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第67話 ミレと瑞歌の静かなる戦い

ちなみに、みんなが雑魚寝できるほど大きなベッドなので、移動するときはベッドの上を歩くか這いずることになります。

お行儀は大変悪いです。

あと、トイレに行く子がほかの子を踏むことも日常茶飯事です。

 異世界に来てから、いつの間にか個人の部屋がほしいとか考えることがなくなった。

 実際欲しいかと聞かれても困るし、たぶん保留にしてしまう。

 部屋に戻ればフェアリーノームたちが寝転んだり積み重なったり思い思いに楽しんでいるので、それを見て癒されている部分もあると思う。

 というか、フェアリーノームってなんでこんなに集まるのが好きなんだろう?


「ミレたちってよく集まるけど、疲れたりしないの?」

 純粋な疑問から聞いてみるがミレにはきょとんとした表情を返されてしまった。


「いえ?」

 淀みなくそう答えられてしまった。

 どうやら慣れているようだ。


「あら? ポンコツどもは群れて寝ているのかしら。おかしなものですわね」

 瑞歌さんがすかさずミレを煽る。


「なんとでも言ってください。主様も一緒になって寝ているんですから問題はありません」

「 な ん で す っ て ! ? 」

 ミレが意地悪くそう言った瞬間、くわっと瑞歌さんの目が見開かれた。

 そしてそのままワナワナと震え始めてしまった。


「ミレ、そういうのはよくないと思います。言い返しても喧嘩になるだけですよ?」

 多少なら構わないものの、二人がどこまで線引きしてくれているかわからないので、やんわりと釘を刺しておく。


「ミ、ミレさん? ちょっと、詳しく、教えていただけるかしら」

 震えが止まったと思ったら、今度は素知らぬ顔をしてミレに近寄っていく瑞歌さんがそこにいた。


「嫌です」

 ミレ、勝ち誇った顔をしながらきっぱり言い切る。


「そう言わないでくださるかしら。なんでしたらクズどもの核を持ってきてもよろしくてよ?」

「む。それは悩ましいですね……」

 なんだかわからないけど、二人の戦いが始まっているようだ。

 現在は瑞歌さんの条件が有利か?


「しかし、一応撃退はできますし」

「でしたら、私がいくつか持っている深層鉱も付けますわ」

「し、深層鉱ですか……。仕方ないですね」

 どうやら瑞歌さんが勝ったようだ。

 ところで深層鉱ってなに?


「深層鉱ってどういうものなんですか? ミレ」

「深層鉱は空間の狭間に消えた鉱山から産出される特殊鉱石です。時折惑星上から鉱山が消えることがあるんですが、そういうタイミングで生成されますね」

「鉱山が消えてる原因は鉱物をじっくり食べる理外の者が盗んでいるからですわ。私とは違う不定形生物や亀とかですわね」

 どうやら、ミレが欲しがる鉱石を生み出しているのも、理外の者のようだ。

 結構密接にかかわっているんだね。


「それで使い方はどうなんです?」

 気になるのは使い方だ。


「基本素材は鉄類ですけど、なんにでも使えますね。あらゆる力の効率がよく錆びません。軽く丈夫で加工もある程度しやすく柔軟性も持ち合わせています。どういった理由でこうなっているかはわかりませんが、有用な素材なので重宝しています」

 どうやらミレたちにとっても大切な素材のようだ。


「それで、教えてくれますの?」

「うっ。仕方ないですね……。主様と私たちは同じ部屋で大きなベッドの上で雑魚寝している状態です。これからも変わる予定はありません」

 瑞歌さんにミレが淡々と説明していく。

 

「なっ、なっ、なぁ!?」

 ミレの話を聞いていくうちに、瑞歌さんの顔がどんどん変化していくのが面白い。

 最終的には目を見開き口を開けた状態まで行ってしまった。


「残念でしたね。瑞歌さん」

「そ、そんなぁ~……」

 何がそんなぁ~なのかはわからないけど、瑞歌ががっくりとうなだれてしまった。

 そんな瑞歌さんとは対照的にミレは勝ち誇ったような顔をしている。

 悪い子だ。

 瑞歌さんが一緒に寝られるかはわからないけど、少なくともあっちの拠点サイズだとフェアリーノーム50人も無理だ。

 瑞歌さんはボクよりも大きいことを考えると、なおさら厳しいかも?

 

「は、遥お姉さま!?」

「よくわかりませんけど、ミレも瑞歌さんもそこまでにしてください。まだまだやることは多いのですから」

 瑞歌さんが何を言いたいのかはわからないけど、ミレが何を考えてるのかわからないのでボクにも何も言えないんだよね。


「そもそも瑞歌さんって寝るんですか?」

 本来の姿が粘性生物だとしたら、睡眠なんか必要なさそうだけどね。


「別に必要ではありませんわ。ですが、遥お姉さまと添い寝できるチャンスは逃したくありませんし……」

 なぜかやたらと瑞歌さんはボクを大事にしてくれるようになったんだよね。

 ほんと、なんでだろ。


「お婆様とは?」

「葛葉お姉様はいつもクールでしたわね。むしろ、遥お姉様に執着していることに驚いたくらいですわ。ですから、そんなことはありませんでしたわね」

 どうやらお婆様はボクとは違って流されないタイプらしい。

 ちょっとうらやましいかも……。

 ボクは気が付けば今の状態だったわけだし……。


「うぅ。もっと強い意志を持って頑張ります……」

 これから十分に気を付けようと思う。


 建設中の共同浴場を後にして、ボクたちの拠点となるロッジの建設地へとやってきた。

 かなり大きな建物になるようで、土台は石材で作られている。

 たぶん3階くらいの建物になると思うけど、もしかしたらもっと高く作られる可能性もある。

 あっちの世界の間取りよりも大きめに作られているようなので、完成が楽しみだ。


「遥様!」

「遥様~」

 ボクの姿を見た建設作業員の名前のないフェアリーノームたちが近寄ってくる。

 いそいそと近寄ってくるその姿は実にかわいらしいものだった。


「皆さん、がんばってください」

「「はい!!」」

 簡単に応援すると、みんな嬉しそうにする。

 なんだかアイドルか何かの視察のような気分になってきたよ……。

お読みいただきありがとうございます!

ブックマークや評価ありがとうございます。


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