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第245話 【拠点で合流】




 アクリ、アクアベール、ルルメメは森を出て街に戻ってきました。


「もう日は暮れているので、サクラお姉ちゃんは屋敷に戻ってるかもしれません。なのでお二人を拠点まで案内しますね」


 ここからはアクリが前に出て二人を先導します。


「サクラちゃんの拠点か~楽しみね」


 アクアベールはまるで友達の家へ遊びに行くかのようなお気楽さです。


「…」


 対してルルメメは無表情の無反応、無言でアクリの後に付いて来ます。


(何を考えてるか分からない人だな…ルルメメ様)


 アクリは今まで様々な人と会ってきましたが、ルルメメはどのタイプとも当てはまらない人柄でした。どんな常識を持っているのか、何が失礼にあたるのか、歩きながらずっと考えています。


「おい、くせげ」


 そしてついにルルメメから声をかけられました。

 くせ毛…アクリの身体的特徴に着眼した、とても分かりやすい呼び方です。


「は、はい」


「おまえはサクラのことが好きか?」


「…大好きです」


 アクリは今まで咲楽のことが好きかどうかなんて考えたこともありませんが、すんなりとその言葉が出てきました。


「じゃあ、おなじだな」


 その答えに満足したのかにやりと笑うルルメメ。


(なんだか可愛らしい人だな…)


 見た目や態度の幼さも相まって、アクリは小動物の相手をしているような気分になります。


「あ、あそこがサクラちゃんの拠点でしょう」


 すると後ろを歩くアクアベールが遠くの建物を指差します。


「分かるんですか?」


「だってナキ様とエトワール様の気配をしっかり感じるもの。アクリちゃんの予想通り、もうみんな帰ってるみたいね」


「便利ですね…緑天の感知」


「でもサクラちゃんの気配はよわよわだから感知できないのよ~」


 そんな会話をしている内に拠点の前に到着したアクリ一行。

 すると屋敷の入口から咲楽が現れます。


「おお~エトワールさんの言う通り、みんなで来たんですね」


「…!」


 咲楽が現れた瞬間、ルルメメは勢いよく体当たりしました。


「ふぐっ」


 咲楽は何とか倒れずに踏み止まりますが、ルルメメは顔面にしがみついたまま尻尾を振って匂いを嗅ぎまくります。その姿はまるで久しぶりの再会を果たし愛犬のようでした。


「ルルメメちゃん、いきなりすぎますよ」


「………やっぱりサクラの匂い、いみふめい」


「もう…お久しぶりですね」


「うん、ひさしぶり」


 咲楽とルルメメは再会を喜び合います。


「アクアベールさんとアクリちゃんもお疲れさまです。どうぞ中に入ってゆっくりしていってください」





 こうしてセコイアに滞在して二度目の夜が訪れました。いつも外は雨音で騒がしいのですが、雨の勢いは入国した時よりも弱くなっていることが分かります。


(アクアベールさんも言ってたし、明日か明後日くらいには晴れそうだな…)


 アクリは廊下から外の景色をしばらく眺めてから、みんなのいる大部屋に戻りました。


「おかえり、アクリちゃん」


 咲楽は昨日と同じ囲炉裏を使って料理をしながらアクリを迎えます。


「それにしても…賑やかになりましたねぇ」


 そして咲楽は改めて集まった面々を見回しました。


「ルルメメ、元気にしてたか?」

「うん。おにっこはいつも通りだな」

「エトワール様、話し合いはどうでした?」

「…ただサクラと情報を共有しただけだ」


 セコイアの英雄二人にソエルの英雄一人、さらにセコイアの四獣士が一人。いつものことですが咲楽の周囲には常に大物が集まります。


「それでサクラ、今回は何を企んでいるんだ?」


 エトワールは囲炉裏の火を弄りながら咲楽にそう尋ねました。


「話した通りセコイアを国おこしするつもりなのですが…具体的に何をするかは決まっていません」


 そう返しつつ咲楽は鍋に食材を入れていきます。


「何を作ってるんだ?」


 お腹を鳴らしながら鍋の中を確認するナキ。


「召使いさんから新鮮な食材を頂いたので、日本の調味料を使って寄せ鍋を作ります」


「よせ…何を寄せるか知らんが美味しそうだ」


 咲楽は今回、地球で一般的に売られている鍋の元をいくつも持ってきていました。大人数で新鮮なセコイアの食材を堪能するのに鍋はうってつけなのです。


「国おこしをするにあたっていろいろ試行錯誤しますが、できれば皆さんの力を借りたいと思っています」


 咲楽は完成した鍋をお椀によそいながら、みんなの反応を確認します。


「サクラのためなら何でもしよう」

「よくわからないけど、力になる」

「私も微力ながら手助けするね~」

「家来の力になるのは主の務めだ」


 エトワール、ルルメメ、アクアベール、ナキは迷いなくそう応えてくれました。

 

「私も出来るかぎり頑張る!」


 アクリもやる気満々です。


「ありがとうございます…そこでまず力を借りたいのはアクリちゃんなんですよ」


「え?」


「アクリちゃんにしかできない、重要な任務があります」


 咲楽はそう続けながらお椀をアクリに渡します。

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