生産性が上がっていく。

 本当に少しずつ発展していく。

 年単位でみないと分からないほどのゆっくりとした歩みで。

 だが、確実に様々なことが向上していった。



 恩恵は少しずつ出て来るようになった。

 立ち寄る転生者達は商売の規模を少しずつ増やしていく。

 発展によって村にも余裕が出てきているのだ。

 おかげで、転生者が手に入れる利益も多くなっていく。



 そのうち施設や設備も増えて、立ち寄った時に快適に宿泊出来るようにもなっていった。

 危険な作業に向かう途中や帰り、転生者と旅団はそういう所でくつろぐことが出来る。

 命がけの仕事をするにあたって、こういう場所があるのはありがたかった。



 また、利益になるならと行商人なども立ち寄るようになる。

 こうなると転生者が上げることが出来る利益は減る。

 行商のようなことをしてたとはいえ、本職ではない。

 その道に専念してる者には負ける。

 だが、これはこれで利点もあった。



 行商人が足を伸ばしてくることで、必要な物資を手に入れることが出来るようになる。

 わざわざ市場のある所まで戻る必要がなくなる。

 迷宮と行き来する期間が短くなり、探索にかけることが出来る時間が長くなる。

 その分、稼ぎも増えていった。



 集落が村になり町になっていく。

 今まで通り過ぎるだけの場所だった里が、探索者の拠点になる程大きくなる。

 行商人が定住して店を構え、それが更に取引量を増加させる。

 それなりに頻繁に探索者が怪物退治の成果を持ってくる。

 怪物を倒して手に入れる魔力結晶が集まってくる。

 それを商人が物品と交換していく。

 こうした経済が生まれていた。



 町の規模が大きくなり取引量が増えると、探索者の需要も増える。

 町の防衛から商品の護衛と、それだけでも人手が必要となる。

 どうしても守らねばならない部分が出てくる。

 こういった仕事は探索者の領分だ。



 旅団だともう少しやれる事が増える。

 一度は行商人に譲るしかなかった商売。

 それを再び行えるようになる。

 取引量が増えて商人だけでは手が回らなくなってきてるのだ。

 そこで旅団が直接商売に乗り出す余地が出てくる。



 商品輸送そのものを旅団が引き受ける事もできる。

 大規模な探索者の集まりだから、単独でも輸送能力がある。

 店を構える商人と提携して、運搬部分を担う事も可能だ。

 規模が大きいので負担も大きいが、やれる事も多い。

 その利点を生かして、転生者は幅広く商売をしていく。



 この時、前世の記憶が役立った。

 特別大した事をしてたわけではない。

 だが、仕事を通じて様々な事を見聞きしてきた。

 それはこの世界ではなかなか得られないものだ。

 商売についての知識も、この世界の一般人よりは持っている。



 それを用いて無理の無い範囲で商売をしていく。

 本職には及ばなくても、隙間産業として食い込んでいく。

 無くてもどうにかなるが、あると便利な所を狙っていく。

 大儲けは出来ないが、ほどほどに利益をあげていく事ができた。



 そんな事を続けてるうちに、探索者というより武装商人のようになっていった。

 相変わらず探索者として怪物退治や迷宮探索もしている。

 しかし、それを部下に任すようになっていた。



 旅団の規模も大きくなり、指揮統率する立場の者は現場に出る事も少なくなっている。

 頂点に立つ転生者ならなおさらだ。

 全体を見通して指示を出すのが仕事になっていた。

 そんな立場の者が、危険な前線に出るのは困るという事情もある。



 旅団はそれだけ規模を大きくしていたというのもある。

 無理せず戦い、確実に生きて帰る事を念頭に置いたためだろう。

 おおよそ探索者というのは威勢が良いのが基本だ。

 体育会系と言ってもよい。

 努力と根性でごり押しするというべきか。

 猪突猛進でがむしゃらに戦うのを良しとする風潮がある。



 そんな周囲をよそに、転生者は生還を第一とした。

 生活が成り立つだけの利益があれば良い。

 無理して再起不能になったり死んでは意味がない。

 それよりも確実に生きて帰る事。

 これを何より優先した。



 そんな態度を周りの探索者は嘲笑った。

 だが、気にする事無く転生者は生存生還を優先した。

 生きていれば成長できるから。

 長く続けた者は熟練者になるから。

 そういう人間が増えれば、自然と成果は増えていくと確信していたからだ。



 おかげで転生者の旅団は長年活動を続けてきた猛者が多くなった。

 そこに後輩が更に加わり、規模は大きくなった。

 おかげで手広く商売が出来る。

 何をするにしても必要になる人手をどこよりも確保してるからだ。

 臆病者と罵られても続けた生存生還の方針のおかげだった。



 この為、勇猛果敢と言われる性格の者は仲間に入れなかった。

 さすがに何も出来ないほど臆病ではどうにもならない。

 だが、引っ込み思案程度ならば、様子をうかがうような人間なら仲間に加えていった。

 確かにすぐに行動出来るような者達ではない。

 その分、無茶はしないし無理もやらない。

 出来ることを淡々とこなしてくれる。

 そういう人間ばかりだから、大きな進展はなかった。

 だが、着実な積み重ねを成し遂げていった。



 積極性の排除。

 これもまた前世の記憶から導き出したものだ。

 急がない、競わない、努力しない。

 短期的な利益は捨てる。

 長期にわたる継続と、それによる成長。

 これを求めていった。



 おかげで転生者は大規模な旅団に成長した。

 時間はかかったが。



 探索者になって30年。

 その間に転生者は数百人を抱える最大規模の旅団の統率者になっていた。

 手広く商売活動もしている。

 必要な製品を作るための職人も抱えた。

 人材育成のための教育機関もこさえてる。

 無理や無茶をしなかったから出来たことだ。



 上手く発展していく所に食い込めたのも大きい。

 その発展のきっかけを作ったのは転生者である。

 なんだかんだで、己にとって最善の状況を作り出した。

 そうしようと思っていたわけではなかったのだが。

 結果として、転生者は自分を助けたことになる。



「上手くいったもんだ」

 振り返ってみてそう思う。

 大規模な旅団の頭領として、一つの地域に根ざした商人として。

 前世の言葉を使うなら、実業家として成功することが出来た。

 それもこれも、無理せず出来ることをやってきたおかげだ。



 これを教訓として転生者は子供達に伝えていった。

 どこまで守られるか分からないが、多少なりとも参考になればと。

 出来れば子々孫々も繁栄していけるように。

 駄目な時は駄目だろうが、無駄や無理を出来るだけ避けられるようにと。

 しなくてよい苦労なぞしない方が良いのだから。

 そんなものは何の利益にもならない。

 なんの経験にもならない。

 ただ無駄でしかない。



 それを極力避けて今までやってきた。

 それで上手くやってこれた。

 世代を超えてやり続ければ、大きな成果になりうる。

 それがどのような結果になるのかは全く分からない。

 だが、そうなる可能性を子孫に残していきたかった。



 大成功してほしいというわけではない。

 そこまでは望んでいない。

 だが、平和で平穏で豊かに生きていってもらいたかった。



 その願いがかなったのか。

 転生者の死後、何代にもわたって彼の子孫は続いていく。

 国で一番の権力者になるわけでも、世界最高の富豪になるわけでもない。

 宗教の教祖のように権威有る存在になるわけでもない。

 だが、平和に平穏の中で豊かな暮らしをしていく。

 転生者が望んだように。

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あと、異世界転生・異世界転移のランキングはこちら

知らない人もいるかも知れないので↓


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