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第242話 【巫女との面会➂】





 アクリが森の中でルルメメと会っている頃、神社の本殿にいる咲楽たちの話し合いは続いています。


「…私からの報告は以上です」


 まず咲楽から伝えるべきことを話しました。


 今回は平和になった異世界へ遊びに来たこと。

 みんなが自分のことを忘れているのは自然現状であること。

 各地で現れる汚れた魔物について。

 各国が抱えている終戦後の問題。

 そしてセコイアの森付近で憎食みに遭遇したこと。


 話した内容はここまでです。

 ハルカナ王国付近で憎食みが現れたことや、記憶封印の真実。精霊と魔物が手を組んで汚れた魔物に対抗しているなどは話しません。伝える内容は必要最低限、セコイアに関係することだけに留めます。


「一番の問題は憎食みが現れたことですよね」


 報告を終えた咲楽はすぐ本題に移りました。

 憎食みがセコイアの森の近辺で目撃されたことは、国だけではなく世界にとっても一大事です。


「…」

「…」

「…」


 ですが巫女、ウィングリング、エトワールに取り乱す様子はなく静かに顔を見合わせていました。


「やはり隠し事はできないようだな」


 巫女がそう言うと、ウィングリングは観念したように話し始めます。


「サクラ殿…実は憎食みの出現は今回だけではないのです」


「え?」


「最初に目撃されたのが半年前で、サクラ殿が遭遇した個体で三匹目になります」


「…」


 まさかの事実に咲楽は驚きを隠せません。


「それで被害の方は?」


「エトワール様がすぐ駆除されたので被害はありません」


「そうですか…」


 それを聞いてホッと胸をなでおろす咲楽。


「仕事をサボるほど落ちぶれてはいないようだな」


 話を聞いてナキは隣で弱っているエトワールを一瞥します。


「奴らの前でなら、私は自分を正当化できる…相手が絶対悪なら容赦はしない」


 エトワールは憎食みの話が始まると、昔のような強気な瞳に戻っていました。卑屈になっても正義感は捨ててはいないようです。


「ですがご安心くださいサクラ殿。我々はこの事態を深刻に受け止め、半年前から対策を講じています」


 ウィングリングがそのままの流れでセコイアの現状を語ります。


「憎食みが出現したことを国中に知らせ、常に警戒態勢を取らせています」


「公表しちゃったんですか?」


「憎食みは国民一人一人が心の闇を自覚し、自らを制御することが肝要ですので」


「…そうですね」


 咲楽は少し複雑な心境です。

 何故ならハルカナ王国では国おこしの妨げになると踏んで、憎食みの出現を公にしてないからです。だからといってこの対策も悪手とは言い切れません。


「さらに憎食みを生み出した前科…憎食みが宿る可能性がある者たちを調査して、区別ができるよう目印を付けました」


「目印?」


「サクラ殿はお気づきになられましたか?我らや国民の左肩に巻かれている布を」


「……そういうことですか」


 ここに来るまでの道中で見た、住人の左肩に巻かれている布。今になって気付けば巫女やウィングリングの左肩にも布が巻かれていました。


「黒色は憎食みを生み出した前科がある者。黄色い布は憎しみを隠し持っている可能性がある者。そして白の布は前科も疑いもない者です」


 布の色はまるで、身に付けている人物の危険性を表しているかのようです。


「この証は憎食みの脅威を忘れてはいけないという()()です。これは現状のためだけではなく、この先の未来のためでもあるのです」


 ウィングリングは自信満々に宣言します。


(うーん…かなり強引な気がするような)


 ですが咲楽はその手段を前向きに受け入れることができませんでした。


「他にもいくつか新しい掟がありまして……」


 その後もウィングリングは国が行った改善策を教えてくれます。

 どれも合理的で正しい策だとは思えますが、咲楽からしたら少々堅苦しくて息が詰まりそうな印象を受けました。


「その改善策を始めて半年、また憎食みが現れちゃったんですね」


 そこで咲楽は言いにくいことをはっきりと告げます。


「…面目もなく」


 これにはウィングリングも返す言葉がありません。

 憎食みが現れてしまった以上、まだ足りないものがあるのは明白です。


「ここで私の出番ですよ!」


 そう言って勢いよく立ち上がる咲楽。

 憎食みが現れようが、新しい掟があろうが、やることはこれまでと変わりありません。地球の娯楽文化で多種族の国セコイアを国おこしするだけです。

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