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犯人はこの中にいる!?


 誰だ……!


 誰がオレの唇を奪いやがった……!!


 



 その夜、オレは自分の部屋のベッドに仰向けに横たわりながら、枕に顔を押し付けてうめいていた。




 夢だったと思いたい。

  

 だけど、あの感触は紛れもない現実だ。


 誰かが寝てるオレにキスしやがった。


 誰だ!?


 あのイケメンどものうちの誰かか?


 それともまったく別の男か?


 一瞬、逃げる犯人の制服が見えただけだったから、それ以上の手がかりは何もない。


 だけど間違いなく、誰かがオレにキスをした!


 そして、あの婆さんの占いが本当なら、オレは最初にキスをした男と……。





「それだけは嫌だ!」




 そんな結末は断固として拒否する。


 オレが好きなのはあくまでも女のコだ。男じゃない。いくらBL小説の世界だからって、男と結ばれるなんて絶対にゴメンだ。


 いや、確かに最近はちょっとトキメいたりしちゃってたけど……、



 でも……、

 


「抗ってやる……!」




 この理不尽な世界に抗ってやる。


 

 そうだ。占いなんて打ち破ってやる。キスはされたけど、誰とも結ばれないエンディングにたどり着いてやる。


 そのためには、まずは誰がオレにキスをしたのかを確かめないと。





「月島ルイト。待っていたぞ」



 月曜朝。


 学校につくなりレイが待ち受けていた。




「お、おはようございます。なにか用ですか?」




 オレは警戒しつつ答える。


 とはいえ、オレのなかではこの男はキスの容疑者のなかでは疑わしさが下の方だ。


 なぜならコイツが好きなのはあくまで女装したオレこと月島ルイであって、オレではないからだ。


 あのときは女装していない状態で寝ていたところをキスされたので、コイツが犯人である可能性は低いはず。


 ……もちろん、『そう思わせて実は……』なんて展開が漫画や小説ではよくあるから、油断はできないが……。


 


「貴様、昨日サボタージュしただろう」



「へ?」


「昨日の後片付けだ。我が校は土曜日に文化祭本番、日曜日に有志による後片付けと決まっていることは伝えたはずだ。当然、生徒会も参加する。貴様にも手伝うよう伝えておいたはずだ」




 そういやそんなことも言ってたな。


 キスの衝撃で完全に忘れてた。


 


「す、すみませんでした」


「反省しているならいい」


「ありがとうございます!」


「罰としてもう三ヶ月、生徒会の仕事を手伝ってもらう」



 うおい!?


「謝ればいいんじゃなかったんですか!?」


「私の心情としてそれ以上は責めんという意味だ。約束を破った以上、罰は当然ある。それが社会というものだ」


 


 ぐっ……相変わらず堅苦しい男だ。


 だが、今日のオレは今までとは違う。




「お断りします!」 

  



 オレは叫ぶなり校舎に向かってダッシュした。




「月島!?」



 

 驚くレイの声を背中で聞いたが、構わず走った。


 もう、コイツらと仲良しごっこするのは終わりだ。


 今度こそ全員に嫌われて、バッドエンドに直行してやる。




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