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第108話 専用門での騒動

 ボクたちの乗る馬車は並んでいる人達とは別の門へと進んでいった。

 そこには同じような馬車に乗る人がチェックを受けている。


「花月卿、チェックは終わりました。お気をつけて」

「うむ。出発せよ」

「出発!」

 前の馬車はチェックが終わったようで、号令と共に門をくぐっていくのが見えた。

 前の時とは違う入場方法なので、個人的にちょっと興味を引かれる。


「次、因幡伯爵家、お進みください」

 衛兵さんにそう言われると同時にボクたちの馬車は前に進み始めた。

 どうやらこの家は因幡という苗字のようだ。


「これより従者の確認と馬車の方々の確認、荷物の確認を行います」

「はい。今回はゲストがいるのですがいかがいたしましょうか」

「珍しいですね。どのような方ですか?」

 衛兵さんはその話を聞くと、何やら紙に記入を始めた。

 

「妖狐族の小さなお嬢様です。当家のお嬢様が仲良くなりまして」

「たしか……、因幡伯爵家の長女ミユキ様は5歳でしね」

「えぇ、その通りでございます」

 天明さんと衛兵さんは紙を見ながら話している。


「では、念のためにその方の確認を行います」

「よろしくお願いします」

 天明さんがそう言うと、衛兵さんがこっちにやってくるのが見えた。

 若い衛兵さんで、前に見たことがある気がする。


「それでは、確認を行います。馬車の扉を開けていただきたい」

「はい、直ちに。旦那様」

「えぇ、構いません」

 天明さんの言葉に通伸さんが返事を返す。

 すると、馬車の扉が開かれた。


「ではまず、お連れの……。えっ」

「あ、あはは。ど、ども……」

 扉を開けて現れたのは前に見たことのある若い衛兵さんだった。


「な、なぜ、貴女様がここに!?」

「えへへ。気にしないでください。ちょっとした観光です」

「わ、わかりました。あーっと、ちょっと相談してきていいでしょうか?」

「どうぞどうぞ」

 そう言うと困り顔の衛兵さんはすぐに建物に走って行ってしまった。

 従者のチェックは行われているが、馬車のチェックは中止状態だ。


「どうしたのでしょう」

 天明さんも混乱中。


「もしかすると我が娘はとんでもない運を持っているのかもしれませんね」

 通伸さんは何かを察したようだ。


「えへへ~、お姉さ~ん」

 なぜか懐き状態のミユキさんはボクにべったりくっついている。

 なかなかにカオスな状態だった。



 しばらく後、若い衛兵さんといかにも偉いという感じの服装の軍服の人がやってきた。

 勲章がたくさんついている。


「ええっと、同乗者の妖狐族の方だけこちらにお越しください。それ以外の方はそのままで」

「あ、はい」

 一瞬ざわついてしまったがボクはすぐに了承。


「おみ足を失礼いたします」

 偉そうな軍服の人にボクは抱きかかえられると、そのまま事務所のような場所へ連れていかれてしまった。



「姫様、なにゆえこのようなところに。直通なされませ」

「あ、やっぱりそうですよね? ご、ごめんなさい」

 余計な手間を掛けさせてる時点で迷惑行為と同じだろう。

 素直に謝ろう。


「あぁいえ。謝っていただきたいわけではないのです。観光については理解していますが、なにゆえ専用門で案内を付けられていませんので?」

 名前の知らない軍服のお偉いさんがボクに疑問を投げかけてきた。


「専用門の場所は知りませんでした。通常の門では衛兵さんに並んで待つよう言われましたので」

「な、なんと!?」

 その言葉を聞いたお偉いさんは驚いた後、頭を抱えてしまった。


「おい」

「はっ、直ちに」

 お偉いさんがそう言うと、門番の衛兵さんとはまた違う色の衛兵さんが現れ、頭を下げてどこかへ向かっていった。


「護衛はつけさせていただきます。それと、若葉様の元へお戻りになる際、または今話題の新世界にお戻りになる際、どちらの場合でも元首府の実近様の元へお願いいたします」

「なんだかごめんなさい。しかし、新世界の件ご存じなのですね」

 このお偉いさんの口からそんな言葉が出るとは思わなかった。


「当然です。若葉様のご指示の元、移住者と防衛軍の編成が行われているのですから。なんでも常時行き来できるようになるとか?」

「はい。固定の仕方については識者がいますので。同じ地域に面した国のように行き来できるので、異世界の移住というより隣町へのお引越し程度に考えていただいて大丈夫です」

「ふむ。わかりました。後程軍の者を向かわせます。銃火器類の持ち込みは?」

「現状問題ありません。旧世界には出さないようお願いします」

「はっ」

 こうしてボクは馬車へと戻ることになった。


「お姉さん、大丈夫でしたか?」

「うん、大丈夫です」

「なんだか色々あったようですね。チェックは従者だけで終わってしまいました」

「ごめんなさい、因幡伯爵様」

「あぁ、私のことは通伸おじさんでいいですよ」

 ボクがそう言うと、通伸さんは慌てて訂正してきた。

 どうやら何か変化があったらしい。


「お姉さんとお父様が仲良くなるのは嬉しいですけど、ちょっと妬けるのです」

「あはは……」

 むすっとした顔でぷくーっと膨れるうさ耳妖女は可愛いけど、なんでこんなに好かれているんだろう?

 ボクはそれだけが終始疑問だった。


 こうして馬車は市街へと入っていく。

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