第96話 【国おこし計画 催し案】
咲楽が危惧しているのは、どれくらいの人がこのゲーム大会に注目してくれるのかです。
「大丈夫だろう、我が呼びかければ誰もが興味をもつ」
「そうですかね…」
「我に任せておけ!」
自信満々に胸を叩く国王。
現国王は長い戦争の歴史に終止符を打った唯一の王なので、歴代の王と比べても信頼の差は歴然です。そんな国王の放つ言葉には重みがあり、国民の誰しもが尊重してくれます。
「でも例えば、キユハちゃんみたいに研究で忙しい人は参加しに来ないと思うんです」
咲楽は本を読んでいるキユハを指さしました。
「士官学校を見学したのですが、みんな一生懸命に勉強していたので…」
「そうだのう…居住区に比べ、士官学校の者共は直向きに鍛錬を積んでいるからな。呼びかけても来ない者はいるだろう」
「出来ればそういった人たちも参加してくれると良いのですが」
より多くの国民が大会に興味を持ってくれるよう、咲楽はもう一押しするアイデアが必要と考えています。
「…その大会に出て、僕に得があるの?」
するとキユハが咲楽の側に寄ってきました。
騎士隊長のチェス対決に興味がなかったのでしょう、本を読みながら咲楽と国王の会話に聞き耳を立てていたようです。
「うーん…楽しいですよ?」
「不毛、無意味…それだけで研究の時間を割くことはしないな」
「ですよね…」
キユハが参加を決意する何か。それさえ思いつけば、咲楽も安心して大会開催を賛同できるのですが。
「優勝したら高ランクの女神石が生まれるってなら喜んで参加するよ」
「もー相変わらず研究のことばかり…」
キユハの言動を注意しようとする咲楽。
「………」
その時、咲楽に妙案が生まれました。
「…王様、今の精霊石の価値ってどのくらいなんですか?」
「む?」
急に話の内容が変わり不思議に思う国王。
「そうだな…キユハから提供された複製技術によって、FランクとEランク精霊石の単価はかなり安くなった。逆に高ランクの精霊石は自然界での採掘が難しくなり、価値が高騰しておる」
「値段で例えるとどれくらいですかね?」
「簡単に複製が可能なFランクなら1000Gでも購入できる。Dランクとなると……平均で1万Gくらいか。Cランクからは高級品だぞ、職人の技術によっては10万Gは下らん。Bランクなら100万G、Aランクとなると1000万G、Sランクは希少すぎて価値を測れん」
ハルカナ王国の物価は咲楽が住む国と同じくらいです。ハルカナ王国の100万Gは、そのまま100万円の価値があると考えても大丈夫です。
「キユハちゃん、いらない精霊石ってどれくらいあります?」
「…Aランク以下なら腐るほどあるよ。半端物、Sランク精霊石複製に失敗した低品質がね」
「それって貰ってもいいですか?」
「自由、サクラなら好きなだけ持ってっていいよ」
キユハとは思えない気前の良い発言。
国王は少し歯がゆい気分になります。
「サクラ、何を考えているのだ?」
そろそろ咲楽の魂胆が聞きたい国王。
そしてこれまでの情報を整理した咲楽は、勝ち誇った笑みを国王に向けました。
「…参加した人、負けた人、勝った人。大会とは参加してくれたみんなに利益がある方が燃えるんですよ」
咲楽はイベントを開く上で、最も重要な要素を見落としていたことに気付いたのです。これさえあれば、何も心配することなく大会を開催させることが出来ます。