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第175話 新世界は建築ラッシュのようです

 酒呑童子さんの生態についてはさておき、妖狐族が不滅でないことのほうがボクには驚きだった。

 もしかすると身体を変えて転生するタイプなのかもしれない。

 そんな話をしている間にも街の建設は着々と進んでいく。


「人数が多いせいかどんどん建築が進んでいくのぅ」

「妖都の方はもうちっと遅かった気がするけどな」

 

 現在同時進行で進んでいる建築箇所は二桁に上っているので、お婆様たちの感想もあながち間違いではないと思う。

 眷属含め、総勢3桁を超えるフェアリーノームたちと精霊たちが同時に建築を行っているのだから当然と言えば当然なのだ。

 とはいえ、ここまで性急な建築は予定していなかったんだけどなぁ……。

 でも事実として、大急ぎで建築は進んでしまっている。

 その理由はただ1つ、妖都から引っ越してくる人たちを迎え入れるために他ならない。


「すべての原因は妖都からの引っ越しですね。いつ頃来るかわからないということで拠点以外の部分を大急ぎで作ることにしたようです」


 拠点にあるのは主要な研究施設などだが、今急ピッチで建築が進んでいる場所は商店街などが立ち並ぶ一般的な人が立ち入れるエリアだ。

 お母さんとお婆様の意思もあって、移住が決定した日からずっとこんな感じになっている。

 新たな土地の開拓や建築場所の設定など、最初にボクと一緒にやっていた作業がすべてみんなの手で行われている。


「さほど急がんでも良いというのに。不安定な領域にあるよりも新しい惑星の上にあるほうが無難じゃからのぅ。それに最初は街ごとの移住ゆえ、何も問題はないんじゃがのぅ」

「そう言うなって。あいつらにもプライドってもんがあんだよ。新世界を作った主の眷属が舐められたくないって気持ち、いいじゃねえか」

「作ったのも運用したのも同じ直近3代なのじゃがなぁ」

「んなこたぁ、やつらはしらねえよ。でもいいじゃねえか、刺激になってよ」

「そういうものでしょうか」

「当たり前だろ? そもそも敬ってる神様がどんな性格の神様かなんて知ってるやつのほうが少ねぇ。最低でも何を司ってるのか、何をやったら恨まれるのかだけ知っておけばいいんだからよ。まぁそれは妖都の方の話だがな。新世界の方は今すぐに会って話せる神様がいるんだからよ」

「妖都側はそうかもしれませんね……」

「まぁのぅ。あっちは国主がおる。国母に会う機会などほとんどないわ」


 国主の大久保実近さんは、妖都の人々にとって一番近くにいて実感できる為政者のはずだ。

 対するお母さんはそのさらに奥にある限られた場所にしかいない。

 お母さんのことを知らない人もいるのだろう。


「こっちでも代表を決めたらそうなるのかもしれませんね……」


 基本的にボクはあまり表には出ない方針でいる。

 結局はお母さんとおんなじなんだろうなぁ……。


「過度な干渉は妨げになるが、適度な干渉ならば問題ないじゃろう。わしもそうじゃったしのぅ。そもそも妖種の代表の一角である酒呑童子がうろついているくらいじゃからな」

「うるせえな。でもまぁ案外知られてねえもんだとは思ったけどな。伝承とかのほうが有名になりすぎた感はあると思うぜ」


 お婆様と酒呑童子さんはまた何やら言い合いを始めてしまった。

 しかし、なんだかんだ言ってもこの2人は仲が良い気がする。

 と、そんなことを考えていると、出来上がった平屋の建物の前でアキと数名のフェアリーノームたちが何やら作業を始めたのが見えた。

 よく見てみると、長方形の何かを取り出すと台の上に設置し、煙を立て始めたではないか。


「お、師匠は焼き団子を始めたのか」

「焼き団子、ですか?」


 たしかシンプルだけど香ばしくて美味しかったような気がする。

 高校の帰りに何回か食べた記憶があるだけなのであまり良く覚えていないけどね。


「おう。師匠の焼き団子は旨いからな! まぁオレは遥の手料理の焼き団子も食べてみたいけどよ」

「えぇー……」

「んだよ」

「いえ、別に」


 シンプルな料理って実は難しいんですよね。

 うーん……。

 練習してみるべきだろうか? アキなら喜んで教えてくれそうだけど。


「にしても、あそこで焼き団子を売るんですか? まぁ住人はたくさんいるから売れるといえば売れるのか」

「予行演習も兼ねてんじゃねえの?」

「ふむ……」


 アキは今連れているフェアリーノームたちにお店を任せる気でいるんだろう。

 よくよく見てみればあの子たちは厨房担当の子たちだし、そのつもりなんだと思う。

 ほかにも食堂を開いている子もいることを考えると、アキの弟子たちだけで激しい競争が起こりそうな気がしなくもない。

 そういえば最近は精霊の子たちによる喫茶店も開かれているんだっけな。


「アキはあのあたりをどう使うつもりなんでしょうね? 何にするか決めてませんでしたけど」

「ん~。たぶん飲食店街にするんじゃねえかな? 師匠に聞いた話だと3つ先の平屋は妖都風喫茶にするって言ってたしよ」

「ほほぅ。茶屋みたいなものかのぅ?」

「茶屋は今師匠がいる場所じゃねえかな? ふらりと立ち寄ってちょっとお茶飲んでってな感じでよ」

「ほぅ。よいではないか」

「お婆様、楽しそうですね」

「うむ!」


 なんだかわからないけど、アキが今やっていることはお婆様の好みに合致しているらしかった。

 まぁ、飲食店街が先にできるのは良いことなのかもね?

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