第10話 【娯楽を持って遊びに行きます】 □
最後に用意する物は娯楽アイテムです。
「まず何よりも、楽しいを知ってもらう必要がありますね」
咲楽は旅行雑誌を鞄に詰めました。
雑誌の内容は地球のオススメ観光地やグルメ、ツアー情報などが紹介されています。写真も多く張られているので、文字が読めない異世界人でも地球の楽しいを伝えられるでしょう。
「異世界人が読んだら凄まじいカルチャーショックを受けそうですが…」
地球とプレザントに共通する点はほとんどありません。プレザントは科学ではなく魔法で発展した、まさにファンタジーの世界。地球の写真を見て理解してくれるのか怪しいものです。
「あとは簡単に遊べるオモチャっと…」
さらに咲楽はトランプや小さな折り畳み式ボードゲームなど、手軽に遊べるアナログゲームなどを鞄に詰めこみます。
「そうだ、孤児院に寄るなら子供たちに美味しい料理をご馳走したいですね」
料理は咲楽の得意分野です。
お母さんから教わった料理技術を披露する時がきました。
「前の旅で私の料理を喜んで食べてくれたのは、ナキちゃんくらいでしたからね……これはリベンジです!」
地球の食材や調味料はプレザントには一つも存在しないので、料理ができる咲楽でもプレザントの食材だけで美味しい料理を作ることが出来ませんでした。ですが今は地球の物資は万端、今度こそプレザントの人たちが感動するような料理をご馳走するチャンスです。
「それと、勉強も大事です」
タイミングよく華岡中学は四月の連休に入り、宿題がどっさりと出されました。咲楽は地球の書物、国語、数学、理科などの教科書と問題集を鞄に詰めます。
「こんなところですね……重い」
結局、ものすごい荷物になってしまいました。咲楽は荷物をキャリーカートに縛り付けながら、ゲームや漫画に出てくるアイテムボックスを羨ましく思うのでした。
※
ゴールデンウィークの初日、時刻は昼頃。
衣服を旅用装備に着替え荷物もまとめ準備完了です。
「よし、行きますか」
咲楽が異世界プレザントに向かう時がきました。
滞在期間は未定ですが、手始めの目標としては孤児院の子供たちを喜ばせることです。子供を笑顔にできなければ、プレザントを笑顔にすることも不可能でしょう。
『サクラ……もぐもぐ。サクラが指名した人々ですが、もう記憶の封印解除は完了しています』
「おおー!」
女神様は咲楽の提案通り、咲楽がプレザントで親しかった人々の記憶封印を解除してくれました。
因みに本日のお供え物はデコポンです。
『ですがまだ思い出してはいないようですね。なにかきっかけがあればすぐ思い出すでしょう』
「はい!ありがとうございます!」
仲間たちとの再会を想像してにやけ顔になる咲楽。
それも今度は一緒に戦争を止めるのではなく、一緒に遊ぶのです。それが楽しみで仕方がないのでしょう。
『では、準備はよろしいですか?』
「はい!」
元気よく返事をすると、転移の光が咲楽の体を優しく包み込みます。はたして、今回の冒険はどのような物語が咲楽を待っているのでしょうか。