第65話 間に挟まれるのってこんなにつらいんですね……
瑞歌さんを仲間にしたことで、いよいよ世界づくりを加速させていきます。
日本との開通はもう少しだけ後。
改めて仲間に加わった【亜神】の少女である瑞歌に、ボクは聞きたいことがあった。
「ミレたちの言う【亜神】ってなんなんですか? 瑞歌さん」
そもそも【亜神】なんて区切りをしているけど、よくわかっていない。
「【亜神】と言われてもわかりませんわ。私たちは自称【理外の者】としていますので」
「【理外の者】ですか?」
「えぇそうですわ。あらゆる世界の理から外れた、世界の外に存在する者ですわ。だからかはわかりませんけど、神みたいに世界を作ったりなんかはできませんわね。序列といいますか、力の順位などはありますけど、仲間とか同族なんてものは存在しませんわ」
まるで悪魔の集う魔界かなにかのようである。
「まぁたしかに、過去に神であった者もいるようですが、ほとんどは力に溺れたクズばかりですわね」
「力に溺れたクズ、ですか?」
「えぇそうですわ、遥お姉様。どこかの世界で強力な力を得て、好き勝手に暴れたりした者たちの死後の末路ですわ」
「瑞歌さんも、ですか?」
気になったのは瑞歌さんの来歴だ。
どのようにして今に至ったのか、それが気になる。
「私ですか? 私の場合は元々、混沌の海から生まれた者ですから、クズどもとは違いますわ。最初からそうであった。というのが真実ですわね。その点、葛葉お姉様は違いますわ。別の世界で力を得て、生きたまま自力で神格を得て混沌の海に降り立った、頭のおかしな存在ですわね。私やほかの者なんてあっという間に叩きのめされましたわ」
お婆様、どうやら若いころはやんちゃをしていたようだった。
すごく派手に行動してたんですね……。
瑞歌さんについて尋ねていると、瑞歌さんが纏っていた気が変わったことを感じた。
禍々しいような気配がまるっと消え失せたのだ。
「ミレ、瑞歌さんの気配変わりました?」
いまだ怪訝そうな顔をしているミレに問いかける。
「そうですね、癪ですが気配や雰囲気が完全に変わりました。主様の眷属となったことで違和感がなくなったのでしょう」
どうやらミレも同じように感じていたようだ。
「みんなはどうですか?」
近くにいたフェアリーノームたちはみんなミレと同じ返事を返す。
「千早さんは大丈夫ですか?」
となると、問題は千早さんか。
「まったく問題ありません。眷属化するだけでここまで変わるんですね~」
どうやら千早さんも問題ないようだ。
マルムさんたちも気になるけど、確認は後にしておこう。
「ええっと、まぁ、仲良くしろとは言いませんけど、お互いに尊重くらいはしましょうね」
なんとなく話すこともなかったので、そういって締めくくった。
この後は作業の割り振りだったり、今後の予定を決めないといけない。
「千早さんと妖狐族は何かやりたいことありますか?」
とりあえず近くにいた千早さんに尋ねることにした。
「私は巫女見習いとして遥様のサポートです。神事関連も執り行えるよう頑張りますね。ほかの子たちは社が出来上がったらそこでの仕事がメインになるかと思います」
「わかりました。とりあえず割り振りがないのは瑞歌さんだけですね。後で考えましょう」
これでいったん全員やることが決まったと思う。
あとはボクと瑞歌さんだけど。
「日本との接続は社からやろうかなぁ……」
重要なのは日本からの物資の流入だ。
まぁ個人で持ってくる程度しかできないんだけど……。
「さて、とりあえずこの周囲は神域にしておこう【エリアクリエイト:神域】」
ボクを中心に半径4キロほど距離が関係者以外立ち入り禁止に設定された。
今この場所に入れるのは、親族とフェアリーノームたち、ミリアムさんとマルムさんたち、千早さん含む妖狐族、そして瑞歌さんだ。
手狭になりそうだったら、気が向いた時にでも空間拡張しようかな。
「さて、神域化もできたので建物巡りに戻ろうと思います。瑞歌さんも来ますか?」
「もちろんですわ」
「仕方ありません。では次へ案内します」
さすがのミレでもそう簡単に許せるものではないようだ。
こうなったら、ボクが間に入ってしっかり円満にいくように頑張らないと!!
「主様? どうなさったのですか?」
「遥お姉様?」
どうやらボクが気合を入れていたところを見られてしまったようだ。
恥ずかしい……。でも、負けない!!
「み、みんなのためにがんばりますよ!!」
「「……えっ?」」
恥ずかしいけど頑張ってそう宣言した結果、二人とポカーンとさせてしまいました。
ぐぬぬ……。
「主様は何か興味あることはできましたか?」
瑞歌さんとミレと一緒に歩いていると、ふとそんな質問をされた。
う~ん……。
「とりあえず、エーテルとホムンクルスですかね。今一番気になっています」
水で薄めれば魔力回復ポーションにもなるくせに、精霊が生まれたり生命を作り出せたりするらしい、不思議な液体エーテル。
これがあれば街の住人や人員を増やせるような気がしている。
防衛のためにも、人を増やしたいし……。
「そうですね。では、薬学研究所に行きましょう」
ボクの意を汲んでか、ミレがそう提案してきた。
「そう、ですね。見てみましょうか。瑞歌さんも」
「はい、遥お姉様」
「かしこまりました。主様」
こうしてボクたちは謎に満ちた薬学研究所へと向かうのだった。
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