だからドキドキすんな、オレ!
「ぜえ……ぜえ……ぜえ……」
オレは校舎の裏で荒く息を吐いていた。
あのクソ生意気イケメン野郎、ハヤトからダッシュで逃げてきたのだ。
「ぜえ……ぜえ……ったく、なんでオレがこんな目に……せっかく転生して青春をやり直せると思ったのに、男に言い寄られるなんて冗談じゃねえぞ……」
そのときだった。
「そこで何をしている?」
いきなり後ろから声をかけられた。
振り返ると、背の高い、眼鏡をかけた鋭い目つきの生徒がオレを見ていた。
ハヤトに負けず劣らずの、ものすごいイケメンだ。
が、かなり近寄りがたいオーラがある。
ネクタイピンの色を見ると、三年生だった。
「気分でも悪いのか?」
「あ、いえ、ちょっと運動していただけです……」
オレはとっさにウソをついた。
イケメンに壁ドンされたから逃げてきたんです、なんて死んでも言えない。
しかも、ちょっとドキドキしちゃってたんです、なんて。
「そうか。しかしここは一般生徒は立ち入り禁止だ。隠れて校則違反の漫画やゲームを持ち込む輩が溜まりやすいからな。すぐに立ち去れ」
「わ、分かりました……」
おいおいおい、ずいぶんとっつきにくいやつだな。本当に高校生か?
まあいいや。男にかかわっても仕方ない。
「じゃあ、失礼します」
「待て」
「?」
なぜか、呼び止められた。
「な、なんですか?」
「その顔、見覚えがある。少し顔を見せてもらおう」
「い!?」
ずい。
いきなり、男はオレの目の前に来て、オレの顔を覗き込んだ。
近い近い近い!
身長差があるから完全にキスでもするような体勢になっちゃってるよ。
「な、な、何ですか?」
「間違いない」
「へ?」
「お前は、今朝御堂ハヤトに抱えられて一緒に登校していた生徒だな?」
「そ、そうですけど……何か?」
見られてたのか。
あんな恥ずかしいものを。
「お前は、御堂ハヤトと仲が良いのか?」
「へ? ぜ、ぜんぜん仲良くなんてありません!」
思わず否定する。
あんなマセたクソガキ(しかも男)となんて、仲良くなれるはずがない。
「そうか……」
男はなぜか少し残念そうに見えた。
「まあいい。それより、繰り返すがここは一般生徒は立ち入り禁止だ。早々に立ち去れ」
「い、言われなくてもそうします」
さすがにこの無礼な男に腹が立ってきたので、言われた通りさっさと立ち去ろうと歩き出した。
「待て」
「まだ何か?」
「お前、さっきから顔が赤いぞ。風邪を引いているなら保健室に言った方がいい」
「だ、大丈夫です!」
慌てて走り去る。
だから、なんで男相手にドキドキしてんだよ、オレ!
やっぱりこの体のせいなのか?
学園ラブコメの主人公に転生したんじゃなかったのかよ……
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