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第124話 ギルドでのトラブルと取り巻き騒動

 その後、無事に登録を終えた酒呑童子さんと瑞歌さん。

 彼女たち二人は目立つ外見も相まって猟師ギルドのフロントで目を惹いていた。

 特に瑞歌さんに声を掛けようとしていた大柄な男性ハンターは、一瞬のうちに地面に引き倒され、目を丸くするという事件も起きた。

 まぁその後、無駄に絡むこともなく力の差を感じたようで大人しく引き下がっていったのだが。


「それにしても煩わしいですわ」

 そう言う瑞歌さんの周りにはたくさんの女性ハンターが集まっていた。

 彼女たちは口々に「お姉様」といって奇妙な視線を向けている。


「魅了、されました?」

「そんなわけありませんわ。スライムの時ならいざ知らず、この姿になるとなぜかこうなりますの。もう、本当にうんざりですわ」

 どうやら瑞歌さんは、凛々しくも可愛らしい外見のせいで同性にやたらモテるようだ。

 男性も手を出すには出すが、一蹴されてはすぐに引っ込んでしまうのでほとんどの人が遠巻きに見ているという状態になっている。


「あの、酒呑童子ちゃん! 僕と一緒にハンティング行きませんか?」

「俺と一緒にいかねえか? 色々エスコートするぜ?」

 逆に酒呑童子さんは男性に群がられている。

 愛らしい見た目のせいで庇護欲を掻き立てられるのだろうか?


「ああもううぜーな! お前らはお呼びじゃねえんだ! 散れ!」

 シッシッと言わんばかりに手で振り払うしぐさをする酒呑童子さん。

 それでも食いつく子は食いつく。


「少女趣味な大人なんか放っておいて俺と行きましょう」

「ちょっと、エディ? 私たちのこと放っておいてその子にもちょっかい出すわけ!?」

「そうよ、ふざけないでちょうだい」

「はは、妬いてるのかい? 俺が制御すれば大丈夫だって」

「なにそれ意味わかんない」

 よくわからない一団によるよくわからない寸劇が始まっていた。

 巻き込まれた酒呑童子はうんざり顔だ。


「そもそもオレは行くとは一言もいってねぇんだ。お前らだけでやれ」

 対する酒呑童子はうんざり顔でそう言い放つのみ。


「そもそもお前らは、どうしてこいつに付いて行ってるんだ?」

 酒呑童子もボクと同じことを思ったようで彼女たちに向かってそう問いかけた。


「何ってかっこよくて強いからよ」

「ほかにもっと強くてかっこいい子がいるなら別だけど、いないもの」

「か弱い女の子を守ってくれるから一緒にいるだけ」

「はは。俺が負けるなんてありえないさ」

 しつこい男の子は自信満々な様子だ。


「おいあいつ、最年少でCランクまで上り詰めた新人だろ?」

「あぁ、めっぽう強いって話だ」

「なんでも噂じゃ、Bランクのゲイツが一対一で負けたってよ」

「「まじかよ」」

 強さの基準はさっぱりだが、どうやらあのエディという男の子は相当強いらしい。

 なるほど、強くて顔がいいからモテると。


「お? そっちの子も一緒にこないか?」

 そんなエディさんはボクたちに気づいたらしく、気安くそんな風に声を掛けてきた。

 すると、当然ミレたちが前に出るわけで。


「ひっ!? フェアリーノーム! こえぇ」

 フェアリーノームと分かった途端この怖がりようだ。

 エディさんに問題があるのかミレたちが悪名高いのか、もうわからないね。


「お姉様、椅子とテーブルを用意いたしましたわ。しばし観戦しつつティータイムといたしましょう」

「あ、ありがとうございます」

 瑞歌さんが用意してくれた椅子に座ると、ミレがシーラと一緒にお茶とケーキを用意してくれた。

 どうやら空間収納に入っていたようだ。

 ちなみに飲食は可らしいのだけど、お酒とたばこはNGらしい。


「ちょっと貴女、それは何ですか?」

 瑞歌さんの取り巻きの一人がボクの前にあるケーキを見てそう言った。

 ケーキ無双、する?


