第68話 ボクたちの拠点と大神殿の使者
管理地域を増やすために徐々に構築中……。
引き続き拠点建設は続いている。
休む場所だけなら人海戦術でほぼ終わっているのだが、なぜかそれ以外の場所を凝りに凝る。
お風呂であったり寝室であったりプレイルームであったりだ。
なので、ボクたちの住居となる建物の建築は遅々として進まない。
というか、巨大化しつつある。
「なんだか地下がえぐいことになっていませんか?」
見学スペースから見る地下は十メートル近くにわたって掘り下げられていた。
芯となる柱はもっと下に打ち込むようだが、暗かったり明るかったりする黄土色の地帯に入っているので、もしかしたらローム層? というやつなのかもしれない。
まぁ地理とかでちょっと習った程度なので違うかもしれないけど。
ということは、火山が付近にあるということかな?
さらに掘削は進み、深く掘られた地下に何本かの専用の穴と杭を用意して打ち込んでいく。
どうやったかはわからないけど、挿入されるのは奇麗な石の柱だった。
「あの石の柱はなんですか?」
隣にいるミレに話しかける。
「非常に硬度の高いアダマス石で作られた柱ですね。アンカルの近くの山脈から採集しています」
「アダマス石?」
聞きなれない言葉が出てきた。
なんぞ?
「ダイヤではないのですが、それと同じくらいの硬度を得た石のことです。表面がキラキラしているものの宝石ではなく石なので、石材として使用しています」
どうやらやたら硬度の高い石のことのようだ。
山脈と言っていたけど、おそらく地下深くから採集したのだろう。
「アダマスってほかにもあるんですか?」
もしかして鉱石みたいなのもあるのだろうか?
「アダマス鉱はあります。産出量極端に少ないのであまり使用されてはいません」
どうやらアダマス鉱石は存在しているようだ。
なんとなくファンタジーな空気が漂ってきたぞ?
「アダマス鉱とに近しいものといえば、深層鉱ですわね。時々アダマス鉱も深層鉱石化することもあるみたいですわ。私はよく知りませんけど、老亀から聞きましたわ」
「老亀、ですか?」
新しい情報が瑞歌さんから出てきた。
聞いた感じだと言葉の通じる亀みたいな感じだと思う。
玄武とかそういうイメージなのかな?
「え~っと、なんでしたかしら。尾が蛇になっていたかしら」
「玄武っぽいですね」
どう考えても玄武でした。
「そうかもしれませんわね。種のうちで飛びぬけた力を持っていたと言っていましたから」
理外の者となった玄武かぁ。
四神の枠組みから外れちゃったのかな?
「いつか会ってみたいかもしれません」
そんな話の分かる亀なら一度くらいは見てもいいかもしれないと思った。
「今度連れてきますわね。ただ鉱物が食べられないと辛いでしょうから、そこをどうするか……。でも、そこは解決できそうですわね」
なぜか瑞歌さんはボクを見ている。
あ、もしかして作れって言ってますか?
「そ、その時考えます」
鉱石だらけの世界とか、ちょっとずるだと思います。
「さて、一旦向こうの世界に行きましょうか」
こちらでは今すぐに進む話はない。
なので一旦向こう側に行くことにする。
◇
もう1つの異世界に戻ってきたが、家の中も家の外も平和なものだった。
魔物がいるわけでもなく、動物がいるわけでもない。
ただ一つ違うことがあるとすれば、森の外側、アルテ村の方向に大きなキャンプが1つあったことだろう。
「森の外に多数の人がいるキャンプがありますね。なんでしょうか」
ハンターにしてはキャンプの規模が大きすぎるし、領主や王族といった雰囲気でもない。
「いつの間にか家の中から外のことがわかるようになってる……」
今気が付いたことだが、ボクの知覚能力がアップしているようだった。
周囲を思い浮かべればその景色と状態を知ることができる。
おそらく、神格の継承を行ったせいだろう。
気が付かないうちに能力がアップしていたらしい。
「ということは、扱える力も少し増えてる?」
簡単にボク自身のことを思い浮かべてみることにした。
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名前:御神楽遥
性別:女性
年齢:8(16)
種族:妖狐
神格:運命と創造の主神
眷属:フェアリーノーム・妖狐族・狼族・森と大地と地脈の女神・混沌に蠢くもの(瑞歌)
属神:ミリアム(森と大地と地脈の女神)
直属信徒:2名
間接信徒:5万名(大神殿経由)
スキル・権能:
・攻撃系:【狐火】【巨尾の一撃】【創影】【光輝】【神軍召喚】【混沌の一撃】【神の炎】【天の炎】【運命の輪】【百鬼夜行】
・創造系:【アイテムクリエイト(物質創造含む)】【エリアクリエイト(神域創造・新世界創造含む)】【生命創造】【神軍作成】
・眷属・信徒系:【眷属化】【信徒化】【眷属召喚】【眷属命令】【信徒召喚】【信徒命令】
・便利系:【空間収納】【空間転移】【領域知覚】
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このようなリストが頭の中に浮かんだ。
継承してから随分といろいろなものが増えているようだ。
この間接信徒ってなんだろう?
