第73話 拠点の引っ越しを考えよう
控えめながら影響を及ぼしていく方法を模索中。
でも派手にやるときはやります。
すかっとしたいですしね!
新しく作られる街は変なちょっかいを出されない場所に作りたい。
できればお互いの利権を邪魔しない場所が望ましいわけで……。
「主が問題なければ、青肌一族の村の付近にしてはどうでしょう。鉱脈も地脈の力もあります」
「あっ」
ミリアムさんの言葉は目から鱗だった。
というかすっかり忘れていたけど、あのゴブリンさんあたりは結構いい立地だった気がする。
鉱脈もあるし、共同で何かできればお互いに潤っていい感じになるだろう。
「そうですね。それでは村長のガルドさんに話を通しておきましょう」
おそらくこの話は無条件に通るだろう。
あとは妖精銀の妖都への輸送の件をどうするかという話になると思われる。
『お母さん、いますか?』
先にお母さんに話をしておこう。
『最近まったく連絡くれないじゃない。それで、どうしたの?遥ちゃん』
お母さんは若干すね気味だった。
『あ、す、すみません。新世界は無事に作れましたので、ある程度仮拠点ができたら日本と妖都をつなげようかと考えています』
まず新世界の話から始めよう。
『もちろん構わないわ。日本のお部屋には私から繋げておくわね。あとで新世界へ連れて行ってちょうだい』
『はい、もちろんです』
『ハーンちゃんだけ先に行くのもなんだかずるいわよね~』
ハーンさんを先に連れてきたのは失敗だったかな?
お母さんが若干まだ拗ねている気がする……。
『まぁハーンちゃんは後でお仕置きしておくわね』
ハーンさん、ごめんなさい。
ボクでは守れそうにありません。
あっさりハーンさんを売り渡したボクは、次の話を進めることにした。
『お爺様の世界なんですが、今ボクがいる場所を含めて街を作ろうという話が持ち上がっているんです。場所は諸々のことを考えて、妖精銀の青肌一族の村付近にするつもりなんですけど……』
『あら? いいんじゃないかしら。青肌一族の者たちには遥ちゃんに納品するよう伝えておくわね。遥ちゃんの倉庫にでも置いておいてくれれば引き取りに行かせるわ』
最上位者に話をしたせいか、すべてを吹っ飛ばして物事が決まっていってしまった。
これで場所問題と納品問題は解決しそうだ。
『あとはお婆様関連ですが、もう少ししたら姿をお見せできるかもしれません』
これは瑞歌さんから得た分体作成スキル次第といったところか。
『そう。それは楽しみね。お母様は自由な狐だから何言っても無駄でしょうけど。それはそうと、街を作るならお社は作りなさいね。もちろん私の部屋もよ? 新世界にも忘れずに』
『住む気ですね?』
『当然よ』
お母さんはボクの世界にも住居を作る予定のようだ。
結局、お母さんも自由な狐なのだ。
『そういえばもう一つ報告です。大神殿の聖女様のミレイさんとその妹のリディさんがボクの眷属になりましたので、お爺様の世界のボクたちの街の管理をしてもらうつもりでいます』
もう決まってしまったことだけど、さっさと報告しておこう。
『あらあら。なんだか面白いことになってるわね~。そう。ということは大神殿の機能も移るのかしらね』
お母さんは感慨深そうに、そして少し面白そうにそう言う。
でも大神殿の機能が移るわけないと思うんですけど。
『どうしてですか?』
でもちょっと気になるので聞いてみた。
『大神殿の大神官のお爺ちゃんは王都を離れたいのよ。孫娘が遥ちゃんの眷属になって街の管理者になるなら、何も悩まずに遥ちゃんの街へ移転してくるわね』
『そうなんですか?』
『えぇ。大神殿は王族が大嫌いなの』
どうやら大神殿と王家の中は良好とは言えない状態のようだ。
考えてみれば、王家としては自分たちにだけ向けられるべき信心や忠誠が宗教に向けられるのが我慢できないのかもしれない。
もちろん変な宗教だったり、変な戒律のある宗教だったら困るけど。
「ミレイさん、つかぬ事をお聞きしますが」
「はい、なんでしょうか」
「大神官さん、ミレイさんがボクの眷属になることについて何か言っていましたか?」
ミレイさんの返答次第では、ちょっとだけ大変なことになりそうな気がする。
「大変喜んでいました。後ほど帰って諸々報告する予定です」
なるほど。大変お喜びと……。
「ミレイさん、ボクはよくわかりませんけど、この国の王家とはあまり関係がよろしくないとか?」
お母さんからの情報の受け売りだけど。
「えっ? なぜご存じなのですか!? えぇ。お爺様は王家のことを快く思っていません。私も婚約者になれとしつこい王太子様にはうんざりしていまして……」
「なるほど、美少女聖女様にしつこく言い寄る王太子様がいると……」
これはもう確定ですね。
報告を受けたら何かしらのアクションの後、引っ越してくるでしょう。
そして徐々に神殿の機能を大神殿から神都に移すのだろう。
「状況は把握しました。お母さんの言った通りになりそうですね」
「遥様のお母様ということは、もしかして……」
「えっと、若葉お母さんです」
「やっぱり! 実は私、一度だけお会いしたことがありまして……。その時からファンなんです」
「えっ」
驚きの告白だった。
もしかして、妖狐族になりたい理由ってお母さんの影響もある!?
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