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第44話 狼耳娘マルムとセリア

二つ耳派と四つ耳派がいる激しい争いの世界の話……。

ケモ耳は奥が深い。

 翌日、ロッジ2階にあるマルムさんとセリアさんの部屋から「キャー」なんていう悲鳴が聞こえてきた。

 ちょうどその時、ボクはみんなと露天風呂でくつろいでいたところだった。

 ちなみにこの露天風呂だが、最近外からの覗き見を防止する結界が張られたので、もう見られることはないらしい。


「二人とも起きたんだね」

 ミレにマッサージされながらそんなことを呟く。

 ミレは何も言わず、ただゆっくりボクをマッサージしていた。


 お風呂から上がると、そのまま2階へ降りる。

 そのまま先ほど悲鳴が聞こえた部屋へ向かうと、二人の美女が大量の抜け毛と謎の液体相手に苦戦しながら掃除をしていた。

 そばにいるのはミリアムさんだ。


「お、おはよう、ございます?」

「あ、お、おはようございます」

「遥様、おはようございます」

 自然に挨拶を返されたけどまったく見覚えのない二人だ。


「う~ん……」

「主。マルムさんとセリアさんです」

「え? 本当ですか!?」

 ミリアムさんに教えられてわかったけど、聞いても見てもびっくりしたよ。


 ボクはマルムさんとミリアムさんを見る。

 正直人狼姿の時は違いがいまいちわからなかった。

 髪型もないし声とスタイル? くらいでしか判別がつかなかったが、今はわかりやすくなっている。

 

 狼のような口は人間の口になり、鼻も同じようになった。

 それどころか、どういうわけか髪型も別々の髪型になっていて、方やショートボブのような髪型で、方やショートカットのような髪型になっていた。

 目の色はどちらも茶色なので、ここに違いはないかな? あとは肌が白く毛の色は黒かった。

 耳と尻尾は狼の物が付き、同時に人間の耳も付いている。

 これは完全に別の種族だ。


「す、すごく変わりましたね」

 驚きの変化である。

 本当にどうやったの?


「そうですよね。驚きました」

「自分たちの変化にも驚きましたけど、それ以上に驚いたのは、この謎の液体と大量の毛です……」

 改めて指摘されたので見てみると、いったいどこから出たのかわからない謎の液体が広がっていた。

 おそらく就寝時に何かしらの変化が起きたのだろう。

 もしその光景を見ていたとしたら、相当なホラーだったに違いない。

 ちなみにボクがその光景を見てしまったら、すぐに逃げ出すと思う。

 怖いのは苦手だから。


「遥様、おはようございます。あら? もしかしてマルムさんとセリアさんですか?」

 千早さんも誰だか分らなかったようだ。

 やっぱりそうなるよね。


「はい。そうです」

「よくわかりましたね」

「なんとなくです」

 千早さんは二人のこともよく見ているようだった。

 ボクとは大違い。


「当然遥様も気が付いたのでしょう?」

「あ、あはは……」

 さて、なんのことやら。


「それにしても今の状況も驚きですが、この建物も驚きです」

「少なくともソレクの里にはありませんでした。あのベッドも」

 二人は出された朝食を美味しそうに食べている。

 身体が変わっても食べ方に違和感はないのだろうか?


「ソレクの里のベッドはどんなものだったんですか?」

 これは本当に好奇心からの質問だった。


「木の枠組みに藁と毛皮か藁と毛皮です」

「石の寝台もあるにはありますけど、痛いです」

 想像以上にひどいありさまだった。


「それは体が痛くなりそうですね」

 そう言ってふと考える。

 そういえば、平安時代もそんなにかわらないんだっけ?

 板の間に上着だけとかそういうのも多かったとか。

 そう考えると、あんまり変わらないのか。


「まぁ今後どうなるにしてもです。王都に着くまではここで日ごと、休んでいくことになります」

 野営はしてみたいけど、正直怖いし……。

 いつか、キャンプしてみたいなぁ……。


 それから準備をし、再び転移水晶から昨日の地点まで移動する。

 昨夜の地点は結界が有効だったのか荒らされた形跡もなく周囲も問題なさそうだった。

 そのまま街道に馬車を進めて、再び王都を目指す旅を始めた。


「現在は順調っと。う~ん。そう簡単にトラブルには出遭わないか」

 昨日に比べて揺れに慣れたのか、今はまだ楽な感じがする。

 このまま倒れずに済めばいいんだけど。


 ボクたちの馬車が珍しいのか、時折商人さんやハンターさんたちが擬態したペガサスたちや馬車を見ていく。

 あと外に身を乗り出して警戒しているマルムさんとセリアさんのこともじっくり見ているのが目についた。

 どの人もじろじろと見ているので何かを観察しているのだと思う。


「ねぇセリア」

「言いたいことはわかるわよ、マルム」

「「じろじろとうざったい!!」」

 どうやら二人とも男たちの視線にうんざりしていたようだ。


「今まではこんなことなかったのにね」

「姿が変わったからかな?」

「たしかに、大違いだものね」

「お父さんとかお母さんにはもう会えないレベルね」

 なんだか二人が一大決心をしているような気がする。

 血の繋がりは見た目がすべてじゃないと思うけどなぁ……。


「しっかし、この調子だと王都でも一波乱ありそうだね」

「野営の時はもっと気をつけなきゃダメかも。前は結構安全だったのに」

「「はぁ~」」

 幅広い人間にも受け入れられる見た目になったせいか、いらぬ苦労を背負い込んでしまったようだ。

 なんだかごめんなさい。

お読みいただきありがとうございます!

ブックマークや評価ありがとうございます。


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