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第179話 【アクリの冒険①】




 ギルドの街ソエルの各拠点には、中央に一つずつ大きな鐘が設置されています。この鐘を鳴らすことで街全体に一日の始まりを報せ、非常事態を報せ、重要人物を集める合図にも使用します。


 原始的な手段ですが、入り組んだ拠点の隅々まで報せを伝えられる有効な手段です。


 カンカンカンカーン!


 カンカンカンカーン!


 ルーザたちは海岸のカルカクにある鐘が四回鳴らしました。


 それはギルドの街ソエルで内乱が起きたことで生まれた、反対派に関わった権力者を集めるための回数です。その鐘の音は街全体に響き渡り、もちろん地下牢にいるアクリの耳にも届きます。


「…四回、鳴った」





 この数日間、アクリはずっと大人しく牢の中で待機していました。


 そもそもアクリには大人しくする他に手段はない…と、誰しもが思うでしょう。ですがアクリは待っていたのです、封筒の中に入っていた手紙の通りに動くタイミングを。


――――――――――


 鐘が四回鳴ったら、

 海岸のカルカクの頂上を目指せ。


――――――――――


 クスタから渡された封筒の中には、そう書かれた手紙と一つの鍵が入っていました。


(今まで何度も鐘は鳴ってたけど、四回はこれが初めて。このタイミングでここから脱出すればいいんだよね)


 アクリは牢の外を窺います。


(見張りはいない…)


 見張りといってもアクリは罪人ではありません。加えてこんな子供なら、監視など必要ないと警備を軽んじられていました。


「問題はこの鉄格子だけど…」


 ここから脱出するには、この牢屋の扉を開ける鍵が必要です。そこでアクリは物は試しにと、封筒に入っていた鍵を扉に差し込みました。


 ガチャ


 鍵は抵抗なく回り、牢屋の扉がゆっくりと開きます。


(開いた…まさかクスタさん、私がこの牢に閉じ込められることを知ってたの?)


 この状況を予期していたかのような助言を送り、封筒の中には進むべき道が記された手紙と、閉じ込められていた牢屋の扉を開錠させる鍵まで入っていました。

 どこまでクスタの思惑通りなのか…アクリは想像もつきません。


(考えるのは後にしよう)


 自由の身となったアクリは忍び足で牢から脱出します。


(あ、没収されてた私の装備だ!)


 牢を出るとアクリの所持品が詰まった箱を発見しました。

 外出用のマント、愛用の短剣と盾、士官学校でファフゥから授かった精霊石。どれも大切な物なので、見つかって一安心です。


 装備を整えたアクリは地上に続く階段を見上げます。


(手紙によると、ここってカテンクじゃなくてカルカクなんだよね。頂上を目指せって書いてあったけど、一人で到達できるかな…)


 牢からは脱出できましたが、アクリはまだ迷子状態です。しかも脱走がバレて捕まるようなことがあれば、どんなお仕置きが待っているか分かりません。


(いや…大丈夫。私は一人じゃない!)


 アクリは勇気を振り絞って、階段を上って行きました。

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