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第317話 【元反乱拠点】




 咲楽たちは一日中、西の砦復興のために労働しました。


 ナキとルルメメの怪力で巨大な瓦礫を撤去。

 キユハの手で重要な魔道具は修繕。

 咲楽の魔法で入院している人々は元気を取り戻しました。


 フリムの人々は敵国だった英雄たちが、泥だらけになりながら復興に協力してくれたことに驚きます。帝王が元凶だったとしても、外の人間がフリムの住人を恨んでいても不思議ではありません。


 外国を恐れているのは帝都フリムも同じでした。


 そんな漠然とした不安は英雄たちの活躍で吹き飛びます。さらに女神の使者である咲楽の癒しの力は、体調だけでなく沈んでいた雰囲気を盛り上げてくれました。


 働き回って気付けば日が暮れてしまったので、咲楽たちは予定を変更して西の砦で一夜を明かすことになりました。





 仕事を終えた咲楽たちはまず宿泊施設へ向かいます。


 西の砦は中央区を囲うように形成されており、石造りのどっしりとした佇まいは強固な西洋の古城のようです。女神像が祭られた教会のような広間がある本館に右館、左館、奥館などの施設がぐるりと配置されています。


 そんな砦に囲まれた中央区は最も安全な場所であり、帝王の目の届かない唯一の場所でもありました。だからこそオーガルはここを反乱拠点に選んだのです。


(ここは変わってないですね)


 咲楽にとってもここは印象深い場所の一つです。

 広大な庭に大小それぞれの建物が十つだけ佇んでおり、自然は豊かで綺麗な川が流れています。特別な人だけが出入りできる中心地ということだけあって、外の不衛生な環境とは別世界でした。


「長旅、お疲れ様です」


 すると咲楽たちの前に身なりのいい男性軍人が敬礼で迎えてくれます。


「後のことはこのライル大佐に任せる」


 テオールはその軍人を紹介せず話を進めます。


「私とオーガル様は先に中央砦へ向かい、ハクア様に諸々を報告する。サクラたちの到着は明日になるとな」


「迎える準備は出来てたんですよね…勝手してごめんなさい」


「英雄たちには感謝こそすれど、謝罪させることは何もない。それに西の砦でしたことを中央の連中に伝えれば少しは緊張も解けるだろう」


「緊張?」


「とにかく今日はゆっくり休んでくれ」


 伝えることだけ伝えてテオールは背を向けます。


「中央砦で待っているぞ」


 オーガルも軽く手を振ってこの場を後にしました。


「いや~働いたな!」

「おなかすいた」

「過労、疲労…」


 やることをやり終えた英雄たちはお腹を空かせていました。


「これから案内する屋敷でお食事の用意も出来ています」


 この場を任された軍人ライルが英雄たちを先導してくれます。


「…」


 ですが咲楽は何故か重い足取りです。


「どうかしたの?」


「?」


 葵とアクリはその些細な変化に気付きました。


「いえ…実はフリムの食文化って、四ヵ国の中でもかなり低いのですよ」


 咲楽は小声でそう言いながら、過去に食したフリムの料理を思い出します。印象として残っているのは無味無臭…料理の文化が低いだけではなく、フリムは土地が瘦せているので食材の質も酷いものでした。


(フリムの国おこしもソエルと同じ料理作戦でいいのかも)


 そう思えるくらい良い思い出がありません。


「異国の料理を受け入れるのも異世界旅行の醍醐味だよね~」


「どんな料理でも完食するよっ」


 それでも葵とアクリは楽観的でした。


「ええ…せっかく用意してくれた料理、ちゃんと味わいましょう」


 二人に後押しされて咲楽は覚悟を決めます。

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