第58話 【地球で物資調達②】
咲楽は無事地球に帰還することができました。地球にある女神像は自室に祭られているので、咲楽は自分の部屋に転移されます。
「よし、行きますかー」
数日ぶりの我が家ですが、咲楽はすぐ物資調達のため動き出します。まずすべきことは消費した調味料や非常食などを補充するため買い物に出かけることです。
「おはよーおかーさん」
玄関に向かう途中、咲楽はリビングでのんびりしているお母さんに挨拶します。
「おはよう?もうお昼でしょ…というかさっきお昼ご飯も食べたでしょ」
「…あ、そうだった」
プレザントでは早朝でしたが、地球は時を止めていたので日付も時刻もプレザントに向かった昼頃のままです。
咲楽は異世界旅行ならではの時差ボケにあっていました。
「ちょっと買い物に行ってくるね」
「いってらっしゃ…………ちょい待ち咲楽」
「うん?」
「そんなコスプレした姿で出かけるつもり?」
「……あ」
地球の衣服に着替えるのを忘れていた咲楽。
しばらくこの生活には苦戦しそうです。
※
咲楽は私服である短めの白いシャツと水色のプリーツスカートに着替え買い物に出かけました。
「ちょっと買いすぎたかな…」
買い物を終えた咲楽は、パンパンになったエコバックに持って帰宅します。
「ただいま~」
「おかえり咲楽、ちょっと見てよ」
「?」
玄関ではお母さんが大きなダンボールの中を覗いて困っていました。咲楽もダンボールの中を確認します。
「おお~…苺いっぱい」
「また実家から送ってきたの」
中には大量の苺が入っていました。
こうして毎年、咲楽の実家は旬となった果物を大量に送ってくれるのです。
「美味しいけど送りすぎなのよね…最近食べたばかりだし。一部は保存できるように調理して、一部はご近所さんにお裾分けしようかしら」
「あ、じゃあ私も友達にお裾分けしていい?」
「おー持っていきな、味は一級品だから喜ぶよ」
思わぬ収穫を得た咲楽。
苺もプレザントに持っていくことにしました。
「…ところで咲楽、何買ってきたの?」
お母さんは咲楽が買ってきた大量の荷物が気になります。
「えっと、調味料とかいろいろ」
「あれ?ストック切れてたっけ?」
「ううん、えっと……これは私が料理の勉強で使おうと思って」
異世界に持っていくとは言えず、適当に誤魔化す咲楽。
料理の勉強に関しては嘘ではなく本心でもあります。どんな味が異世界人の好みなのか、それを模索することは立派な料理の勉学です。
「水臭いわね、そのくらいの出費なら家で出すよ」
「いいの?」
「私に影響を受けて料理好きになってくれたのは嬉しいからね」
お母さんは嬉しそうに咲楽の頭を撫でます。
これで金銭的な面での問題も解決になりそうです。
※
「さて、問題はどうやってハルカナ国民を楽しませるかですね」
食料を調達した咲楽が次に用意するものは、人を楽しませる娯楽グッズです。咲楽は自室に戻り物置をガサゴソと漁ります。
「そういえばテオさん、ボードゲームは楽しそうに遊んでたっけ」
咲楽は折り畳み式ボードゲームを手に取ります。
いろいろな種類があるので、遊びを知らない異世界人でもとっつきやすそうな物を選び持っていくことにしました。
「よし、これだけ持っていけば大丈夫でしょう!」
他にも役に立ちそうな物をリュックに詰め、最初の転移以上に荷物をパンパンにしました。もう荷物を背負って獣道を進む必要がないので、いくらでも持っていけます。
「女神様、度々すみません。転移をお願いしていいですか」
『わかりました……ふぅ』
小さく疲れた息を吐く女神様。
「女神様、疲れてます?」
『あ……ええ、でも心配には及びません』
「ちょっと待っててください!」
『?』
そう言い残して駆け足で自室を出る咲楽。
そして台所でドタドタした後、切り分けられた苺を持って戻ってきました。
「新鮮な苺です、お納めください」
咲楽は女神像の前に苺をお供えします。
『ふふ、私はこの赤い果物が気に入りました』
「まだまだあるので、欲しくなったら言ってください」
『ありがとうございます。サクラも少し休憩したらどうです?』
「…そうですね」
甘い果物で元気を補充しつつ、二人は女神様としての仕事を頑張るのでした。




