最後の手段!
が、慌てたオレは致命的なミスを犯してしまった。
正門とは別の方向に走り出してしまったのだ。
正門へ走ればそのまま逃げられたのに――やっちまったぜ。
仕方なく校舎裏に向かって走る。
「逃がさん!」
ヤバい、見た目と違ってアイツ速い!
このままじゃすぐに追いつかれちまう!
オレは逃げるのを諦めて隠れることにした。
校舎裏の柱の影に隠れる。
「隠れても無駄だ。そこにいるのは分かっている」
……バレてる。
「出てこい。出てこなければこちらから行く」
マズイ。絶対絶命のピンチだ!
どうする、どうする、どうする!?
そこでオレはハッと気づいた。
カバンを見る。
一か八か、試してみるしかない。
「出てくる気はないようだな。ではこちらから――」
レイの言葉が止まった。
柱の影から、予想外の人間が出てきたからだ。
――女装したオレが。
「きみは……?」
「あ、あの、私、道に迷っちゃって……」
怯えた様子で喋るオレ。
当然、バレないかヒヤヒヤものだ。
「ここに男子生徒が駆け込んで来なかったか?」
「誰か向こうへ走って行ったような気がしましたけど、私、スマホを見ていたもので……」
「そ、そうか……」
よし、オレだとは気づいていないようだ。
このまま逃げ切るしかねえ。
「きみはなぜこんなところに? うちの生徒ではないな? 見覚えがない」
う……。
「て、転校して来たんです。今日は下見のつもりだったんですけど……迷っちゃって……」
我ながら苦しい言い訳だ。
けど、こうでも言わなければ校内に私服の少女がいる理由がない。
「そうか……だが、ここは立入禁止区域だ。迷ってしまったのなら、私が校内を案内しよう。私は生徒会の人間だ」
「ありがとうございます」
オレは何気なく微笑み返した。
その、時だった。
カアア……!
いきなり、レイの顔が赤くなった。
な、なんだ?
「……どうかしたんですか?」
「い、いや、な、何でもない……」
明らかに動揺しているレイ。
メガネを押さえて、視線をそらしている。
その様子で、オレは気づいてしまった。
同じ男同士、分からないはずがない。
こ、コイツ、
オレに惚れやがった!!




