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第108話 【界外留学生キユハさん①】




 咲楽とキユハは地球にある田中家、咲楽の部屋に置いてある女神像の前に転移しました。


「やっぱり実家は安心しますね~」


 自分の部屋に帰還し一息つく咲楽。ハルカナ王国滞在中に一度帰還しているので、約一週間ぶりの我が家です。


「………」


 そして、初めて地球に足を踏み込んだキユハ。


「………………………」


 キユハの視界一面に広がるのは、未知でした。


 咲楽の部屋は特質した物のない普通の部屋ですが、キユハにとってみれば全てが意味不明。ぬいぐるみ、ベッド、時計、スマホ、カレンダー、鏡、筆記用具、制服、エアコン、リモコン………そして窓の外に広がる別世界。

 キユハはその全てに疑問をぶつけることが可能です。


 そんなキユハですが、最後に行きつく視線の先は学校の教科書が収められた本棚でした。


「キユハちゃん、ストップです」


「ん…」


 本棚に向かおうとするキユハの手を引っ張る咲楽。


「まずは私の両親に挨拶しましょう。今日一日泊まることも伝えないと」


「…それはそうか、過失」


 いつでも冷静なキユハですが、流石にこの状況で冷静を保つことは困難でした。


「それと賢いキユハちゃんなら分かってると思いますが、異世界については秘密でお願いします。この世界に魔法はないし、剣を振り回す騎士もいませんからね」


「分かってるよ。こっちとあっちの常識を混同させたりはしない」


 今は取り乱していますが、キユハはこの地球での身の振り方をしっかり理解しています。無暗に魔法を使用したり、別世界を話題に出したりはしません。


「それじゃあまず地球の服に着替えましょうか」


「承知…ていうか、いつから手を繋いでた?」


「いつからでしょうね~」





 キユハは長袖長ズボンに着替え、咲楽と一緒にリビングに降りました。


「お父さんお母さん、紹介したい人がいるんだけど…」


 咲楽はリビングで寛いでいる両親にキユハを紹介します。


「…彼氏か?」


 妙な言い方をしたせいで勘違いしているお父さん。

 今のキユハは短髪で男性のような服装をしているので、初対面の人からは男の子に見えるでしょう。


「キユハちゃんは女の子だよ」


 そこは咲楽がすぐ誤解を解きます。


「こちらはキユハちゃん。学校の友達で、()()から来た留学生だよ」


「へぇ、()()留学生か」


 字が違いますが、あながち間違いでもありません。

 キユハは日本文化に疎いので、その欠点をカバーするのに海外留学生は非情に都合が良い設定です。


「キユハちゃんを今晩だけお泊りさせたいんだけど、いいかな?」


「それは構わないけど…」


 お母さんが不思議がっていました。


「今日の咲楽は慌ただしいねぇ」


「そうかな?」


「キャンプの準備したり、大量の調味料を買い込んだり、苺持ってったり、唐突に友達を泊めたり」


「…」


 プレザントで半月近く旅をしていた咲楽ですが、地球の日時は動いていません。まだ四月のゴールデンウィーク初日のままなのです。

 咲楽は奇妙な時差ボケを感じていました。


「えっと、キユハちゃんね。自分の家だと思って気楽に寛いでいいから」


 混乱している咲楽を脇目に、お母さんは笑顔でキユハを歓迎します。


「いえ…お世話に…なります」


 慣れない敬語で答えるキユハ。

 普段は傍若無人なキユハも、ここでは借りてきた猫。大人しく周囲の人たちに従うしかありません。


「そうだ、お母さん。今日の夕ご飯なんだけど…」


 咲楽はお母さんに近づきキユハには聞こえない声で何かを伝えています。


「………なるほど?それは腕が鳴るわね!」


 話を聞いたお母さんは勢いよく立ち上がり台所に向かいました。


「ご飯の準備にまだ時間かかるから、適当に時間潰してて~」


 現在の時刻は地球時間で午後三時頃。

 夕ご飯までまだ時間があります。


「そうですね…じゃあキユハちゃん、一緒に図書館に行きましょうか」


 空いた時間を見つけた咲楽は早速、物資の補充に動き出します。

 必要な物は本の知識、食材、調理器具、アクリのお土産などなど。まずはプレザントに存在しない知識を得るため、図書館へと向かい本を借りることにしました。


「…好都合、この世界の書物がどんなものか見てやろう」


 キユハも地球の知識が集結した図書館に向かうのは願ってもないこと、いつもの調子を取り戻しつつ咲楽の後について行きます。

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