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第119話 月明かりの水差しと月光炉

 気が付けば朝。

 あれから夜通し作り続けてしまったが、そのおかげか結構な量が出来上がった。

 月が出てからは輝く銀色の月光インゴットもできたし、日が昇り始めてからは白色に輝く金色の陽光インゴットと黄昏時のような赤みがかった金色の黄昏インゴットというのができてしまった。

 どうやらこれらはそれぞれ違いがあるようだ。


「つ、つい、作りすぎてしまいました……」

 これらのインゴットは、それぞれの属性の雫を作るのにも用いられるらしい。

 ちなみに【月の雫】を手に入れるには【月明かりの水差し】を作る必要があるようだ。

 それらの受け皿はフェアリーノームたちが作った杯でもいいのだが、もっといいのはそれぞれの素材で杯を作ることとのこと。

 

「遥様。素材が! 新素材が!!」

 研究員のフェアリーノームは大興奮である。


「この情報が誰のものなのかはわかりませんけど、上質な妖精銀と加工された妖銀で作った杯では得た素材の保持可能時間が短いようですね」

 どうやら妖力も回復するあの杯ではグレードが足りないようだった。

 

「ほぇ。あれだけでもすごいと思っていましたが、この素材はそれ以上なんですね……」

 ちなみに素材説明にはこのような記載がある。


『光輝と混沌を同時に内包した高位次元存在の神のみが作ることのできる素材。加工方法は過去に来訪した高位次元の神よりもたらされた』

 なんだか誇張された表現が目立つのが気になるところ。

 高位次元の神ってなんだろう?

 あとで瑞歌さんにでも聞いてみようかな?

 ともかく、まずは新素材で炉を作ってみようと思う。


「じゃあこれから炉を作りますね。優先するのは月光炉です」

「はい!」

 研究員のフェアリーノームはわくわくした表情でボクを見つめている。


 月光炉を作るには20個の月光インゴットが必要になる。

 それと陽光インゴットを削った粉末が必要となるようだ。

 

 まずは【アイテムクリエイト】で陽光インゴットの粉末を用意する。

 そして、陽光インゴットの粉末を纏めて太陽の火種を作る。

 この火種は不思議なもので、薄い膜のような物の中に恒星のプロミネンスのようなものが入っている。

 たぶんだが、これは小さい恒星なのだろう。


「さくさくといっちゃってごめんなさい。これが太陽の火種らしいです」

 ボクは出来上がった太陽の火種を研究員のフェアリーノームに見せた。


「す、すごいです……。圧倒的な力を感じます。あの空に浮かぶお日様みたいです」

 うっとりとした表情でそれを見る研究員のフェアリーノーム。

 そろそろこの子にも名前を付けてあげるべきか。


「名前まだないですよね?」

「? えっと、はい」

 そう問いかけると、研究員のフェアリーノームは不思議そうな顔をした後そう答えた。


「じゃあ、今日から【ソラ】で」

「!?」

 名前を挙げた瞬間、研究員のフェアリーノームは驚いた顔をした。


「あ、ありがとう、ございます!」

 そう言ってソラは嬉しそうにほほ笑んだのだ。


「えへへ~」

 そんな風に変な声を出しながらソラはくるくると回る。

 ソラは乳白色の髪を長く伸ばしているフェアリーノームだ。

 眼の色はオレンジ色で好奇心が強そうな顔をしている。


「じゃあソラ、これから炉を作りますね」

「はい!」

 ソラの了承を得てから作業に取り掛かった。

 

 炉の作成自体は簡単なもので、外側を長方形の箱で囲まれ、中に円形に組まれたインゴットの炉本体のようなものがある。その炉の真ん中に坩堝が置かれていた。

 火種は下の方に入れるらしく、それだけで完成なようだ。

 坩堝自体は可動式で、傾ければ型に内部の液体を流し込める構造になっている。

 うん、見た目はちょっと機械っぽい。


「できました。思ったよりあっけないですね」

 スキルで作っているせいかあっという間だった。

 ところで、作ったはいいけどボクは鍛冶をしたことがないんだよね。

 これ、どうやって使おう?


