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第25話 【鶏肉フルコース】




 咲楽はリットとクグルが狩ってきた三羽のロックバードを使い、地球の調味料を駆使して今晩の夕食の準備に取り掛かりました。


「……不思議な物ばかりだね」


 ハトから見れば、咲楽が取り出した調理器具や調味料のほとんどが用途不明の異物です。


「ハトさんはお肉の下処理とかをお願いします…私は苦手なので」


「うん、任せて!」


 咲楽はハトと協力して、大量の鶏肉を調理を開始します。


――――――――――――――――――――

~鶏肉フルコース~


 鳥肉と野菜のコンソメスープ

 鳥ササミとレタスのごまだれサラダ

 鳥の照り焼き

 鳥の唐揚げ

 チキンライス

――――――――――――――――――――


「これが地球の鶏肉料理です!」


 食卓に並べられた見慣れない料理の数々。未知の食べ物に動揺する子供たちでしたが、嗅いだことのない料理の香りは問答無用で食欲を刺激してきます。


「なんだこれ、うまい!」

「…っ!」

「美味しいよ!サクラお姉ちゃん!」


「そうでしょう、子供も裏切らない王道な味付けにしたので」


 独特な香りを放つスパイスは避け、庶民的でシンプルな味付けで責めました。結果は大正解、子供たちの食べる手は止まりません。


「この味……プレザントの食材だけじゃ絶対に作れないね」


 ハトも料理の味に驚きます。


「いえ、そうとは限りません。プレザントにはまだ未発見の食材が眠っていると思うので」


「そうかな…でも確かに、魔物が住む森には未開拓地が多いから可能性はあるかも」


「今回は地球の食材をふんだんに使いましたが、私の最終的な目標は“プレザントの食材だけで美味しい料理を作る”ことです」


「そうね、このチキュウの味をヒントにすれば目指せるかも!」


 美味しい料理を知ってしまったハトは、プレザントの食文化発展を強く望みました。


「これだけの料理が作れたのも、お肉を狩ってきてくれたリットくんとクグルくんのおかげです。ありがとう」


 咲楽は満面の笑みを浮かべてリットとクグルにお礼を言います。


「お、おう」

「ん…」


 少し恥ずかし気に答える二人。

 憎食みと対峙してしまい狩りに出たことを後悔していたリットとクグルですが、咲楽は二人が狩ってきてくれた獲物を美味しく調理してくれました。二人の辛い思い出を、良い思い出で塗りつぶしたのです。


「…やっぱりサクラちゃんはすごいなぁ」


 その様子を見たハトは、咲楽の手腕に感心していました。


「私でも手に負えない二人を丸くさせるなんて」


「女神様の加護のおかげですよ」


「それだけじゃないと思うけどな~」


 咲楽は女神様の力を授かってから、自分の力を軽視する傾向があります。冒険の中で咲楽が身に着けた人の心を開かせる能力は、十分評価できるものです。


「ところでサクラちゃん。あの子は誰?」


 ハトは少し離れた席で料理を食べている少年に注目します。

 孤児院に着いてからは、外で寝袋を敷き睡眠をとっていたノーム。今は咲楽が作った料理をもちもちと咀嚼していました。


「私の仲間のノームくんです」


「…ノーム?」


「はい」


「それって、創世記に出てくる土の四大精霊竜ノームのこと?」


「創世記を呼んだことがないのでわかりませんが、多分そうです」


「………」


 恐る恐るノームを観察するハト。

 精霊は竜の姿として文献に残されているので、人の姿で見ても判断がつきません。ですが咲楽は意味のない嘘をつかないことをハトは知っています。


「料理はどうです?ノームくん」


「うま~い。まさか寝る以外にも幸せなことがあるなんてね…」


「それは良かったです」


 そんなノームに気軽に話しかける咲楽。

 ハトは思い出します。女神の証をもつ咲楽の存在自体が、神話の領域にあるのだと。





 山盛りの料理は見事完食となりました。

 六人で食べきるには少し多すぎる量でしたが、食べ盛りの少年少女を満足させるには十分だったようです。


「さて…それではもう一つの検証を始めましょうか」


 美味しい物でお腹を満たした子供たちに咲楽は歩み寄ります。


「突然ですが皆さん、普段はどんな遊びをしてるんですか?」


 孤児院の少年少女は食べ盛りで遊び盛り、好奇心旺盛なお年頃の子供たちです。そんな三人は普段どんな遊びをしているのでしょうか。


「…草むしりとか」

「薪割りとか」

「掃除とか!」


「楽しいですか?」


「………楽しい?」

「出来ればサボって寝てたい」

「ハトさんに褒められるのは嬉しい!」


「…やっぱり変化なしですか」


 クグル、リット、ハツメの回答に咲楽は落胆します。

 プレザントには遊びの文化がまったくありません。そもそも“遊び”という概念すら存在しないような世界なのです。


「文化の違いだね、サクラちゃんの言う“遊び”はプレザントでは未知なんだよ」


 落ち込む咲楽を見て苦笑するハト。


「それでも限度がありますよ……じゃんけんすら知らないと聞いた時はびっくりしました」


「ああ、それはサクラちゃんから教わった。面白くて簡単に勝負が決まるから平和的だよね」


「じゃんけんだけでなく、地球にはいろいろな遊びがあります。クロバさんが帰ってくるまで私も動けませんし、いろいろ遊んでみましょう」


 咲楽は地球から持ってきた遊び道具を取り出します。

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