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第161話 いざ地下都市

 旧世界、青肌一族の村郊外。

 現在この場所には、重苦しい空気と楽しげな雰囲気が混在していた。

 その原因はお婆様たちである。


「さっさと済ませて帰るとするかのぅ。こちらの世界はあまり気持ちのいいものではないのじゃ」

 お婆様はため息交じりにそうぼやいた。


「どうしてですか? まぁボクもこの世界はそんなに好きではないですが……」

 お婆様とは違う理由だと思うが、ボクもこの世界はあまり好きではないのだ。

 理由は単純。

 妖力が圧倒的に少ないのだ。


「わしの場合はあのあほうのせいじゃな。遥はどうしてじゃ?」

「ボクの場合は妖力不足のせいです。おかげで微妙に気分が悪いといいますか……」

「わかる話じゃな。世界に妖力はなくともよいが気分は最悪じゃからのぅ。何とかして拡散せねばならぬか」

 ボクの意見にはお婆様も同意のようだ。

 新世界と旧世界では圧倒的に新世界のほうが気分がいいし、なんなら日本のほうがこの旧世界よりも気分がよかったりする。

 ボクたちにとって妖力はとても大切なもののようだ。

 妖種になってからはそのように感じるようになってしまったのだ。

 

「さて、さっそく始めるかのぅ」

 お婆様はそう言うと周囲に一瞬で結界を張ってしまった。

 あっという間の出来事だった。


「結界、張るの早いですね……」

 ボクでも多少掛かるのに、お婆様は言い終わった瞬間に初めてほぼ同時に終えてしまったのだ。

 しかも範囲はボクたちのいる森のほぼ全域だし……。


「慣れておるからのぅ。結界なんて座標を決めて設置すればよいだけじゃ。蓋をするようなものじゃよ」

 お婆様はなんでもなさそうにそう言ってのけた。

 改めて思うけど、すごい……。


 ちなみにボクの場合、結界を張るときは周囲の広さや大きさを把握してから展開している。

 なのでどうしても遅くなる。

 でもお婆様の場合は、パッパッパッといった感じなのだ。

 圧倒的展開スピードである。


「この種明かしは後でベッドの上でしてあげるのじゃ。今はこ奴らを片付けねばのぅ」

 お婆様はそう言いながら地面のほうを指さしている。


「それでこのあとはどうすれば?」

 掘るのだろうか? そう思っているとお婆様がボクの手をそっと握りしめてきた。


「補助してやろう。地面を持ち上げるよう意識をするのじゃ」

「えっ? あ、はい」

 突然のことで混乱したが、お婆様に言われた通り地面を持ち上げるようイメージをしてみる。

 見えない手で掬い上げるような感じをイメージする。


「え? あれ?」

 ボクがイメージをしていると、お婆様の手から強い力が流れ込んでくるのが分かった。

 それはまるでボクを導くかのように力の入れ方・使い方を教えてくれるのだ。


「やり方をのイメージを力と一緒に遥に流したのじゃ。その通りやってみるがよい」

「はい」

 そして、ボクはお婆様の力が導く通りに地面に向けて力を使った。


 お婆様の力はキラキラ輝く粒子のようにボクの身体から地面へと伸びている。

 そこをなぞるように力を流すと、きれいにその通り力が向かうのだ。

 そうして地面に到達した力は地面に浸透し、底深くに到達すると掴むようにして広がった。

 これは、引っこ抜けと言っているのだろうか?


「思いっきり行くのじゃぞ」

「わ、わかりました」

 お婆様の言葉通り思いっきり力を出してみる。

 するとズドンという音と共に地面が激しく揺れ動いたのだ。

 周囲の木々は激しく揺れるが遠くが揺れる気配はない。

 結界に守られているようだ。


「いきます」

 一言そう言うと、一気に持ち上げるように力を引っ張り上げた。


 ズドゥゥゥンという音が響き、巨大な土の塊と岩が勢いよく飛び出し中空に浮かんだ。


「よし、そのまま固定せよ」

「はい!」

 お婆様の導きの通り、網を張るようにして巨大な塊の底に力を広げた。


「よし、あとは維持だけに努め持ち上げるのをやめるのじゃ」

「はい……」

 お婆様の言う通りにする。

 引っ張り上げる力をなくし、そこに広がる網で支え続けるように力を使う。

 すると巨大な塊は、まるで重力などなかったかのように中空に浮かんで固定されたのだ。


「ふぅ。にしても、支えるほうが引っ張るよりも楽なんですね……」

 初めての試みだったが、驚きの発見もできた。

 なんと巨大な塊だというのに支えるほうが力を使わないのだ。

 そう、まるで何かに補助されているかのようにだ。


「わしらが力を使うとその反動を中和しようとする力が働くのじゃ。これを復元力と呼んでおる。元に戻そうとする力ではなく影響をなくすという意味での復元じゃな。なぜなら、こういった塊は地面にあろうと宙に浮いてようと世界からしたら同じにしか感じられないからなのじゃ」

「ふむ?」

 お婆様の言っていることがいまいち吞み込めない。


「つまりじゃ、座標は関係ないということなのじゃ。そこあればよい。それだけじゃ」

「なるほど」

 お婆様の言葉が本当だとするなら、世界は割と大雑把なのかもしれない。


「どうやら一発で掘り当てたようじゃのぅ」

 お婆様がそう言う。

 ボクはつられて今まで地面であった場所を見た。


「あれが、妖精銀の鉱脈と地下都市?」

 そこにあったのはわずかに見える結晶化した建物の姿だった。

お読みいただきありがとうございます!

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