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第159話 【孤児院の様子】




 グリフォンの背に乗り、孤児院に向けて空を飛ぶ咲楽とナキ。


「おおー…爽快だな」


 初めて飛行を体験したナキは上機嫌で世界を見下ろします。


「流石はグリフォン、速いですね」


 出発してから一時間足らず、もうハルカナ王国が見えてきました。孤児院到着まであと少しです。


(…そういえば、魔物同盟の拠点が近くにあるんですよね。ちょっと様子を見に行ってみようかな)


 そこで咲楽は土の精霊ノームから聞いた話を思い出します。

 魔物同盟に加入したグリフォン、ベヒモス、コボルトの三種族で“東の同盟”が結成され、ハルカナ王国近辺で拠点が作られているはずです。いずれは同盟の仲介役である咲楽は顔を出すべきでしょう。


 しかし咲楽は、昨日クスタの言っていたことも思い出します。


“その一つのことに集中できない悪癖は直っていないな”


(…やっぱりやめよう。今はソエルの国おこしに専念しないと)


 他の問題に目移りしないよう、咲楽は目の前の問題に集中することにしました。





 グリフォンは孤児院から少し離れた地面に着地します。


「ふう、ありがとうございました」


 ここまで運んでくれたグリフォンにお辞儀をする咲楽。グリフォンも咲楽に会釈をして空に帰っていきました。


「ここが…サクラが最初に世話になった場所か」


 色々と思うところがあるのでしょう、ナキはしみじみと周囲を見渡します。この孤児院こそが咲楽の始まりであり、英雄たちにとっても全ての発端の地なのです。


「あ、リットくんとクグルくん!」


 咲楽は早速、孤児院の住人を発見しました。

 

「あれ?サクラねーちゃん!」

「どうしてここに…!?」


 剣が得意なリットと弓使いのクグル。

 森の中で食材採取に出かけていたのでしょう、二人は山菜の入ったかごを背負っています。


「お久しぶりです、二人共!」


「おう!」

「ん…」


 三人はハイタッチで再会を喜び合いました。


 今回の旅で知り合った二人の少年。

 最初の出会いは憎食みと遭遇するという散々なものでしたが、咲楽は地球から持ってきた娯楽アイテムを披露して良い思い出に塗り替えることに成功しました。それ以来、リットとクグルはすっかり咲楽に懐いています。


「二人共、元気そうで良かったです。中にハトさんいますよね」


「ハトならいるけど…今は客が来てるんだ」


「お客さんですか?」


「クロバ師匠が騎士数人を連れてきて、この辺りを調査してる。多分…憎食みの件で調べに来たんだと思う」


 リットとクグルはかわりばんこで今の孤児院の状況を教えてくれました。


(そっか…一匹いれば数匹いるかもしれない相手ですからね、調査は必要でしょう)


 まるで地球にいる黒い虫のような性質をもつ憎食みなので、騎士団が孤児院周辺の森を警戒するのは当然でしょう。


「クロバさんに詳しく話を聞きたいけど…これも後回しですね。一つのことに集中です」

 




 咲楽は我が家に帰る思いで孤児院の扉を開けます。


「あ、サクラお姉ちゃん!」


 すると小さな女の子が、咲楽を見つけるや体当たりを仕掛けてきました。


「よいしょ」


 少女の頭突きをしっかり抱きとめる咲楽。

 二度も同じ攻撃は食らいません。


「ハツメちゃん、お久しぶりです」


 その少女は咲楽が記憶封印解除の対象に選んだ、咲楽の数少ない大切な友達であるハツメです。まだ六歳の幼い少女ですが、前の旅で咲楽を元気づけてくれた大恩人でもあります。


「お久しぶり!どうしてここにいるの?」


「移動手段を手に入れたので、孤児院の様子を見にきたんです」


「おお~…じゃあこれからも来てくれる!?」


「ハツメちゃんが寂しくならないよう、なるべく立ち寄るようにしますよ」


「やったー!」


 無邪気に咲楽との再会を喜ぶハツメ。


「あら、サクラちゃん?」


 玄関の騒ぎを聞きつけて、奥から孤児院長ハトが現れます。


「ハトさん、お久しぶりです」


「どうしてここに?今はソエルに向かってるって聞いたけど」


「ハトさんに相談したいことがあって戻って来ました」


「私に?」


 咲楽はすぐ本題に入ろうとしました。久しぶりの孤児院ですが、今はソエルの事情もあるのでゆっくりしていられません。


「お前がハトだな」


 するといつの間にか咲楽の隣に並んでいたナキが、お構いなしで二人の会話に割って入ります。


「あら、その角の生えた子は…?」


「私はナキだ。家来のサクラとハクアからお前の話は聞いている、命の恩人だとな。主として一度会って礼を言いたかった」


「………」


 英雄を目の当たりにして身をこわばらせるハト。何度経験しても、ハトは偉い人とのアポなし対面に慣れることはありませんでした。

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