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第160話 【ハトの調味料】




 ナキとハトが初対面の挨拶をしている時、ある匂りが咲楽の鼻孔をくすぐりました。


「あれ?いい匂いがしますね」


「あ、今は調理中だったんだ」


 ハトは思い出したように答えます。


「クロバくんが騎士の皆さんを連れて、この近辺でお仕事してるの。それで食事は私が用意してるんだ」


「へぇー…厨房を見に行ってもいいですか?」


「どうぞ~」


 ハトから許可を貰い、匂いの元である厨房へと足を運ぶ咲楽。


「わぁ…」


 咲楽は厨房の中を覗いて驚きました。

 前に来た時よりも調理器具の種類が増えており、見覚えのない食材が詰まった木箱や、色とりどりの調味料が入った瓶が棚に整頓されています。


 そこはもう立派な調理場でした。


「もしかしてサクラちゃんが相談したいことって、料理について?」


 咲楽の後に続いてハトが厨房に入ります。


「そうです!もしかしてすごい進歩してます?」


「ふふ…あれからサクラちゃんが教えてくれた異世界の味を目指して試作を繰り返したんだ。まだ再現は出来てないけど、近づくことは出来たと思う」


 咲楽が料理の試作に着手した期間は十日程度。おまけに別の問題で右往左往していたので進展も僅かなものです。


 対してハトが試作にかけた期間は一ヶ月弱。しかもプレザントの食材に関する知識は咲楽よりも広いので、効率がまるで違います。


「この調味料が私の成果よ。よかったら味見してみて」


 そう言ってハトは棚から三本の小瓶を取り出しました。





 ハトが生み出したプレザントの調味料三種。


 まず咲楽は、茶色い粉のようなものを味見します。


「おお…すごい旨味があります」


「コンソメっていう調味料をヒントに、野菜や動物質の旨味を合わせて作ったの。これだけで美味しいスープが作れるよ」


 それはまさに咲楽が作ったブイヨンの完成形でした。しかも咲楽が作ったものより味が深く、粉状になっているので様々な用途で使用できます。


 次に咲楽は、少し粗目の粉の味見をします。


「この香りは…クオウの実?他にもいろいろな香りがします」


「クオウの実を中心にいくつもの香辛料を組み合わせて、お肉やお魚に合うよう配合してみたの」


 この香辛料は地球でいうところのシーズニングスパイスです。今まで咲楽はプレザント好みの味にするため取りあえず隠し味にクオウの実を入れていましたが、代わりにこのスパイスを使用すればさらに奥深い味わいになるでしょう。


 そして咲楽は最後に、黒いソースの味見をします。


「甘くて濃厚な味…美味しい」


「森や畑で採れる果物や野菜たちを熟成させて作ったの。そのまま料理にかけても美味しいけど、調味料としても優秀なんだ」


 他の二つに比べ、このソースからは強い旨味が感じられました。地球にあるウスターソースに近い味です。焼いただけの肉につけたり、揚げ物にかけるだけでも十分美味しく頂けるでしょう。さらにアレンジを加えれば様々な料理が生み出せそうです。


 旨味の粉末。

 ミックススパイス。

 万能ソース。


 ハトが作った三種の調味料は地球の味には及びませんが、プレザントの食材だけで作れるものとしては最高の味を生み出していました。


「すごいですハトさん!この調味料だけで料理のイメージが沸き上がってきます!」


 ハトから何か料理のヒントを貰えればと期待していた咲楽ですが、これはもうヒントどころか欲しかった回答そのものでした。


「これらを使って、何か料理を作りたくなってきました」


「うふふ、じゃあ今晩の献立はサクラちゃんと一緒に調理しようか」


 地球の食文化によって生まれた、咲楽とハトの異世界料理人コンビ。二人による食文化改革は着々と進んでいきます。

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