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第174話 妖都と新世界の街

 結局、ミレイさんから返ってきたボクの質問の答えは否定だった。

 今のままではただ争い合うだけなのだという。

 やはり時期尚早なのかもしれないけど、理解できる種だけは撒いておいた方がいいのかもしれないとも思うのだ。

 となると、まだしばらくは様子見かなぁ……。

 

「それにしても、ミレイさん大丈夫でしょうか」


 ちなみにミレイさんはあの後、どこからともなく現れたお婆様によって連れて行かれてしまった。

 一緒に酒呑童子さんがいたことも考えると穏便に済みそうにもない気がする……。

 まぁ、どうにかなることを祈りつつ作業を再開しよう。

 うん、そうしよう。

 決して怖いからではないのだ。

 うん。

 

 外に出て色々と見て回る。

 街づくりは少しずつ進んでおり、もう入居可能な平屋のお店がいくつも完成していた。

 道は石畳で舗装され始めており、いつでも馬車が通れるようになっているようだ。

 全体的には明治大正風の日本といったところかな? 見た目は妖都の街並みを意識している様子。


「拠点への門も妖都風になるのでしょうか」


 妖都の城への門は日本のお城を意識したものだった。

 もしかするとこの辺りもそうなるのかも? ちなみにデザインについてはボクは関わっていないのでさっぱりわからないのだ。


「主様! デザインについては葛葉様のご意見も取り入れていますよ? あっちの世界の方からすれば完全に異世界の異文化になるかもしれませんが、融合予定の妖都にも安心してもらえるような街並みを目指すそうです。土地はいくらでもあるのでそれぞれの文化の街を作るのもありかもしれません」

 

 設計担当のフェアリーノームはそう語る。

 たしかに世界が1つ融合することを考えれば見知っている光景は必要だよね。

 そういえば妖都の街自体はどこに移されるんだろうか? 城もあるし社もある大きな都市なので結構な土地が必要なはずだ。


「用地は確保済みです。新規で作っているこの街の近くに繋がる形で移される予定です。無理がありそうなら空間を隣接させると伺っています」

「ふむふむ。どっちでもいいですね。妖種が増えたら楽しくなりそうです。そういえば向こうにも山とかあったはずですがそのあたりはどうするのでしょうか」


 融合ということはそれなりの質量をこの惑星に追加するということになる。

 一部を置き換える? それとも何かで無理矢理追加する? どうなるのだろう。


「妖都と融合させる場合は土地をそのまま追加する方法を取ることになるじゃろうな」

「あ、お婆様」


 不意に声が聞こえたので見てみると、お婆様と酒呑童子さん、やつれた感じのミレイさんにミレたちが並んで一緒にいたのだ。

 それにしてもそのまま追加とな?


「具体的にはこの街の近くに都市を移設した後、離れた場所に向こうの里山などもろもろの地形を差し込むことになるじゃろう」

「差し込む、ですか?」

 

 差し込むとはどういうことだろう?


「簡単に話すとその部分に空間的に切り込みを入れて一旦切り離すのじゃ。そして差し込み、その後空間を戻す。すると全体的に土地が増えるので一時的に大きな地震が起きるじゃろう。妖都含む街側は影響が出ないようにするが、差し込まれる土地より奥は収まるまで危険じゃろうな。とはいえ、里山もプレートの上にあるわけではない。妖都も含めあの領域は惑星の上にあるわけではないからの。調べた限り予定の場所は海側とのことじゃ。被害は抑えるつもりじゃが……。まぁどうにかなるじゃろう。津波のようなものも起こさないつもりじゃ」

「ふむ……」


 ということは、海側に陸地を追加するのか。

 影響でないように精霊たちやフェアリーノームたちに頑張ってもらおうかな。


「ところでミレイさんがやつれているのはなんででしょうか?」

「ん? あぁ、順番を教えてやっただけじゃ」

「ひどいことはしてねえよ。盗むような真似はせず順番を守るようにって怒られただけだな」

「うぅ……。妖狐様たちのお説教はどこかわからないですけど、内側にすごく響くんです……」

「ふむ?」


 ミレイさんがやつれている理由はよくわからないけど、説教の何かが影響していたらしい。

 もしかすると魂を揺さぶられたとかそういうことなのだろうか?


「まぁオレたち妖種は人の魂に直接接する機会も多いからな。そのせいで余波を食らったんだろ。眷属になったんだから深刻なダメージは受けてねえよ」

「だといいんですけど」


 ボクにはわからないけど、妖種とはそういうもののようだ。

 そういえばボクも人の魂を見たり触ったり集めたりすることができるっけ。

 

「まぁじきに慣れるじゃろ。しかし、遥は人を魅了するのが実に得意よのぅ。そなたが幼馴染であった頃から全く変わっておらぬ。やたらと同性に好かれ愛されるのじゃからな」

「うぅ。覚えてもいない前世? のことを言われてもわかりませんよ……」


 お婆様はボクの前世というのを知っているせいか、時々こんな話をしてくる。

 ボクには全く覚えのないことなのでさっぱりわからないのだが……。


「前世など覚えてなくてもよいのじゃ。のぅ、酒呑童子?」

「うるせーな。オレだってなんでも覚えてるわけじゃねえんだよ。大体、記憶を宝珠に保存したからって見返したくもねえっての」

「本当に鬼族は不思議な生態をしておるのぅ」

「妖狐と違って存在自体が不滅だから身体ごと再構成してるだけだっての」

「酒呑童子さん、不滅なんですか?」

「面倒なことにそうなんだよ。おかげで別の人生も送れねぇ」

「本当に不便な生き物じゃのぅ」

「うっせー!!」


 今日初めて知ったこと。

 酒呑童子さんは不滅の存在だった。

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