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モジモジくん二人


 と、その時、ホノカの携帯が鳴った。


 ほんの数十秒ほど話して、すぐに切る。




「ごめんなさい。緊急の仕事が入っちゃった。もっとあなたとお話したかったけど、今日はもう帰るわね」


「き、気にしないで下さい。お仕事、頑張って下さいね」




 内心めちゃくちゃホッとするオレ。



 

「ここは私が払っておくわ。それと……」




 と、立ち上がって部屋を出る寸前、そっとオレに耳打ちする。




「あのハヤトのお兄さん、本気であなたのこと好きみたいよ。失恋しちゃって可哀想だから、応援しちゃおうかしら」


 意味ありげな笑みを浮かべるホノカ。


 ば、バレてる……。


 ホノカはそのまま去っていった。


 気まずいから、オレも早くここから退散しよう。


 そう思って教室から出ようとしたとき、




「ルイくん」


「ひゃっ!」




 背後から声をかけられ、思わず変な声が出るオレ。


 振り返らなくても分かる。この低音イケボ……レイだ。




「な、なにかご用でしょうか?」



 ついさっき間接的に振ったばかりの相手なので、めちゃくちゃ気まずい。



「君に頼みがあるんだ」


「頼み?」


「ボランティア部として、校内のごみ掃除を手伝ってもらいたい」

 

「へ?」



 

 そういえばそんなこと言ってたな。



 失恋した直後だってのに、どこまでもマジメな奴だ。


 断る口実が見つからなかったので、仕方なくOKした。


 それから、二人で協力して校内のゴミを集めた。


 だが……、


 き、気まずい……。


 間接的とはいえ、振った人間と振られた人間がその直後に行動を共にするというのは、かなりの拷問だ。


 というか、レイは何とも思わないのか?


 すでにレイの態度はいつも通りだ。


 失恋のショックも、ルイに対する緊張も感じられない。


 もしかして、ダメだと分かるとすぐに気持ちを切り替えられる器用な性格なのか?


 と、ゴミ拾い終盤、ふたりでゴミ捨て場にゴミを運んでいたとき、レイが言った。 




「ルイくん、ハヤトはああ見えて、芯の通った男だ」



 急に不思議なことを言い始めた。



「奴は一見不真面目な男だが、元からそうだったわけではない。色々と嫌な出来事が重なって、あんな風に不真面目なフリをしているだけなのだと私は思っている」


「…………」


「だから、奴を支えてやって欲しい。私の言葉はもはやハヤトには届かないが、君なら、信頼できる」


 

 この男……


 失恋したのに、それでも弟を気にかけるなんて……めちゃくちゃいい兄貴じゃねえか。


 ……これ以上騙すのが、ますます心苦しくなってきた。

 



 「それじゃ、手伝いありがとう。私は生徒会の仕事に戻るよ」


「あの!」


 

 立ち去ろうとするレイを呼び止める。


 不思議そうに振り返ると彼に、オレはつい、言ってしまった。

 


「私、ハヤトくんの彼女じゃありません。ハヤトくんに頼まれて、彼女のフリをしていただけなんです」


 

 ……なんでこんなこと言ってしまったのか、自分でも分からない。


 ただ、あまりにもレイが報われない気がしてしまったのだ。




「そう、なのか……」



 レイは一瞬、戸惑った顔をしたあと、


 驚くほど無邪気に、微笑んだ。




「良かった……」



 ドキッ……


 

 その笑顔を見た瞬間、なぜか、心臓が高鳴った。


 あまりにも素朴な笑顔だったから。


 と、二人してハッとする。



「す、すまない。おかしなことを言ってしまったな……」


「わ、私こそ、変なこと言っちゃってごめんなさい……」



 二人して赤くなる。


 てゆーか、何やってんの、オレ……?


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