第187話 さらに大きくなった街
山田さんのお手伝いはいったん終了し、次の日ボクはアルテへと向かうことにした。
道中見かけた狼をミレたちと共に狩りながら皮集めをしてお小遣いを稼ぐ。
しかし残念なことに、20頭を狩ったあたりから狼の姿は見えなくなってしまっていた。
気配はするのに近づいてこない。
「ミレ、狼たち逃げちゃいましたね」
ボクがそう話しけるとミレはこくんと頷いた。
どうやら完全警戒モードに移ってしまったらしく、狼たちはその後も姿を見せなかった。
ボクのお小遣いはどこへ?
それからしばらく、ボクたちは森を彷徨い歩きお小遣いを探して回ったものの成果は得られなかった。
お小遣いを得られなくなったとわかったボクたちは一旦諦めて再びアルテへと向かって歩き始める。
今回は前回と違って馬車での移動はなし。
そんなこんなで、いつものメンバーであるミレとミカとミナと話しながら歩いているとアルテへと続く道へとたどり着いた。
アルテとは反対方向に続く道は、例の古代神殿方面に続いている。
そしてアルテはアルテでも、アルテの街の方向にはたくさんの馬車や人が並んでいるのが見える。
相も変わらず人気がある街のようだ。
ちなみに前身であるアルテ村はその真横にあるのだが、村からも街へ入ることは可能だったりする。
でも部外者は利用できないらしいんだよね。
「やー、今日も人がたくさんですな~」
なんとなく行列を眺めながらボクはそんな感想を漏らす。
普通に待つと一体どのくらい待つことになるのだろうか?
そんなことを考えながら行列を眺めていると、気になることがでてきた。
ボクが行列を見ているように、道行く人もボクたちをちらちらと見るのだ。
「あんな小さい子が一人で……大丈夫かしら」
「何だってあんな小さな子が……」
「小さいのに苦労してるんだな……」
「小さい小さい、う、うるさいですよ!」
理由はよーくわかりました。
みんなしてボクたちを見て小さい小さいそればっかり。
そんなに小さくはないんじゃないですかね?
一応130cm以上はあるんですけど?
なんなら140くらいあるはずですし!
まぁ測ってはいませんが。
ま、まぁこんなことで目くじらを立てるのはよくないのでボクはスルーすることにしますけどね。
「まぁいいや。ミレ、ミカ、ミナ。行列に並ぼう?」
一通り腹を立てた後、ボクたちは列の最後尾に並ぶことにした。
まぁ二時間くらいすれば中に入れるでしょう。
というわけで、その間待ちながらボクたちはちょっとした遊びをして時間をつぶすことにした。
遊び始めてどのくらい経っただろうか。
いつのまにか子供たちが増え、みんなでわいわい遊んでいるとあっという間に門の近くまでやってきてしまった。
だいぶ長いこと遊んでいたようだ。
さて、受付して街に入ろうかな。
「よろしくお願いします」
「えっ、あー……」
早く街に入りたいので手続きをお願いすると、衛士さんは頭を抱えてしまった。
あ、これはだめなやつですね?
「遥様は入門審査を受けなくて結構です。神殿門でも貴族門でもお好きなところからお入りください。なんでまた通常門にいるんですか……」
「あはは。ごめんなさい」
お仕事の邪魔をしてしまった形になってしまったが、普通に街に入って活動したかっただけなんです。
専用門から入ると自動的に護衛が付くのが嫌だったんです。
「まぁいいです。一応ヒンメル様からはお見かけした際はこちらに連絡するようにとの連絡命令を受けておりますので、報告だけはさせていただきます。今後遥様はこちらも自由に通れるように割符を発行させていただきますのでそちらをお使いください」
「は、はひ……」
言葉は優しいですが、はっきり怒られました。
今度は気をつけよう。
さて、気を取り直してアルテの街へと入ることにしましょう。
「おぉ。ものすごく人が増えてる!?」
少し見ない間に、アルテの街の規模が拡大していた。
多くの荷馬車や荷車が行き交い物流網を構築している。
どこかの領主のテコ入れでも入ったのだろうか? そう思ってしまうくらい発展を遂げていたのだ。
小さかった街がちょっとだけ大きな街になり、そして今中規模くらいの街になりつつある。
何より建物が前よりもたくさん増えていた。
人口も増えたに違いない。
「ミレ、人間の発展速度ってすごいんですね」
ボクの言葉にミレも黙って頷く。
元人間であるボクだけど、ほんの短期間で規模が1.5倍くらいに拡大したのを見て若干感動していた。
人間ってすごい。
「さぁいらっしゃいいらっしゃい! アトワネ産の良質な小麦と大麦だよ! パンにしてもよし、最近流行のパスタにしてもよしだ」
「いらっしませー。王都トラムで一番人気のお店、小島貞夫の小島商店はこちらです! 珍品名品選り取り見取りですよ!」
「美味しいパスタやってるよ~、たべてってー」
前に来た時にはなかったお店がいつの間にか増えていた。
パスタってこの世界にもあったのだろうか? それはそれとして、小島貞夫って日本人? それともそれっぽい人ってだけなのだろうか?
疑問は尽きない。
しかし、呼び込みの声のした方を見る限り、王都トラムで一番人気という触れ込みも嘘ではなさそうだった。
ものすごくたくさんの人が集まっているのだ。
一体何を取り扱っているのだろうか。
「うーん、気になりますね」
なんとなく小島商店を気にしていると、ミレがくいくいとボクの服の袖を引っ張ってきた。
視線をミレに移すと、ミレは猟師ギルドの方向を指さしている。
どうやら早く換金しようということらしい。
「そうですね、さくっと換金してしまいましょうか。街の探索はその後にでも」
こうしてボクたちはとりあえず猟師ギルドへと向かうことになったのだった。