「どこにでもある普通のちょっとおいしいケーキです」

 さすがにこの世界にもケーキくらいはあるだろう。


「ちょっとどころかすごく美味しそうに見えるのですけど?」

「ケーキってあれでしょ? 貴族様しか食べられないってやつ」

「ねぇマリア? あなた貴族でしょ? どうなのよ」

「確かに食べたことはありますけど、甘いという印象が強いですよ」

「甘いだけいいじゃない、贅沢者! こちとら木の実とか果物とかよ」

 仲が良いのやら悪いのやら、身分問わずガーガー言い合っている。


「う~ん、食べ比べてみます? ミレ、まだたくさんありますか?」

 ミレに問いかけてみると、こくんとうなずいたので場所を移してみんなで食べ比べてみることにした。


 場所はカウンターから少し奥にあるカフェテリアの一角。

 少し場違いな感じにおしゃれな場所だが、ここには見目のいい男性とたくさんの女性しかいなかった。


「遥様、ここはギルドマスターが特に力を入れて改修した場所なんです。ごゆっくりお寛ぎください」

 ボクの話を聞いているギルドの女性職員の人がそう説明し去っていく。

 ボクに『様』をつけているのが不思議なようで、瑞歌さんに憑りついていた取り巻きの女性たちは一様に疑問符を浮かべたような顔をしている。


「さて、では皆さんで食べ比べてみましょう。ミレ、ミカ、お願いしますね。ミナとシーラはお茶をお願いします」

 ボクの言葉を聞いてミレたちは各々の仕事に就く。

 そんなボクたちのやり取りを聞いていて不思議に思ったのか、取り巻きになっている女性の一人がこんな質問をしてきた。


「あの、フェアリーノームなのに言葉がわかるんですか? 不用意に近づけば襲われると聞いているんですが……」

 少し大人しめの少女が、そんな疑問を口にした。


「基本的にフェアリーノームは言葉がわかりますし、ボクたちよりも文化水準が高いです。木組みの家や色とりどりな石レンガの家なんかも作っていますし、今用意しているお菓子やお茶も彼女たちが作っています」

 そう説明してあげると、ミレがえへんと胸を張った。

 その様子を見て、みんな驚きを隠せないでいるようだ。

 開いた口がふさがっていない。


「わ、私もフェアリーノームを撫でてもいいですか? 取引とかには応じてくれるんですけど、近寄らせてくれたことはなくて……」

 一人の女の子がそう話す。

 ボクはミレたちに確認すると、「OK」がもらえたので許可を出した。


「ミレたちは基本的に人間が嫌いです。なので避けられるのは仕方ないと思います。まぁボクに関してはたまたま波長が合ったというのもあって……」

 軽く事情を説明すると、またしても驚いたような顔をされてしまった。

 まぁ、波長とか言われても困りますよね。


「では早速1つずつ食べていきましょう」

 ともあれ、みんなにそれぞれ同じものを1ピースずつ配り、一斉に食べ始めた。


「!?」

「お、美味しい」

「くどくなく、でもしっかり甘い。とても上品な甘さですね」

「高価な砂糖をたくさん使えばいいと思ってる王都の料理人に食べさせたい一品ですね」

「おかわり」

 などなど、高評価を得られた。


「ありがとうございます。お代わりはとりあえず後にして、次のケーキに行きましょう」

 ボクの指示に応え、またミレたちがケーキを配る。

 最初はショートケーキ、次はザッハトルテだ。


「!?」

「なんという濃厚な味……」

「この茶色いの、よくわかりませんがとても美味しいですね」

「話に聞いたところによると、こういう感じの黒いものをエルフたちが食べていたとか」

「なんでここには王都にもないようなものばかりでてくるのですか?」

 どうやらザッハトルテも高評価を得られたようで何よりだ。

 さすがは地球の製菓技術。

 頭が上がりません。


「私のお姉様なのですから当然ですわ。理解できまして?」

「はいっ、それはもう!!」

「小さい子ですけど、私もお姉様と呼ばせてください!!」

「遥お姉様はどこの領地にお住まいなのですか? 私、おそばにお引越ししたく思います」

「え、えっと、あ、あはは……」

 何やら今度はボクに纏わりつくようになってしまった。

 現金というかなんというか。


「う~ん。瑞歌さん、住人増やしますか?」

 あまり人間の住人を増やす予定はないのだが、選別するのもありかもしれない。


「お姉様にお任せいたしますわ。でもそうですわね。性根が曲がっていたら私が叩き直してもいいかもしれませんわね」

 何やら瑞歌さんも乗り気な様子。

 たぶん手下が欲しいのだろう。


「ボクの住む場所に案内してもいいですし、移住も許可してもいいです。でもその前に悪い考えがないかとか犯罪歴チェックをさせてくださいね」

「「はいっ!!」」


 こうして、ボクたちの土地に住人が増えることとなった。

 彼女たちの活躍や如何に!

お読みいただきありがとうございます!

ブックマークや評価ありがとうございます。


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