第271話 【アクリの目指す答え】
アクリは一人でセコイアの街に出ていつもの場所、自分の父親の像が飾られた広間へ向かいます。そこに行けばニナに会えると確信しているからです。
(何が最善なのかは分からない…)
アクリはまだ答えを見出してはいません。
しかし、やるべきことは定まっていました。
(でも一番大事なのはフレアードって人が、ニナのことをどう思っているかだ)
裏道の広間に到着すると、英雄像の前にはやはりハナニナの姿がありました。
「こんにちは」
「…」
背後から声をかけてもハナニナは無反応です。
きっと来ることが分かっていたのでしょう。
「女神の使者に会う心の準備はできた?」
それでもお構いなしでアクリは隣に座ります。
「…まだ」
「そっかぁ」
「でも自分なりに、父について調べてみた」
「おお~」
「母から聞いた…父がどうして帰れない戦争に参加したのか」
フレアードが戦争に参加した動機。
それはアクリが一番気になっていたことです。
「不器用な父親だから、だって」
「…」
「よく分からなかった…親は戦争に行かないといけないの?」
ハナニナはその言葉の意味を理解していませんがアクリは違います。
(やっぱり…戦争に参加した動機は、きっと私のお父さんと同じなんだ)
どうして自分には父親がいないのか、アクリにも寂しい思いに苛まれていた時期がありました。そして母親に今のニナと同じ質問をしたことがあります。
『あの人が優しいお父さんだからよ』
重要なのは不器用でも優しいでもなく、父親だからという点です。
そう返されても当時のアクリは何も分かりませんでした。しかしギルドの街ソエルで父親が戦争に参加した動機を聞いて、初めて母親の言っていたことが理解できました。
フレアードの親心を伝えること、それが今のアクリのやりたいことです。しかしその役は自分では務まりません。
「話は変わるけど知ってる?女神の使者様が何か面白いことを企ててるんだって」
「面白いこと?」
「四日後に開催されるらしいから、見に行ってみてよ。そこで女神の使者がどんな人なのか分かると思うから」
「…」
急な提案にハナニナは面食らいますが、答えはすぐ出ました。
「一緒に…来てくれる?」
「え?」
その返答に今度はアクリが面食らいます。
「一人だと心細いから…」
「そ、そっか…じゃあ一緒に行こう」
「…」
「…」
アクリとハナニナはこそばゆい気分になりました。まるで友達みたい…そんな言葉が脳裏を過ったからかもしれません。
「因みにその日までが私のセコイアでの滞在期間なんだ」
「…そうなんだ」
「だからその日までニナの知ってるセコイアのいい所、教えてもらえないかな?」
「いい所……南の花園とかおすすめ」
「何処にあるの?」
「ついて来て」
こうして二人は演奏会の開催日まで、多種族の国セコイアを仲良く観光するのでした。




