サラリーマン歴15年の能力。変なところで役に立つ。
翌日。
オレはお隣の松陽高校に来ていた。
松陽高校は小高い丘の上にあり、グラウンドはちょうど山頂のくぼみに作られていた。
おかげで、グラウンドの横にいるだけで、サッカースタジアムのように高いところから試合を観ることができる。
……あんまり興味はないんだけど。
なんやかんやですぐに試合が始まった。
ヨウはスタメンらしく、最初から試合に出場していた。
一年なのにもうレギュラーということから推察するに、ヨウはかなりの実力の持ち主らしい。
その証拠に、次々とボールを奪ってはゴールを決めていく。
サッカーに詳しくないオレから見てもハッキリと分かるほど、ヨウの実力は抜きん出ていた。
結局、試合は3対0でうちの学校が勝った。
すべてヨウの得点だった。
「ルイトせんぱーい! 見ててくれたっすか?」
試合が終わってしばらくすると、ヨウが駆け寄ってきた。
どうやら今日はこのまま現地解散らしい。
「見てたよ。すごいね、一年生でレギュラーなんて。ゴールもたくさん決めてたし。両チームのなかでヨウが一番上手だったと思うよ」
オレは素直な感想を口にした。
イヤイヤ観に来たつもりだったが、実際に見てみると結構楽しかった。
「へへ。サンキューっす。なんか、ルイト先輩に褒められると嬉しいっすね」
屈託なく笑う。
子犬みたいな人懐っこい笑顔だ。
うーん、この感じ、嫌いではないぜ。
こいつ、会社で先輩に可愛がられるタイプだな。
「そういえば、ヨウはサッカー選手を目指してるんだっけ?」
「そうっす。子供のころからの夢っす!」
「いいなぁ、そういうの。僕、若い頃そういうのなかったから、羨ましいよ」
「若い頃?」
「あ、いや、今の話! 今の!」
あぶねー、あぶねー。
「なら、これから見つければいいじゃないっすか! きっと見つかりますよ、ルイト先輩なら」
「そ、そうだね」
「それより、オレも聞きたいことがあるんですけど……」
「聞きたいこと?」
「さっきのオレの試合、どうでした?」
「どうって……結構面白かったよ」
「そうじゃなくて、オレの動きです。オレ、最近伸び悩んでて、客観的な意見が欲しいんです! オレの動き方とか、ボールの運び方とかで気になったことがあったら教えて下さい!」
真剣な顔つきだった。
やはりサッカーにかける情熱は本物のようだ。
ここは、人生の先輩として協力してやらねばなるまい。
「そうだね……僕はサッカーについては完全にド素人なんだけど、いくつか気になったことはあったかな」
「何でも構わないっす! 言って下さい!」
オレは素直に感じたことを伝えた。
営業なんて仕事を何年もやっていれば、観察力や分析力など嫌でも身につく。そうじゃなきゃ顧客の本音やニーズを見抜けないからだ。
「……って、感じかな。気になったところは。あくまでも素人意見だけども」
「……すげえ……」
聞き終わるや否や、ヨウが感嘆の声を漏らした。
興奮した表情で言う。
「すげえっすよ、ルイト先輩! 本物のプロリーグの監督みたいでした! めちゃくちゃ納得です!」
「そ、そうかな……?」
「ルイト先輩、オレ、先輩に頼みたいことがあるんです!」
頼みたいこと?
「オレの専属トレーナーになって下さい!」
「ええっ!?」
「お願いします! オレ、一人でトレーニングすることに限界を感じてたんです! 先輩ぐらい客観的に分析できる人にトレーニングを手伝ってもらいたいんです!」
「そ、そう言われても……僕も生徒会の手伝いとか色々あるし……」
「お願いします! 出来る範囲で構わないんで!」
頭を下げるヨウ。
口先だけでなく、本気でプロを目指しているのがハッキリと伝わってくる。
「お願いします、ルイト先輩!」
「……わ、分かった。手が空いてる時だけね」
「やったー!!」
あああ……オレのお人好し。
また一人イケメンと接点が出来ちまったじゃねえか……。




