第70話 聖女様と妹様
遥はあまり表に出たくないタイプなのでちょっとまだるっこしいかもしれません。
じっくり固めてから少しずつ外へと出ていきます。
本文重複を修正。
微調整も後でチョットしますね
瑞歌さんにボクの神群としての神格を与えてから少し後、ミレが少女たちを率いて拠点へと到着した。
ボクたちは一階のサロンで待機しているのだが、知らない人に会うという緊張と偉いかもしれない人に会うという緊張で胸がバクバクして非常に気持ち悪い。
簡単に終わってほしいなぁ……。
しばらく後、ミレがサロンの扉をノックする。
サロンは入口入ってすぐ横の扉の奥にあるので、ここでワンクッション置く形になる。
「どうぞ」
ボクの代わりにミリアムさんが入室許可を出した。
今回メインで話すのはミリアムさんだからだ。
ミリアムさん曰く、ボクが直接言葉を伝えるのは控えるべきとのこと。
「し、失礼いたします」
相手も緊張しているのか、少し上擦った声を出しながらもサロンへと入室した。
「ウルス・アル・サリアスの孫娘で、現運命と創造の神殿の聖女ミレイ・エル・サリアスと申します。こちらは妹のリディ・エル・サリアスです」
「よろしくおねがいいたします」
入ってきたのは二人の少女だった。
現聖女であるミレイさんは、13歳くらいの少女に見える、金髪の美しい少女だ。
対して妹のリディさんはボクと同じかやや低め、そのくらいの年齢の活発そうな金髪のかわいらしい少女だった。
「よくぞいらっしゃいました。私はミリアム。この領域の管理をしていた元森と大地と地脈の精霊王です。現在は主より神格を与えられ、精霊王より女神へと昇神し補佐としての任についています。そしてこちらが」
「お初にお目にかかりますわ。私は審判と断罪と死の女神としての神格を与えられています、瑞歌といいます。ミリアム同様主の補佐ですわ」
二人が補佐としてミレイさんたちに名乗り終えると、ボクの紹介はせずにミレイさんたちのほうに向きなおる。
「主のお言葉は非常に貴重なものです。よって、今この場で貴方方に言葉を直接伝えることはありません」
「異論は認めませんわ」
重苦しい雰囲気の中、二人はきっぱりとそう言い切った。
「はい。理解しております。こうして現世でお会いできる機会自体、滅多にあるものではありません。偉大な祖父ウルスですら降臨されたアリオス様とは数度しかお会いしたことがないそうです」
どうやらお爺様は時々この世界に来ているようだ。
今のボクはまだそこまで力が強くないので、現身とかを使ってここに来る必要はない。
でもそのうちそういうのを使わないと影響を及ぼすようになるんだろうなぁ……。
ちなみにイーサさんはこの世界に来る際には力をかなり抑えてやってきているのであまり影響を与えてはいなかった。
「して、聖女ミレイ。この度、ここを訪れた理由はなんですか?」
ミリアムさんはただ端的に用件を尋ねる。
「はい。アリオス様の神託が祖父ウルスに下されました。神託の内容は、アリオス様の孫娘であらせられる遥様の領域を管理するものを探すようにとのことでした。今回、私たち大神殿は、遥様のいらっしゃる領域を聖域と定め、関係者以外の立ち入りを禁じると宣言することにしました。その過程で検討された結果、聖域の管理という大役を私と私の妹が務めることとなりました。つきましては、私と妹が管理者となることについて、神々のご承認を頂きたく存じます」
どうやらこの場所の管理をミレイさんリディさんが行うことになったようだ。
ボクとしては悪意がなければ問題ないと思うのだけど……。
「主」
「希望通りに」
「かしこまりました」
ミリアムさんがボクに裁可を求めてきたので、許可を出す。
これでスムーズに事が進むだろう。
「聖女ミレイ、そしてその妹リディ。主より裁可が下った。希望通りにそなたらに管理を任せましょう。ただし、主の眷属になることが前提となりますが」
「仰せのままに」
「おおせのままに~」
二人はボクの眷属になることを了承した。
これでこの領域を離れても、管理者不在になることはなくなったのだった。
でも、眷属になるって簡単に決めすぎでは?
眷属化スキルは対象者の種族を選ぶことができるスキルでもある。
人間に使えば人間か主となるものの種族のどちらかを選ぶことができるのだ。
つまり、人間からそれ以外に変わることもできる。
でも1つだけ制約がある。
それは、同意がなければ種族を変えられないということだ。
ミリアムさんの場合はそのまま昇神した形で、マルムさんたちは本人が望んでいた形に実現した。
ミレたちの場合は妖狐姿にもなれるという形で実現しているし、瑞歌さんは存在の質が変わるという形で実現した。
果たして、ミレイさんとリディさんはどういう形を選ぶのだろうか。
「質問がございます。よろしいでしょうか」
「構いませんよ。何を聞きたいのでしょう?」
「眷属になることは問題ありません。ですが1つだけ。遥様と同じ種族になることは可能なのでしょうか?」
おおっと? ミレイさん、なぜか妖狐族に興味津々の様子だぞ?
