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第66話 続・施設案内

本日もひっそり投稿です。

施設はちょこちょこ増えていくので、住人も少しずつ増えていきます。


 ミレに案内されてやってきたのは木材で作られた2階建てのロッジだった。

 どうやらここが薬学研究所らしいのだけど、中に入っても誰もいなかった。

 机や薬研、釜や蒸留器などがあることを考えると、薬師工房とか錬金術工房といったところなのだろう。


「ここでは薬学を研究していく予定です。主様のスキルも利用して、さらに有用なポーションや薬の作成を目指します」

 どうやらここは設備や人員が揃っていないだけのようだ。

 今いるメンバーの中で研究に詳しそうな子といえば、ミカくらいだろうか。

 今は液体エーテル研究をしているようだけど……。


「遥お姉様のスキルですか? 遥お姉様はどのようなスキルをお持ちなのですか?」

「ええっと、今はまだ少ないですよ。【アイテムクリエイト】とか【エリアクリエイト】とか、そういった補助的なものがメインですし」

 言っていて情けないことだけど、攻撃スキルは極端に少ない。

 というか、スキルという括りでは存在すらしていなかった。

 もはや権能の一部といっても過言ではないかもしれない。


「攻撃的なものはありませんの?」

「えっと、今だと影を操ったりできるくらいですかね? お婆様の補助で少しずつ習得中です」

 瑞歌さんの第二お姉様? として情けなくなってくる。

 ボクもこう、すごい力で無双できるくらいのパッとした感じのスキルが欲しいものだ。


「葛葉お姉様の力が使えるなら十分ではありませんの? 単体相手であろうと集団相手であろうと十分に対応できますわよ?」

 瑞歌さんはきょとんとした顔をしながらそう話す。

 そう、なのかな? いまいちわからない……。


「いまいちイメージがわかない、です」

 単体相手には使ったことがあるものの、集団にはまだ試したことがない。

 なので、実際にどうなるかのイメージがわかないのだ。


「あっちの古い世界であれば盗賊を相手に使ったり魔物を相手に使うといいですわ。何事も経験ですわよ?」

「悔しいですが、瑞歌さんの言う通りだと思います。経験してコツをつかむことがベストかと」

「牙を剥いてくるだけかと思っていましたのに、意外にも冷静ですわね」

「もう!」

 この二人はすぐに口論しようとするんだから……。


「主様のことですから当然です」

「遥お姉様のことですから当然ですわね」

「「むっ」」

「マネしないでください」

「マネしないでいただけるかしら」

「「むっ」」

 すぐ口論しようとするくせに、意外にも相性はいいのだろうか?

 やってることも考えてることも同じなのが、なんとなく微笑ましく感じる。


「ミレも瑞歌さんも、ありがとうございます。仲良くなれとは言いませんけど、お互い辛くならない程度におねがいしますね」

 ボクの中にお婆様がいるせいかもしれないけど、瑞歌さんにも辛い思いをしてほしくないという気持ちがある。

 なのでボクは、両者が協力できるように進めていきたいと考えている。


「主様がそういうのでしたら……」

「遥お姉様がそういうのでしたら」

「「むっ」」

「はいはい。ほら、二人とも手を出してください」

「は、はい」

「どうぞ、お姉様」

「じゃあこうしましょう」

 二人が差し出してくれた手を取り、ボクを中心に二人が繋がるように手を繋いで見せた。

 今ボクの両手は二人の手と繋がっている。


「あ、主様……」

「お、お姉様……」

「これでボクを通して二人は仲良し、です」

 これが繋がる第一歩になればいいけど、簡単じゃないよね。


 それからしばらくは、ミレの案内を聞きながら三人で手を繋いでいた。


「遥お姉様には敵いませんわね」

 瑞歌さんの対応は初めて出会った時と比べて180度変わっていた。

 それはもう別人なほどに。


「ボクはまだ弱いですよ? 戦えば負けてしまいます」

 早く強くなりたいです。


「そうではありませんわ。それに、遥お姉様なら私よりももっと強くなれますわ。そうでなくとも、遥お姉様には葛葉お姉様という最強の庇護者がいるではありませんか」

「そ、そうですね。ただ、お婆様は大切なものの優先順位がボクのほうが世界より先に来ている気がするんですよね……」

 実際お婆様は、ボクのためなら世界も配下もまとめて滅ぼしかねなかった。


「たしかにあれには驚きましたわね。でも、それだけ葛葉お姉様は遥お姉様を大切にしていらっしゃるということですわ。まぁそのおかげで、私は可愛くて素敵なお姉様が二人に増えましたもの。うふふふふふ」

 お婆様もなかなか病んでると思ったけど、瑞歌さんも相当だった。

 ボクの周りには病んでる子しかいないのだろうか。

 

「それでは次に行きましょう。今のところこの薬学研究所は稼働できませんので、これ以上説明のしようがありません。次は共同浴場です」

 瑞歌さんがおかしくなったタイミングで、ミレは次の場所を切り出す。

 次は共同浴場か。


 共同浴場といってもいくつか分かれているらしく、ボクと眷属専用浴場とそれ以外という大雑把な分け方しかされていないようだ。

 この分け方は家の大浴場と似ている気がする。


「ここが共同浴場です」

 ミレに案内された共同浴場は、いくつか建っている建物の1つで、ほかの建物からは少し離れた場所に建っていた。

 建物は平屋造りで、左右の幅と奥行きがかなりあった。

 パッと見た感じでは健康ランドのような感じだ。


「中は妖都の様式にしてみました」

 そう言うのでどんなものかと入ってみると、まずは広めの靴脱ぎ場が出迎えてくれた。


「ここでは靴を脱いで上がります」

 ミレの案内に従い靴を脱ぐ。

 そのままミレについていくと、扉の先にはカウンターがあった。


「このカウンターで利用方法を決めます。カウンター右側にある大きな空間はくつろぎスペースです。お風呂はその先にある暖簾から入ります」

 ミレに案内されるまま進むと、たくさんのローテーブルと小上がりのある畳敷きの和室のような場所が目に入った。

 どうやらここがくつろぎスペースのようだ。


「ゆっくりできそうですね」

 じっと見てると、思わず寝転がったりしたくなる。


「この暖簾の先はまだ作り途中でして、現在工事が行われています。夜くらいにはある程度形になると思いますが……」

 たしかにミレの言う通り、暖簾の先からは木を叩く音などが聞こえてきている。

 進捗はわからないけど、結構な人数が投入されているようなので出来上がりが楽しみだ。


「無理しないようにしてほしいです」

「ありがとうございます」

 今日中に完成しなくてもいいので、無理だけはしてほしくないと思った。

 お風呂ならあっちの世界にもあるので。


「瑞歌さんは、お風呂入ったことあるんですか?」

 粘性生物みたいな見た目をしていたから、垢とかでないのかな?


「入ったことはありませんわ。でも、葛葉お姉様はよく入っていましたわね。どうせですし、試してみようかしら」

「じゃあ、お風呂入るときに一緒に入りましょう」

「えぇ。望むところですわ」

 瑞歌さんはやっぱりお風呂に入ったことはないようだった。

 これはちょっと楽しみかもしれない。

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