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第181話 ダンジョンの後にはゆっくりお風呂で

 ゴブリンパニックダンジョンの踏破完了。

 さてこの後はどうしよう? などと思いながらお宝を持って新世界拠点に一時帰還。

 とりあえずやりたいことを考えることにした。

 

 1つめは旧世界の拠点周辺と街建設予定地の開拓だ。

 新世界ばかりじゃなくてあちらも徐々に開拓を進めていきたいしね。

 2つめは管理者以外の人を村長や町長にして発展をお任せさせようというもの。

 どこかに転移者や転生者がいれば話が早いけど、いなければ理解力のある現地の人を採用していきたい。

 ともあれ、まずは1つめをクリアしないことにはどうにもならないんですけどね。


「ふぅ。ダンジョン攻略は疲れますね……」


 ダンジョンから帰ってきた後、ボクたちはそのままお風呂へと向かい今に至る。

 ミカとミナもボクの隣で一緒に入ってくつろいでいる。


「それにしてもお風呂はいつも人がたくさんいますね」

 

 拠点のお風呂の利用時間は特に決まっていない。

 なのでいつでも大抵誰かがお風呂に入っていたりするし、何なら今ですらもたくさんの人が利用していたりするのだ。

 一番多いのはやはりフェアリーノームたち。

 その次に多いのは妖狐族の子たちだ。

 精霊の子はまだ数が少ないのもあってそんなに頻繁に見かけることはなかった。


「ダンジョンから帰ってすぐ大浴場でくつろぐ。こんな贅沢なことはありませんね~」


 ボクのつぶやきに同意するかのようにミカとミナもコクコクと頷く。

 すっかり脱力している二人の姿を見るに、一仕事終えた後のお風呂はやはり格別なのだろう。

 と、そんなことを考えていると翼を生やした少女が大浴場へ入ってくるのが見えた。


「ご主人様。お戻りと聞きました。お背中お流しいたしましょうか?」


 一糸纏わぬ姿で大浴場へと入ってきた天使の少女、アズラエル。

 現在は新世界と旧世界を股に掛けつつ生まれてくるであろう天使族の子たちのための環境づくりに奔走している。

 そんな天使は大浴場へ入ると同時に背の翼を消してしまった。


「ミナたちが洗ってくれたから大丈夫。それよりも天使のほうはどうですか?」


 アズラエルに与えられた罰と仕事、そのうちの1つが天使族に関することだった。

 そもそも天使とはなんなんだろう。


「ご主人様と葛葉様、それからミリアム様のお力をお借りした結果、エーテルの湖から卵を生み出すことに成功いたしました。今後は孵化を待ちつつ数を増やしていく予定です」

「ふむ……」


 アズラエルの報告を聞きつつボクはこう思っていた。

 天使って卵生なの? と。


「ご主人様? 先に申し上げておきますが、天使族は卵生ではなく胎生です。今回作成したものは創世の卵というもので、最初の天使族を生み出すための器なのです」

「あ、そうなんですね……」

 てっきり鶏の親戚かと思ってた。

 ところで創世の卵ってなんだろ?


「お母様~!」


 ボクが変なことを考え始めた頃、またもや大浴場に慣れ親しんだ声が響く。

 声のする方向を見るとそこには嬉しそうに手を振りながら大浴場に入ってくる瑞葉がいた。

 瑞葉はタオルを一枚捲いていそいそと歩いてくる。


「瑞葉、危ないですから走らないようにね」

「おっとと。えへへ。ちょっと滑りそうになっちゃいました」

「もう。危ないですよ」


 元ダンジョンコアでもある瑞葉は今では立派な妖狐の少女となっている。

 そんな瑞葉は自身を再誕させてくれたボクをお母様と呼んで慕ってくれている。

 それが何とも言えないほど可愛らしいのだ。


「向こうの世界はどうでしたか? 何かありましたか?」


 ニコニコしながら今日の出来事を聞いてきてくれる瑞葉。

 さて、どんなことを話そうかな? とりあえずよくわからないダンジョンのお話をしようかな。


「じつはですね……(かくかくしかじか」

「ふむふむ。なるほど~」


 今日あった出来事、ゴブリンと戦ったこと、ダンジョンに出会ったこと、ダンジョンコアから謎のお手紙をもらったこと。

 それらを感想と共に瑞葉に伝える。

 瑞葉もボクの話を楽しそうに聞いてくれていた。


「トレジャーダンジョンの噂は聞いたことがあります。私がまだ丸い玉だった頃、人間と契約して栄えていたダンジョンがあったそうです。いわゆるダンジョンマスターという存在がたくさんいた時代です。トレジャーダンジョンのダンジョンコアはその時代の生き残りだそうです」

「へぇ~」


 ダンジョンマスターといえば創作ではよく見聞きする存在だ。

 でもこの世界ではまだ見たことない気がするなぁ。

 もう存在しないのだろうか?


「瑞葉はダンジョンマスターとは関わらなかったんですか?」

 

 なんとなく興味本位でそんな質問をしてしまった。

 けれどすぐにボクは後悔することになってしまった。


「関りがあればあんなことにはならなかったかもしれません……」

「あっ……」


 しまったとボクは思った。

 瑞葉のトラウマを掘り起こしてしまったからだ。


「ご、ごめんなさい……」


 咄嗟にボクは謝ったものの、瑞葉は「いえ。でもよかったんです」と続けた。


「だって、それがあったからお母様に出会えたんですから」

「瑞葉……」


 瑞葉を取り巻く事件は出会いでもあった。

 今でも瑞葉が苦手としている当事者たる研究所を率いる教授。

 そしてその後に半壊したダンジョンコアから生まれた瑞葉。

 少し前の話なのにずいぶん前のことのように感じてしまう。


「トレジャーダンジョンのことはわかりませんが、ダンジョンマスターという存在はまだ残存しています。ご主人様」

「え? ほんと!?」

「はい。ですが出会うことは難しいと思います」


 まさか意外なところからダンジョンマスターについての情報が出てくるとは思わなかった。

 それにしてもアズラエルは一体いくつなんだろう。

 ミカとミナに挟まれながらお湯につかっている天使の少女を見ながら、ボクはそんなことを考えていた。

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