「可能ですが、またなぜそのようなことを?」
ミリアムさんは若干困惑している様子だ。
まぁそうだよね。人間の聖女といえばかなりの地位にいる人なはずだ。
それを失うかもしれない行為をするのはどうなのだろうか。
「至聖所の神像を見ていた時に思ったのです。この知らない種族に私もなってみたいと……」
何をどう思ってそうなったかは分からないが、そんな風に思えるほど魅力的だったのだろうか?
「主」
「わかりました」
ミリアムさんにはこれ以上説明できないようだったので、ボクが引き継ぐこととなった。
今は超越者のふりをしているので多少どもらなくて済みそうだ。
「ボクの種族は【妖狐族】といいます。狐の耳と尻尾がついていますが、獣人ではありません。獣人との違いは、毛や顔以外にもあります。例えばこのように耳と尻尾が生えた状態と……」
そう言って、妖狐本来の姿を披露する。
「!?」
「ふわふわ~」
ミレイさんは目を見開いて驚き、リディさんは目を輝かせて手をパタパタさせる。
「このように人の姿にもなれます。ほかの違いとして、妖力という力を使うことができます。これはどの魔法にも魔術にも当てはまらない力で、神力の次に強力な力となります。眷属の恩恵としてはまずそのようなところでしょうか。当然のことながら、どれも選ばず人間の姿でいることもできます」
「す、すごいです!!」
ボクの説明が終わると同時に、ミレイさんがものすごい勢いで食いついてきた。
さっきまでのできる女性ムーブはどこへ行ったのだろう。
「あ、えっと。お、落ち着いてください」
「も、申し訳ございません」
ミレイさんは何にそんなに食いついたのだろう?
「ミレイさんは、獣人が好きですか?」
これはちょっとした疑問だ。
まぁこの世界の獣人は人狼だけなのだが……。
「人狼種族のことでしたら、普通程度には」
おや? 意外だ。
「ミレイさんは何が好きなのですか?」
「ええっと、狐が好きでして……」
どうやら狐が気に入っているらしい。
この世界でも野生の狐には寄生虫いそうだから飼うのも無理だろうね。
「ミリアムさん、瑞歌さん、どう思いますか?」
このままミレイさんの種族を変えてもいいものだろうか?
ボクとしては狐好きならぜひ同じ種族になってもらいたいわけだけど……。
「主の御心のままに」
「遥お姉様にお任せいたしますわ」
しまった、二人ともイエスマンだったのを忘れてた。
「ミレたちは?」
ミレたちに振ってみると、全員コクンと頷くだけだった。
どうやらみんな問題ないらしい。
「わかりました。ですが、まずは大神官さんに了承を得てください。同意が得られない場合は人間としての眷属とします。行き来についてはこちらから転移水晶を貸し出しますので、それで行ってください」
妖狐族になりたいというなら構わないけど、了承だけはもらってほしいところ。
転移水晶を使えば割と早めに行き来できるはずなので、それで行ってもらいたい。
「ありがとうございます。それでは、すぐにでも行ってまいります」
善は急げとばかりに急いでいこうとするミレイさん。
「え、もう転移するのですか?」
「はい。以前にアリオス様より貸し出していただいた転移水晶が神殿内にありますので、そちらを経由したいと思います」
「あ、はい」
「では、少々失礼いたします。リディ、行きますよ」
「は~い」
最初のころの厳かな様子はもはや完全に消え失せ、目標に向かって爆走する暴走特急少女が出来上がってしまった。
今目の前ですべてを気にせず転移したことを考えると、もう手遅れな気がする……。
「なかなか愉快な方ですね。主様」
「聖女というくらいですからもっと堅苦しいのかと思いましたわ。まぁあれくらい俗っぽいほうが付き合いやすいのですけれど」
どうやら二人も悪くは思っていないようだ。
むしろ好ましそう。
「何にしても、愉快な人なら管理を任せても良さそうですね。ここを一つの大きな街にするつもりもありますから」
どうせなら精霊やハイゴブリンも一緒に暮らせるような場所にしたいな。
「そういえば護衛の方々とお付きの方々はどうすれば」
「すぐ戻ってくると思うので、ミレ、申し訳ないですけどお茶を出してあげてください。護衛の方々は放置で」
こうしてボクたちはミレイさんの帰りを待つのだった。
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