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第258話 【キユハ陣営①】




 時代と場所は戻って移動拠点グランタートルの宿。

 咲楽たちが先に出発してから数日が経過して、残された三人の住人は時が来るまで生活を共にしていました。


「以上、簡潔…そんな感じで一年前に戦争は終わったんだ」


 キユハは朝食のチーズトーストを咀嚼しながら過去話を語り終えます。


「すごいね…咲楽ちゃんもキユハちゃんも立派な英雄だ!」

「咲楽さんの人を惹きつける魅力の謎が分かりました」


 地球人の葵とつつじは友人の意外な過去に驚かされていました。

 二人はまだ咲楽がこの世界で何をしていたのかを知らなかったので、詳しい事情を知るためキユハに思い出話をさせたのです。


(やっと終わった…かなり端折ったけど別にいいだろ)


 ただキユハはかなり適当に過去を語ったので、戦争の壮絶さはあまり二人に伝わっていません。


「つまり咲楽ちゃんの今回の旅はエンディング後のやり込み要素みたいなものだね」


「よく分からんけどそんなもんだ」


 葵の不思議な解釈を適当に流すキユハ。


「危険な旅だったのでしょう…咲楽さんが無事でよかったです」


 楽観的な葵に対して、つつじの反応は大人でした。


(サクラやアオイとは違ってツツジの言葉からは知性を感じる。後でチキュウについて尋ねてみよう)


 内心そんなことを思いながらキユハは紅茶を口に含みます。


「それよりようやく雨が止んだよ!」


 朝食を最速で平らげた葵は窓のカーテンを開け放ちます。異世界に来てからずっと降っていた雨は止んで、雲の切れ間から日差しが差し込んでいました。


「いよいよ私たちも出発の時だね!」


「…そうだな」


 面倒くさそうに頭を掻くキユハ。


 三人も多種族の国セコイアへ向かう予定でしたが、雨の中の旅は危険を伴うので晴れてからという咲楽との約束でした。

 そしてもしセコイアが入国できないほど危険な状況なら鳥人族から伝令が行くようになっていましたが、今日までそれがないので予定通りに出発しても問題ないということです。


「しかし大丈夫なのでしょう。子供三人で魔物が徘徊する平原を歩いて…」


 ですがつつじは好奇心よりも不安の方が大きいようでした。


「無問題、安全…なにせ僕がそばにいるんだからな」


 そんなつつじにキユハはそう言い切ります。





 朝食を済ませたキユハたちは、準備した荷物を背負い拠点の外に出ました。空はもう雲一つない快晴です。


“立って運べ”


 キユハが土の精霊石を掲げてぶっきらぼうにそう唱えると、地面から全長10mくらいのゴーレムが立ち上がり腕をこちらに向けてきました。


「おお、ゴーレムの魔法だ!」

「いつ見ても非化学な現象ですね…」


 まだ数回しか魔法を目撃していない葵とつつじは良いリアクションを取ってくれます。


「移動はこいつに任せるから乗って」


「はーい」

「はい」


 キユハに手招きされてゴーレムに搭乗する葵とつつじ。

 腰の部分には荷物置き場があり、肩には座席のような凹凸があるので安定感は申し分ありません。おまけに上面は草木で生い茂っているので座り心地も抜群です。


「おお~こりゃ快適だ」

「流石は英雄様ですね、頼りになります」


 葵とつつじは頼もしいゴーレムの肩を借りて大船に乗った気分でしょう。


「それじゃあ行くか…面倒だけど」


 二人の乗客を確認してからキユハはゴーレムを動かして移動拠点から旅立ちました。目指すは森の奥深く、咲楽たちのいる多種族の国セコイアです。

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