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第1話 角兎と能力と魔法

 

 「ちょ!やばいってこれ、どーすんだよー!」


 飼い猫のシエルともう一度会うために、いざ異世界アースガルドへ!と運命の扉を通り抜けた俺は、現在数匹兎に追われ、朝日に照らされる草原の中で叫びながら風になっていた。


 初めに見た時は少し大きいくらいの可愛いらしいの野兎だと思っていたのだが、徐々に跳ねながら近づいて来ると一般的に日本にいる兎よりも相当でかかった。おまけに頭には小さいが角があった。


 その例えるならばハムスターだと思っていたのが実はカピバラだったぐらいのサイズ感で、もちろん兎であるからその跳躍力は目を見張るものがある。そのせいか俺がほぼ全力で走っているのにも追い着いてくるのだ。


「あれって絶対魔物じゃねーか、なんで転移先が魔物の近くなんだよ!異世界に来て早々兎の餌とか洒落になんねーぞ!」


 と、悪態を吐きながらも走りつつ必死に思考を働かせる。そういえばこれだけ全力で走ってるのにそんなに疲れてないのは、能力的な補正かなんかか?その辺の戦闘系の能力は適当に任せちゃったのが裏目にでたか。


 とにかく今はこの状況をなんとかしなければとステータスプレートを開いた。

 どうでも良いけど、とにかくって漢字では兎に角って書くんだが元々は仏教語の「兎角亀毛」からと考えられている。 ただし兎角亀毛の意味は、兎に角や亀に毛は存在しないもので、現実にはあり得ないものの喩えとして用いられたり、実際に無いものをあるとすることをいったもので、意味の面では関連性が無く、単に漢字を拝借したものである。らしい(web調べ)。だからこの場合は兎に角があるからあり得ないものじゃないじゃねーかとか思ったりするわけで、って本当にどうでも良いな。


 「ステータスプレート!」

 

 走りつつも言葉を発すると目の前に長方形の3Ⅾホログラムのようなものが出てきた。その中はいくつかの項目に分かれていたが今は確認してる暇はない、えっとスキルスキルはっと…はぇ?

 スキル欄を見てみるといくつかのスキルが並んでいる。


常時発動型能力(パッシブスキル)

【翻訳 身体能力強化(微) 物理耐性(微) 魔法耐性(微) 〇〇〇〇】 

任意発動型能力(アクティブスキル)

【対話Lv1 鑑定Lv1 収納Lv1 索敵Lv1 〇〇〇〇Lv1】

 

 見えないスキルもあるし、なんだか微妙だと思い今度は魔法欄を見てみる。


魔法

【無属性魔法Lv1 時空魔法Lv1】

 おぉ、スキルはなんかショボいけど魔法はかなり有用そうだ。


 あ!収納の中にはなんか入ってないのか!?すぐさま確認する。

【回復薬×5 魔力回復薬×5 木剣×1 金貨×1】

 こっちはまたなんか微妙だ…フォルティナめぇ、任せてくださいっていってたじゃねぇか。

 最低限収納と鑑定はあったけどさぁ…

 

 とりあえず多少補正があるにしても体力には限界があるし、こっちの体力があの兎よりも先に無くなってしまったら餌食になるので逃げ続けるののにも限界がある。

 せめて木剣でも良いからと収納から取り出して、右手に持とうとするが収納ってどうやって発動すんだよ!

 右手に力を入れても発動する気配もないし、使い方わかんねーよ!


 くそ、何かないか…何か…あ、コレって使えるのかな。そう思い一縷の望みに賭けてみることにした。


「ま、待て!」

 

 追ってきていた角兎へと振り返り、俺は《対話》を試みた。

 すると大きな角兎はピタリと追いかけてくるのを止めた。おっ、これはスキルが発動したのか?


「きゅい?」


 角兎はその大きな身体を後ろ脚で支えて可愛らしく鳴き小首を傾げた。

 ん?これはどうなのだろう…それから数秒経っても襲ってくる気配はないので多分対話出来ているのかな。


 ジリジリと近づいてみた。


 角兎は今度は反対側に首を傾げる。

 

 そして目の前1メートルのところまで来て気付いた。

 あ、こいつそんなにでかくなかったわ…精々1メートルとちょっとってところか、跳ねて追ってきてたから大きく見えていたみたいだ。

 それによく見ると本当にただ角の生えただけの兎で、こちらをジーッと見つめるそのつぶらな瞳はとても可愛いらしい。

 その瞳を見つめながらおそるおそる聞いてみる。


「お前人間を食べたりするのか?」


「きゅい?」

 

