第69話 属神として
唯一の窓口である大神殿を通して世界に間接的にかかわっていきます。
ボクたちの拠点を出て行ったミレが、てくてくと歩きながら例のキャンプへと向かっているのが視える。
周囲には魔物の影も獰猛な動物の影もなく、平和そのものだ。
ふと視る場所をミレから例のキャンプへと移す。
大神殿の少女は、未だに祈りを捧げた姿のままでいた。
『遣いを送りました。少数の者のみで遣いの後をついてきてください。ただし、男性は禁止とします』
神託の形で祈りを捧げる少女に言葉を伝える。
ミレたちフェアリーノームのためにも、男性の侵入は控える必要があった。
今見えるキャンプには、かなりの数の男性と少数の女性がいることがわかる。
ついてきてもらうのは、この少数の女性のみとなるだろう。
『仰せのままに』
大神殿の少女は祈りの姿勢を解くと、すぐ近くにいた少女に耳打ちをしている姿が見えた。
どうやらあの少女の周りには男性は近寄れないようだ。
しばらくすると、ミレが森から出て例のキャンプへと向かう姿が視えた。
向こうも認識したようだが、男性の騎士? が数名、剣を構えて警戒している姿が視える。
対するミレも、敵意ありとして手斧を構えて対抗する姿勢を見せていた。
少しの間にらみ合っていると、男性騎士との間に祈りを捧げていた少女が割り込んだ。
ミレに背中を見せ、男性騎士から守るような姿を見せている。
男性騎士が狼狽えながら何か話しかけているようだけど、聞く気がないので無視しておく。
たぶん、男を襲うから魔物だとかなんだとか言っているんだろうと思う。
少女は何かを口にして、剣を構えた男性騎士はほかの騎士に抑え込まれてどこかへと連れていかれる。
少女はミレに向き直ると、膝をついて謝罪のような姿を示していた。
ミレはコクンと頷くと、ついて来いと言わんばかりに手招きをする。
代表っぽい少女と侍女っぽい少女たちが数名、ミレの後を追う。
キャンプに残ったのは、男性騎士と男性神官だけになった。
さてボクはというと、来客を迎えるということで急いで服を着せ替えられた上にサロンにて出迎えの準備をする羽目になった。
お茶とお菓子はアンカルの街のもので、この世界にはないものらしい。
日本から取り寄せ研究したらしく、その味は日本の洋菓子店の味にも劣らないものとなっていた。
つまり、美味しいのだ。
「し、しかし、こ、この服、な、慣れませんね……」
どういうチョイスかはわからないが、出迎えの服は前回来た白いブラウスと黒いコルセットスカートの組み合わせだった。
「遥お姉様、可愛らしいですわ!!」
「あ、ありがとう、ございます……」
感極まったようにそう言われると、ちょっと照れるというか恥ずかしい……。
「これで出迎えの準備が完了しましたわね」
「そ、そうですね。でも、ミリアムさんを忘れてました。迎えに行ってきてください」
「わかりましたわ。お姉様」
申し訳ないながらミリアムさんを呼びに行ってもらった。
一応これで揃うことになるのかな? あ、でも瑞歌さんに神格与えてなかった。
少し後、ミリアムさんがいそいそと合流してきた。
こっちの事情で急かしてしまった感があってちょっと申し訳ない。
「ミリアムさん、急な話でごめんなさい」
「いえ、問題ありません。今回の件、用件はわかりませんが基本的な対応は私がしようと思いますがよろしいでしょうか?」
申し訳なさそうにしつつも、ミリアムさんからそのような申し出があった。
この世界に疎いボクとしてはありがたい申し出だ。
「ボクからもお願いします。何分、この世界には疎いもので……」
「私もお願いしますわ。遥お姉様には興味がありますけど、この世界には毛ほども興味はありませんもの」
「わかりました。私が対応させていただきますので、主は座ったままでお願いします」
というわけで、ボクたちの話は纏まった。
ミリアムさんはこの世界の生まれなので、状況はよく知っているはずだ。
「あ、瑞歌さん。改めてですが、ボクの属神になってくれませんか?」
改めてではあるが、瑞歌さんがよければ属神になってくれたらと思って誘いをかける。
「それは、理外の者でもということですの?」
いつになく真剣な表情で瑞歌さんが問いかけてくる。
「そうです。ボクはボクの世界を作るうえで色々な世界と交流する必要があると思っています。それには瑞歌さんたちも含まれています。もちろん、お婆様の大切なものもあると思いますので」
今現在でも3世界と繋がる予定があるのだ。
そこにこの世界と瑞歌さんたちの世界を追加しても問題はないと思う。
ただし、瑞歌さんたちの世界は危険すぎるので状況が落ち着いてからになるが……。
「わかりましたわ。私にお任せくださいませ」
「ありがとうございます。じゃあ改めて神格を」
さて、瑞歌さんの適正はなんだろう?
瑞歌さんの額に指を当てて繋がるように意識を向ける。
眷属としては繋がっているけど、それ以上の繋がりが必要だ。
「どう、ですか?」
しばらく続けていると、しっかりと強い繋がりができるのを感じた。
これならできているんじゃないだろうか?
「よく、わかりませんわ。でも、そうですわね。今までの力を新たな方向で使えそうな気がしますわ」
「ちょっとボクのほうで確認してみますね」
ボクはさっそく確認のために自分の情報を思い浮かべた。
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名前:御神楽遥
性別:女性
年齢:8(16)
種族:妖狐
神格:運命と創造の主神
眷属:フェアリーノーム・妖狐族・狼族・森と大地と地脈の女神・混沌に蠢くもの
属神:ミリアム(森と大地と地脈の女神)・瑞歌(審判と断罪と死の女神)New
直属信徒:2名
間接信徒:5万名(大神殿経由)
スキル・権能:
・攻撃系:【狐火】【巨尾の一撃】【創影】【光輝】【神軍召喚】【混沌の一撃】【神の炎】【天の炎】【運命の輪】【百鬼夜行】
・創造系:【アイテムクリエイト(物質創造含む)】【エリアクリエイト(神域創造・新世界創造含む)】【生命創造】【神軍作成】
・眷属・信徒系:【眷属化】【信徒化】【眷属召喚】【眷属命令】【信徒召喚】【信徒命令】
・便利系:【空間収納】【空間転移】【領域知覚】
・眷属スキル:【分体作成】New
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結果、瑞歌さんは審判と断罪と死の女神の神格を得ていた。
ついでに、いつのまにかボクは瑞歌さんのスキルと思われる【分体作成】を習得していた。
たぶん属神になったからだろう。
「瑞歌さん、神格得られてます! 成功です!!」
「本当ですの? 遥お姉様」
「はい!」
「それは、よかったですわ。理外の者だけあってだめかもしれないと思っていましたの」
どうやら瑞歌さんは自分の出自を気にしていたようだ。
でも問題なく属神になれたのだから、理外の者でも関係はないのだろう。
「うん。すごくよかったです! 今後もお願いしますね」
「お願いします。瑞歌さん」
「お二人とも、改めてよろしくお願いいたしますわ」
こうしてボクを主軸とした属神2名が決まった。
あとは誰になるだろう?
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