「す、すごいです。力が、圧倒的な力をが存在しています」

 ぱっと見では何もわからないが、何か感じるものがあるらしい。


「でも使い方がさっぱりですね。ちょっと調べてみます」

「お願いします!」

 ソラの応援を背に受け、さっそく月光炉を調べる。


 上部には何やらフローティングウィンドウのようなものがあってちょっとだけ未来感を感じるが何のためにあるのかわからない。


「ずいぶん機械的ですね」

 そう呟きながらウィンドウに手を触れる。

 すると何やらメニューが表示された。


「ふむ?」

 見たこともない文字が表示されているが、なんとなく読めるから不思議だ。


「ええっと、自動製作モードと手動製作モード? 選べるんですか。とりあえず自動製作モードにしてっと」

 メニューから自動製作モードを選ぶ。

 するとレシピを要求された。


「レシピとな? そんなものはないのですが……。とりあえず【アイテムクリエイト】で材料を調べておきますか」

 今ボクの手元にあるレシピといえば、スキルの中にあるレシピだろう。

 今回作る【月明かりの水差し】のレシピを確認する。

 月光インゴットが10個必要であることがわかった。


「さて、これをどう伝えたものか……」

 そう思いながら触っていると、天板部分に黒い水晶のようなものが見えた。


「これはなんでしょうか」

 ボタンかな? と思いつつ軽く触れる。

 すると、モニターにレシピが表示されたではないか。


「え、なにこれ? もしかして読み取り式ですか?」

 なんとなく筐体の外周を確認してみると、何かを繋げる端子のようなものもあった。

 外部入力可?


「ま、まぁいいです。ええっと、次は材料を投入ですか」

 材料投入口というか受け皿があるので、そこに月光インゴットを10個載せる。

 するとフィーンという音が鳴り、そのあとにとんてんかんと音が鳴り始めたのだ。

 どうやら叩いて作っているようだ。


「おぉ。これが自動製作……」

 なお、ここまで全部独り言である。

 なんとなく横を見るとソラがじっと機械を見つめていた。


「この技術、学びたいですね……」

 研究員としてなのか、それともフェアリーノームとしてなのかわからないけど、彼女はこの機械の技術を学びたいようだ。


「さて、ちょっと時間もありますし、作れそうなものを探ってみますか」

 早速【アイテムクリエイト】を使って月光インゴットで作れるものを調べていく。

 月光インゴットプレートを使うことで作れるものもたくさんあるようだ。


「スキルから見る限りでは月光炉を使う必要はなさそうですね」

 リストをよく見てみると、星光インゴットにも似たような項目があるのだが、そこから先は見られないようになっていた。

 

 なぜだろう? と思いながら調べてみると、どうやらこれらの項目は、炉を作ることで解禁するらしい。

 ちなみに、月光インゴット関連にも【月明かりの水差し】はあったのだが、スキルでは副産物を得ることはできないとのこと。

 炉を使うことで副産物が入手出来てお得なんだそうだ。

 

「副産物ってなんでしょうね。気になります」

 しばらく考え事をしていると、炉の動きが止まった。

 どうやら完成したようだ。


 炉の取り出し口を見てみる。

 そこには白銀に輝く金属のような水差しが1つ存在していた。

 これが【月明かりの水差し】というもののようだ。

 それと【月明かりの水差し】の隣には球が1つ載っていた。

 調べてみると、これはレシピの入った宝珠らしい。

 どう使うのだろう。


「ソラ、水差しが出来上がったけど見てみますか?」

「はい!」

 そばに控えていたソラが嬉しそうな声を上げた。


「ところで遥様、その小さい球はなんですか?」

【月明かりの水差し】を取り出しソラの元へもっていくと、ソラがそんな質問をしてきた。


「レシピの入った宝珠だそうです。使い方が不明なので、わかったらソラに渡しますね。管理お願いしていいですか?」

「は、遥様!! もちろんです!」

 仕事を任されたのがよほど嬉しかったのか、ソラはボクに抱き着いてそう言うのだった。

お読みいただきありがとうございます!

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