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第161話 【ハルカナ騎士団 クロバ隊】




「ただいま戻りました」


 しばらく咲楽とハトが料理について話し合っていると、玄関の方から男性の声と数人の足跡が聞こえました。


「騎士の皆さんが帰って来たね」


「私、挨拶してきます」


 ハトに断りを入れ玄関に向かう咲楽。


「クロバさん、お帰りなさい」


「サクラ!?なんでここに…」


 厨房から現れた咲楽を見て、クロバは目を丸くします。


「あれ?こんな子いましたっけ」


 クロバの背後から現れた女性も、咲楽を見て首を傾げます。その栗色のワンカールヘアの女騎士に、咲楽は見覚えがありました。


「あ、確か…クロバ隊のローナさんですよね」


「ええ。私がクロバ隊長の右腕、ローナですよ」


 ローナはクロバの右隣に立ち直し、誇らしげに胸を張ります。クロバ隊の副隊長である彼女と咲楽は前の旅で多少面識はありましたが、今回は初めての対面です。


「なんだ、まだ他に子供がいたのか」

「お、厨房からいい匂い」

「今晩もハトさんの料理が楽しみだ」


 ローナの後に続いて、他のクロバ隊の騎士たちが続々と広間に集まりました。


(クロバ隊が勢揃い…任務は多分、憎食みの調査ですよね。クロバ隊には孤児院でお世話になった騎士さんもいるので、この近辺には土地勘がある。調査にはもってこいですね)


 クロバ隊の事情を推察する咲楽。

 ハルカナ騎士団は隊長を中心にいくつもの小隊が組まれます。中でもクロバ隊は孤児院と深い繋がりがあるので、この付近の森を調査するには適任です。


「それで、どうしてサクラがここに?」


 クロバは咲楽がここにいる理由を推察できないので事情を尋ねました。


「料理についてハトさんに相談したくて、ここまで飛んできました」


「飛んできた…?どうやって?」


「移動手段については秘密です」


 細かい説明は混乱を招くだけだと咲楽は学習したので、グリフォンについても、ソエルの問題についても、他の事情も語るつもりはありません。


「何やら騒がしいな…ハルカナの騎士か」


 すると騒ぎを聞きつけたナキが広間に現れました。


「………サクラ。もしかしなくても、その鬼の娘は…」


 ナキを見て青ざめるクロバ。

 憎断ち戦争に参加したクロバは、クスタ以外の英雄たちを一方的にですが見ています。


「はい、ナキちゃんですよ」


「なんでソエルの英雄がここにいるんだ…!?」


「ハトさんに挨拶したがっていたので連れてきました」


「いや…でもそんな気軽に…」


 クロバの動揺は当然の反応です。

 世界を救った英雄は、国王や総長といった国の代表と同等に近い立場にあります。そんな大人物が目の前にいるのですから気が気ではありません。


「クロバ隊長…これはどういう状況ですか?」


 そして他の騎士たちの動揺はクロバ以上でした。


「えーと…これはだな…」


 自分の部下たちにどう説明するべきか、クロバは悩みます。





「サクラちゃん、そろそろ今晩の食事の準備をしましょうか」


 騎士たちが話し合っていると、ハトが広間に顔を出して咲楽を呼びます。


「了解です。ではクロバさん、後はおまかせしま~す」


「ええ…」


 事情説明をクロバに丸投げして、この場から逃げるように厨房へ向かう咲楽。


「今晩も期待してますよ、ハトさん」


 そこで騎士の一人がハトに向けて手を振りました。


「はーい。今晩は昨日よりもっと美味しい料理を用意しますよ」


 ハトは笑顔で手を振って答えます。


「それにしても…隊長がここに入り浸るのも納得だよな。大自然の空気の中、喧噪のない宿でハト殿の絶品料理が堪能できるんだから」


 騎士の中の年長者がそんなことを呟きました。


「…私も料理覚えようかな」


 何故か悔しそうな表情でハトを見送るローナ。何やらローナはハトに向けて妙な対抗心を燃やしているようですが、その物語はまた別のお話で。


「ハトさんの料理、好評のようですね」


 厨房に着いてから、咲楽は感心したように頷きます。

 既にハトの料理を味わった騎士たちは、完全に胃袋を掴まれていました。あれだけの調味料を生み出せたのですから当然でしょう。


「あはは…でもサクラちゃんの料理を味わったら、騎士の皆さんは上を知ることになるでしょうね」


 ハトは調理の支度をしながら、期待の眼差しを咲楽に向けます。


「さて、今回の食材はリットくんとクグルくんが狩ってきてくれたロックボアよ。これで騎士さんの滋養になるお肉料理を作りましょう」


「豚肉ですか……よし、作る料理を決めました!」


 この場に揃った食材を確認して、咲楽はすぐ作る料理をイメージしました。

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