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第二章

二話やで

「くそっ、放せ!」


 俺は警察に捕まってしまった。アイツに電話してる暇があったら逃げればよかったと心底後悔している。

 警察は俺を捕まえた後手当たり次第店の中で何かを探し回っている。すると一人が俺に声をかけた。


「私は高松たかまつ宮司みやじだ。君、名前は?」


安田やすだたけしだ。警察が俺に何の用だ!」


「この店である反応を検知したんだよ。だから私たちはここまでやってきた」


「ある反応?何なんだよそれは!」


「分からないのかね、君が手に入れた代物だよ」


「先輩、どこにもありません!」


 突然俺の店を漁っているもう一人の男が叫んだ。


「そうか…ここにはもうないのか。安田やすだ君、君はあの天日干しをどこへやったんだ」


「天日干し、もしかして人間の形をした奴か?」


「そうだ、それをどこへやったんだ?」


「…友達に売った」


「友達に売った!?あんな得体の知れないものを買う奴がいるのか!?」


「ああ、俺の友達は干物マニアなんだよ」


「…なるほどな。で、そいつがあの天日干しの左腕を食べたんだな?」


「正確には覚えてないが腕をちぎって食ってたのは確かだ。ていうかなんであんたがそんなこと知ってんだ?」


「理由は君が署まで素直についてくるなら教えよう」


「ちっ、分かったよ。だけど俺は無罪だからな!そこんところははっきりさせとくぞ」


 そう言って俺はパトカーに乗った。人生で初めてパトカーに乗った。小学生の頃は憧れていたが、今はなんの喜びも湧かなかった。

 やがて警察署に辿り着き、高松たかまつ達がパトカーから降りた。


「着いたぞ、早く降りろ」


 俺は渋々パトカーから降りた。高松たかまつ達についていき、俺は取り調べ室に閉じ込められた。俺は堅そうな椅子に座る。


「で、早く理由を教えろよ」


 高松たかまつは三枚の写真を机に置いた。その写真に写っていたのは全員左腕を失っている人間だった。   


「これは何なんだよ」


「この事件の被害者だ」


「はあ?事件?何の?」


「君が例の友達に渡した人間の天日干しというのはただの天日干しではない」


「なんてったって人間で出来てるしな!」


「話の腰を折るな。まあ確かに人間で出来ているというのも異常なところだが、あれの異常性はそこじゃない。あれには悪霊的なものが憑いていたんだ」


「悪霊的なもの?随分曖昧な表現だな」


「我々警察はそれをXと呼んでいる」


「よく未知のものとかにつけるよな、Xって」


「Xはあの天日干しに封印されていた。そして我々はその天日干しを厳重に保管していた。しかし2年半前何者かにその天日干しを盗まれてしまった」


「あぁ、だから2年前にあんな話題が生まれたんだな」


「我々の内の誰かが情報を漏らしたのだろうが、それ自体はどうでもいい。問題はその封印を解いたらどうなるかということだ」


「どうなるんだよ」


「Xの封印を解く。それはつまりあの天日干しを破壊するということだ。そしてXはその天日干しが破壊された部位と同じ部位を人間から奪う」


「え?…それってつまり、左腕…」


「そうだ。君の友達が破壊したのは左腕だ。そしてこれらの被害者が失ったのも左腕だ。この意味が分かるな」


「あ、ああ」


「君の店で天日干しが破壊された時に信号をキャッチした。そして君の店に我々が向かっている最中にやられたのが三人、おそらくまだまだ被害は増え続けていくことだろう」


「た、対策方法はないのかよ」


「それがこれだ」


 そう言って高松たかまつはバケツぐらいの大きさのパトロールランプを取り出した。


「なんだよ、これ」


「見ての通り回転灯をヘルメットにしたものだ」


「これがなんの役に立つんだよ」


「これは人間の頭への天然の光の照射を人工的な光で阻害するための物だ」


「言ってる意味がよくわかんねーな」


「まず前提として天日干しとはどういうものか分かるか?」

「当たり前だろ、俺は乾物屋だぜ」


「天日干しはその名の通り太陽光を浴びて出来上がる代物、つまり太陽のエネルギーが詰まっているといえる。そしてXは封印の器である人間の天日干しと同様の、太陽エネルギーをたくさん浴びた人型の物体を狙う。そしてその人型の物体を破壊された人間の天日干しと同じ形にするのだ」


「なるほどな、だから左腕を狙うのか」


「そしてXが獲物を見つけるために感知しているのは太陽エネルギーの流れだ」


「太陽エネルギーの流れ?」


「太陽エネルギーの流れは太陽光を浴びた部位に見られるというのが我々の見解だ。人間でいうならば頭だそうだ」


「まあ逆立ちでもしない限り一番浴びる部分だわな」


「Xはそれを感知し、人型の物体と判断し、攻撃してくるのだ。その感知能力を阻害するために回転灯ヘルメットを頭に装着するよう全国に緊急発令されたわけだ」


「なるほど、おおよそこの事件の概要は分かった。要するに俺はアイツの居場所を言わなきゃならないってことだな」

「そうだ、早く言うんだ。このまま放っていたら、さらに被害は拡大するだろう」


「………」


「どうした?早く言え!」


「生憎だが、俺も分からねえ。お前達が俺の店に来た時にはアイツはもう家に帰ってる途中だったし、その時俺は警察が来たから逃げろって電話で連絡しちまったしな。今はもうどっかに逃げてるだろうよ」


「…まあいい、ならまずそいつの名前、家、電話番号などを教えろ」


 そして俺は洗いざらいアイツの情報を全て話した。警察の奴らはその情報を聞いた瞬間すぐさま動き出し、高松たかまつは俺をパトカーに乗せた。


「お前には俺たちの調査を手伝ってもらう」


 パトカーがサイレンを鳴らしながら走っている。俺はパトカーの中で窓越しに外を見る。


「お前、やべーことに巻き込まれちまったな」


 そう俺は一言呟き、高松たかまつとその部下と一緒にアイツの家に向かった。

天ぷら食べたい

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