瑞歌さんって混沌に蠢くものっていうのか……。
ボクの今見られる情報には、ボクの知らない情報がたくさん載っていた。
神軍作成とか気になるけど、攻撃スキルがすごく増えているのも気になります!!
「ミレ、瑞歌さん」
「?」
「どうしましたの? 遥お姉様」
ボクの問いかけに、ミレと瑞歌さんが反応した。
「森の外に誰かいるようです。誰かはわかりませんけど、普通の人ではないようです」
確認に行きたいところだけど、残念ながらボクは情報を持っていない。
さて、どうしたものか。
「遥お姉様、何か目印のようなものはありませんの?」
「目印……? う~ん。たくさんの棒が円の中心に向かって並んでいます。光をイメージするような感じ?」
ボクが見た光景を伝えると、ミレが袖口をクイクイと引っ張ってきた。
「どうしたの? ミレ」
ミレのほうを見ると、何やら木の板に文字を書き始めた。
なになに? 大神殿?
「ミレ、よく知ってるね。えら~い」
ついついミレの頭をなでなでしてしまう。
ミレは嫌がらず、むしろこすりつけるように頭を押し付けてくる。
「大神殿の人ならなんで村に宿をとらないんだろう」
「簡単なことですわ。高貴な方を泊める宿がないだけですわ」
「そうですか」
瑞歌さんの言うことが正しいのかもしれない。ボクはそう思った。
「あれ? 誰か出てきた」
知覚できる範囲の光景を見ていると、テントの中から小柄な少女が現れたのが見えた。
きれいな銀髪の、かわいらしい少女だ。
ところが突然、そのかわいらしい少女が森に向かって跪き、祈りを捧げ始めたのだ。
方角は……、ボクたちのいる方向!?
『我らが神よ。運命と創造の女神よ。創造神様のお導きにより参りました。森へ、貴方様の領域への入場を許可頂けますよう、お願い申し上げます』
今祈りを捧げている少女の声だろうか? 突然ボクの頭の中にそんな声が聞こえてきた。
森へ入りたいらしいけど、どうなんだろう?
「大神殿の人っぽい女の子がボクたちの元へ来たいっていうんですけど、いいですか?」
なんとなく二人に同意を求めてしまう。
「わたくしは構いませんわ」
ミレも同時にコクンと頷いた。
「じゃあ条件付きで許可しますね」
ボクがそう言うと、ミレがボクたちの前に出た。
「ミレ?」
書かれた文字を見るに、案内は自分がするとのこと。
「大丈夫? 襲い掛かってこない?」
ミレに尋ねると、「大丈夫」と返事を返してきた。
「うん。気を付けてね」
ボクがそう声をかけると、ミレはホイッスルを鳴らす。
直後、ミカたちを含むフェアリーノームが10名ほど現れる。
どうやら護衛も兼ねて残すようだ。
「新世界までホイッスルって届くんだ……」
ボクが驚いていると、ミレが手を振りながら拠点から出ていく姿が見えた。
「いってらっしゃ~い」
さて、今回のお客様は何の用件で来たのだろう。
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