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第265話 【アクリとハナニナ①】




 ずっと雨が降り続いていたセコイアの土地に、ついに晴れの季節がやってきました。薄暗かった水の都市は眩い日差しを浴びてキラキラと輝いているようです。

 

 そして住人たちは雨の日よりも活動が活発になっています。半年ぶりの晴れ間であると同時に、女神の使者が訪れていることも相まって活気に溢れていました。


「やっぱり晴れの方が好きだな」


 そんな町並みを歩くアクリですが、向かう先は日差しの通らない裏道でした。


(またあの子…ニナに会えるかな)


 まず向かうのは自分の父親の像が飾られている広場です。

 ハナニナが何処で暮らしているのか、普段は何をしているのか、詳しいことを何も知らないので取りあえず最初に会った場所へ向かうことにします。


(……いた)


 すると予想通り、石像の前にハナニナの姿がありました。


「どうも」


「…」


 アクリは背後から声をかけますがハナニナは振り返りません。


「本当にこの英雄が好きなんだね」


「…別に、ここ以外に居場所がないだけ」


 そう言うハナニナの表情と声には相変わらず感情が籠っていません。


「何処で暮らしてるの?」


「母の家…いつも仕事で忙しい」


「…」


 まさかここまで自分に似た境遇だとは思わなかったのでアクリは驚きました。


「次はニナが質問する番」


 するとハナニナは急に振り返ってアクリと目を合わせます。


「どうして人間がここにいるの?」


「…それはね」


 その質問に対する準備は出来ています。


「これは内緒なんだけど…実は多種族の国セコイアは国外への交易を計画してて、私は外の国からやってきた人間代表の親善大使なんだ」


「しんぜん…?」


「要するにセコイアの人たちと仲良くなりたい、外国から来た人間だよ」


 長々と説明していますがこれはウィングリングが用意してくれた設定です。それは子供には理解しづらい内容で、言ってるアクリもよく分かっていません。


「子供が人間の代表になれるの…?」


「親善大使は戦争に関わってない人じゃないと務まらないんだよ」


「…そうなんだ」


 ハナニナはなんとなく納得しました。


「じゃあ次は私が質問する番だね」


 そう言ってアクリはハナニナの隣に座ります。


「…」


 いつの間にか交代で質問する流れになっていますが、自分が始めたことなのでハナニナは無言で質問を待ちました。


「その左肩に巻いてる布、黄色いよね」


「ん」


「黄色は憎しみを隠し持っている可能性がある人が身に付けるんだよね」


「そうだよ」


「それってどういう基準で決めてるの?」


「大切な人を亡くしたとか、誰かを憎んでるとか、嘘を見抜ける蛇人に質問される。それでニナの結果は黄色なんだって」


「そうだったんだ…」


 ルルメメは戦争で父親を亡くし、九人の英雄に対して敵意まで向けています。そして昨日のような騒動を起こしているようでは、子供でも要注意人物として注目されても仕方がありません。


「子供で白以外の布を巻いてるの、きっと私だけだよ」


「…」


「じゃあ次はニナの番」


 そんなことよりとハナニナは質問を続けます。


「ここに来てる女神の使者のこと、知ってる?」


「もちろん知ってるよ」


「どんな人かも知ってる?」


「うーん…」


 アクリは返す言葉に迷いました。

 ここで咲楽のことを褒め称えても、九人の英雄のことが嫌いなハナニナは面白くないでしょう。不機嫌になられたら会話も終わってしまいます。


「あの人が死ぬとわかってる戦争に父を参加させたんだ」


「…」


「きっと冷たい人なんでしょ」


 ハナニナは不貞腐れた顔でアクリと目を逸らしました。


「私も詳しいことは分からない。過去に何があって、どんな思いでニナの父親を戦争に参加させたのかも知らない」


「そう…」




「だからさ、女神の使者様のことを調べてみない?」


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