表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第一章

今回は僕一人での投稿です。夢で見たものから着想得ました。夢ではむっちゃ怖かったんですが、その怖さが表現できてるかは分かんないですね。

 木々が生い茂り青黒くなっている山を登り、俺は小さな店にたどり着いた。息が上がっていたので、深呼吸をして息を整えた。


「よお元気か?」


 明るい声で俺は店に入る。週末にいつも俺はこの店に行くのだ。ぷーんと木の匂いがするこの店は俺のお気に入りだ。

 やがてここの店主の安田やすだがやってきて気怠げに答える。


「まあまあだな。で、またいつものやつか?」


「おう、そうだな。俺がそれ以外頼むと思うか?」


「はいはい、わかったよ。今回は上等なやつだからな。結構値、張るぜ」


「そうなのか、楽しみだ。…じゃあこれとこれとこれで」


 そう言い、俺は牛と豚と鮭の天日干しを指差す。


「合計で5260円だな」


「確かに高えな」


 思ったより高かったが財布の中はまだ余裕だ。まあでもちょっとは節約しないとな。


「…そういえばいいもん手に入れてきたんだけど買うか?」


「なんだよ、いいもんって」


「これだよ」


 そして安田やすだは人形のようなものを取り出した。


「なんだこれ?人形…いや、これってお前まさか!」


「そうさ、ついに手に入れたんだ。お前欲しがってただろ」


 それは人間の天日干しだった。天日干しされたことによって本来の人間のサイズからリカちゃん人形ほどのサイズにまで縮んでいる。


「いやあ、ホントに実在したとはな。てっきりただの都市伝説だと思ってたぜ」


 この人間の天日干しというのは2年半前に突然インターネット上で騒がれ始めて都市伝説になった。

 俺は大の干物マニアだから、すぐさまそれの内容を洗いざらい調べたが信用できそうな情報は一切なく誰も掘り下げようとしなかったため、やがて噂すらされなくなっていた。しかしまさに今目の前に存在するのだ。


「まあ俺も信じちゃいなかったんだがな、なんか変なおっさんがくれたんだよ。しかもタダで」


「なんだそれ。すげー怪しいじゃねえか」


「まあな、だから俺も最初はこれが本物かどうか疑ったんだがな、質感や見た目でこれは本物だってわかったぜ。伊達に長年乾物屋やってねーからな」


「そうなのか…で、お前はつまりこれを俺に売ってくれるってことなのか?」


「おお、10万で売ってやるよ」


「10万!?それは法外じゃねえか。タダで貰ったんだろ」


「俺はタダでもらったが、お前にタダでやる義理はねーからな…しょうがねぇ5万に負けてやるよ」


「ちっ、わかったよ。今月はもやし生活だな」


 そう言って俺は渋々五万円を出す。安田やすだは機嫌良さそうにまいどありと言い、人間の天日干しを寄越した。


「なあせっかくだしここでちょっと食ってけよ。味も聞きたいしさ」


 俺はいつも家で天日干しを嗜むのだが、安田やすだもさすがにこれには興味があるらしい。正直俺も今すぐ食べたいぐらい好奇心がそそられていた。

 俺は近くの椅子に座り、人間の天日干しの左腕をちぎって、口に運ぶ。サイズは煮干しぐらいだ。俺はそれを口の中でころころ動かしながら味を確認する。しかし全く味がしない。仕方がないので俺はあっさり噛み潰した。しかしやっぱり味はしなかった。


「どうだった?」


「全然味がしねえ、正直期待外れだぜこれ」


「ははは、そうか。でも食っちまったから返品は無理だぜ」


「ちっ、詐欺師め」


 俺は家に帰ることにし、店を出た。もう二度とこんな店来るかよと悪態を吐きながら山を下っていく。

 しばらく山を下っているとへんなものが近づいてきた。なんだろうかと目を細めてじっくり見る。なんとそこにいたのはパトロールランプの頭をした人間だった。まるで映画泥棒に出てくる警官のような姿だ。俺はその異様な光景に思わず息を呑んだ。

 やがてそのパトロールランプの男が近づいてきて俺に声をかけてきた。


「あんた回転灯を付けてないのかい?警察さんが言ってただろうに」


「え?どういうことですか?」


 どうやらこの人物は異形ではなくパトロールランプを頭に被ったただの人間だった。どう見ても変人にしか見えないが。


「あんた緊急発令を聞いてなかったのかい?ついさっき警察さんから緊急発令でこれを被れって言われてただろう」


 そういえば2年ほど前にこのランプが全国配布されていたな。確か俺の家にもあったはずだ。


「それになんの意味があるんだよ?」


「そんなの私が知るわけないだろう。警察がそういうから被ってるだけだ」


「…そうなのか、じゃあ俺もさっさと帰って被るとするか」


 まだ疑問は残っていたが、なんだか嫌な感じがするのでそそくさと俺は家に向かった。

 しばらく歩いているとパトカーがサイレンを鳴らしながら俺の横をものすごい勢いで走っていった。そのパトカーはさっきの山に向かっていた。


「誰かが事故でも起こしたのか?」


 ごく普通の疑問を浮かべながら俺は人里に下りていった。人里に辿り着き、辺りを見回す。


「あれぇ、朝はあんなに人がいたのにな?」


 街は閑散としていた。朝には犬の散歩をしている青年、ジョギングする老夫婦、春休みだからと走りまわっていた子供達、そんな人達はおらず、パトロールランプをつけた人が数人歩いているだけだった。その人達の顔は見えなかったが、俺をじっと見ているような気がした。

 俺は少し恐怖を感じ、そそくさと歩き出した。すると突然スマホが鳴り出した。俺はゆっくりとポケットから取り出し、画面を見る。


「なんだ?安田やすだからの電話?」


 俺は通話ボタンを押し、もしもしと尋ねる。


「どうしたんだよ、なんか忘れ物でも見つかったか?」


「違う!店の前に警察がいるんだよ。多分あの天日干しのことだ。俺とお前を捕まえに来たんだ。早く逃げろ、分かったな!」


「お、おい。お前はどうすんd」

 ブチッ


 電話が切られてしまった。どうやらあのパトカーは安田やすだの店に向かっていたらしい。そして安田やすだの言う通りなら俺も確実に狙われるだろう。俺は家に向かって走り出した。   

 家に着き、俺は身支度を始めた。ここからいち早く逃げ出すためだ。安田やすだは義理堅いから俺の名を警察の奴らに言うことはないだろうが、この家に警察が来るのは時間の問題だ。俺は喉が渇いていたのでペットボトルのお茶をグビッと飲み干した。

 しかしなぜこんなことで捕まらなければならないんだ。もしかして人間の天日干しだから人身売買ってことになるのか?

 そんなことを考えながら押し入れを開ける。


「おー、あったあった」


 俺は押し入れの中にあったパトロールランプを取り出す。


「…もしかしてこのパトロールランプと天日干しになにか関係があるんじゃないか?」


 このパトロールランプは2年程前に突然訳もなく国から配布された。そしてこの人間の天日干しの都市伝説が話題になり出したのは2年半前。明らかに時期が重なるのだ。俺はこのパトロールランプの件と天日干しには関係があると確信した。しかしなんの関係があるのかまでは流石にわからない。

 俺はカバンに食べ物を詰めれるだけ詰めて外に出た。もちろんパトロールランプは被っている。怪しまれるのは避けるべきだからな。そして俺は行くあてもなく歩き出した。

読んでくれてありがとう。君たちがこんな夢見ないことを願うよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