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第19話 【うさぎ肉のつみれスープ】




「ただいま~」


 食料調達に出かけたノームが帰ってきました。


「おかえりノームくん、食材はどうです?」


「山菜、キノコ、果物、それとレッサーラビットを狩ったよ」


「魔物…」


 ノームの手には山菜たちの他にも、首が落さた魔物が握られています。貴重なお肉ですが咲楽にとっては少し手を出しずらい食材です。


「サクラに気を使って“無垢な魔物”を狩ったよ」


「無垢な魔物って何です?」


「生物として稼働してるけど、こっちの山菜と同じ自然を維持するための知恵のない魔物だよ」


 この世界の魔物は種類が多く、弱肉強食もあります。中でも知性がある魔物には魂があり、種族ごとに文化を築いています。無垢な魔物とは知性も魂もない、自然界を維持するためだけに稼働する心無い生物のことです。

 生物を殺めることが苦手な咲楽ですが、それを聞いて覚悟を決めます。


「せめて美味しく調理しましょう」


 咲楽は手を合わせました。


「神様の恵みに感謝を込めて…」


『はい、サクラの良き糧としてください』


「…」


 いつも食材に感謝を込めている咲楽ですが、面と向かって神様に手を合わせたのは初めてでした。





 最初の冒険とは違い、今の咲楽には料理を美味しく仕上げるための調味料をたくさん揃っています。プレザントの食材を使った地球の調理を試す時がきました。


――――――――――――――――――――

 ~うさぎ肉のつみれスープ~


 ①川で洗ったうさぎ肉を包丁で細かくひき肉にします。細かくなったら塩、片栗粉を加えてよくこねます。


 ②鍋に水を入れて、沸騰したらうさぎ肉をつみれにして投下。鶏ガラスープの素、調理酒、ローリエの葉を入れて灰汁を取りながら煮込みます。


 ③肉に火が通ったらローリエの葉を取り出し、プレザント産の山菜とキノコを投下してさらに煮込みます。最後に塩で味を調えて完成です。

――――――――――――――――――――


「うさぎ肉はジビエの中でも臭みが弱くてあっさりしていると聞いたことがあるので、シンプルなスープにします」


 咲楽はお母さんから教わったジビエの調理法を披露します。


「よし、完成です」


「お~美味しそう」


 精霊はほとんど食事を必要としませんが、ノームは嗅いだことのないスープの香りに好奇心と食欲が刺激されます。


「ノームくんもどうぞ」


「わーい」


 咲楽は持参した紙の器にスープを注ぎ、ノームに手渡しました。


「女神様もどうです?」


『ごめんなさい、私は果物しか食べられないのです』


「そうなんですか?プレザントの果物といえば、リンコの実ですよね」


『出来れば地球の果物がいいのですがね…』


 リンコの実とは、プレザントで食用とされ女神様にお供えされる定番の果物です。香りは地球のリンゴに近いのですが甘みと酸味が弱く渋みが強いので、地球の果物に比べると美味しいとはいえない代物です。


「ごめんなさい…今は地球の果物を持っていなくて。帰ったらお供えしますね」


『そんなに気を使わなくてもいいのですよ?私は食事を必要としませんので』


 女神様はそう言っていますが、咲楽は少しモヤモヤします。


「…そうだ」


 咲楽は鞄からあるものを取り出しました。


「これはどうでしょう?」


『…その黒い物はなんです?』


「チョコレートです。地球のカカオという実で作られているので、たぶん大丈夫かと」


『………ええ、大丈夫そうです』


「よかったです!」


 咲楽はチョコレートを女神像にお供えします。


(もしかして動物質がダメなんですかね。でもチョコレートに含まれる乳原料はセーフ……前にお母さんから精進料理というものを聞いたことがあります。それなら女神様でも食べられるかも)


 料理人の卵として、女神様でも食べられそうな料理を思案する咲楽。


「それでは、いただきます」


 三人の食事の支度が済み、咲楽は温かいスープを口に運びます。


「うん、あっさりしてて良い味です。つみれは鶏肉みたいですね」


 入れた調味料は鶏がらスープの素くらいですが、地球の調味料の偉大さがよくわかる一品となりました。


「ノームくんはどうです?」


「この味……好き」


 ノームは満足そうにスープを堪能しています。


「女神様、チョコのお味はどうです?」


「…甘いです。本当にサクラのいるチキュウは美味しい世界ですね」


 女神様も地球の甘味に大満足の様子。


(久しぶりの異世界でアウトドア…楽しいな)


 咲楽は今回も重大な使命を背負ってプレザントに来ましたが、気分はのんびり旅行です。

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