 またも角兎は小首を傾げる。


「…人間は食べないのか?」


「きゅ!」


 今度は返事とともに一瞬だがコクンと頷いた。


「はぁー」


 安心してしまったからか、さっきまで走っていたからなのか急に身体から力が抜けへたりと座り込んでしまった。

 すると角兎は心配?するかのように近づき鼻先でふんふんと匂いを嗅いできた。どうやら本当に襲う気はないみたいだ。

 両手で背中を支え両足を真っすぐに伸ばしながら再度角兎に問いかける。


「どーして俺を追いかけてきたんだ?」


「きゅきゅ!」


「逃げるから遊んでると思った?」


「きゅ!」


「なぁ、お前親は居るのか?」


「きゅ!」


「あぁ、あっちの森の方にか。そうだ、人間の居る町みたいなのって何処かわかるか?」


「きゅ~、きゅっ!」


「へぇ、あっちに街道があるから道沿いに行けば着くのか、サンキュ」


 お礼を言って頭を軽く撫でると、角兎は気持ちよさそうに目を細めた。


「でもちょっと疲れたからもうちょっとしてから出発しようかな」


 それから草原の心地の良い風を受け、角兎のふわふわの毛並みを数分間堪能していたら、ふいに角兎が鼻をスンスンとならし立ち上がった。


「ん?どうかしたのか?」


 角兎は森の方を向いているようで、確認すると多分親なのだろうか二回りほど身体が大きく角の長い角兎が二羽こちらを見つめていた。遠くの方で親の角兎がきゅい!と鳴き、それに反応するかのように俺の隣に居た角兎もきゅ!と返事をした。


「きゅきゅ」


「ん、もう行くのか?わかった」


「きゅい」


「あぁ、また会えるさ」

 

 そういうと角兎は親の方へと走り去るが、一度止まってこちらをみて鳴く、それに軽く手を上げて返事を返してやると満足そうに親兎と共に森へと帰っていった。


「はは、結構良いじゃないか異世界」


 これからの色んな出会いにも心踊らされるが、まずはシエルと再会しなければと思い立ち上がって、角兎の示してくれた方角へと歩いていくと案外すぐに街道を発見することができた。


 角兎は対話が効いたから良かったが、今度また魔物が現れたらヤバイなと考え、歩きながらもステータスプレートの内容を確認することにする。


 するとヘルプ欄があり、様々な事が記載されていたがまずは魔法やスキルに関する部分を重点的に見ていこう。と思ったら《初めに》と書かれていた部分があるのでそこから読むか。

 

《初めに》あなたのシエルへの思いは本物だと感じましたので、私もあなたを応援しています。と、そのような文章から始まり、スキルプレートの使用方法などが書かれていた。

 

 このステータスプレートは出現させたいと思えば、言葉に出さなくても大丈夫とか。ステータスプレート自体は本人の想像しやすい形で表れているのだとか。はたまた システムを創ったのは私だと多分フォルティナの上司である神様の自慢話などがあったが、へーっと全く感心してない声で軽くいなして本題の部分にしっかりと目を通す。


 まず常時発動型能力は何もせずとも常に展開されているらしいパッシブスキルと、本人の意思で発動するのが任意発動型能力のアクティブスキルで、このアクティブスキルの方は使用するのに慣れるまでは強く念じなければ発動しないと書いてあった。


 次に魔法なのだが、属性魔法を使用するには体内魔力(オド)を感じることが必須条件で、次に自然魔力(マナ)に干渉する精神力が要るか、もしくは詠唱が必要なのだと云う。しかし魔法の中でも時空魔法と無属性魔法だけはまた別になっており、想像力によっても補完できるらしい。ちなみに収納はスキルの欄にあり、魔力も使わないが一応時空魔法の一種で収納のLv×自身の魔力量によって内容量が増えていくのだと。

 

 想像力で補完できるならと、試しにゲームやラノベから引っ張り出してきた知識によって収納魔法を発動してみる。すると意外とすんなり発動できてしまったので、一応無いよりはマシだろうと思って収納の中から木剣を取り出して腰に佩いた。


 ふむふむ、スキルや魔法に関して大体は分かってきた。ついでに鑑定スキルも難なく使用することが出来た。見えないスキルに関して鑑定するも何もわからないままだったが、ヘルプ欄にもまだスキルや魔法についてなど書いてあるし、その辺に関してはまた追々考えるか。

 

「お、なんやかんや確認しているうちに街に着いたみたいだな」


 立ち止まり遠くを見ると、まだ少しばかり距離はあるが、大きな外壁に囲われている街があった。

 現代日本に生まれ育った自分としては、このように外壁に囲まれている街など外国の中世や物語の中でしか知らなかった。

 

 期待と不安を感じながら俺は地面を踏みしめ、街へと歩き出したのだった。


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