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第10話 孤児院防衛戦

 

 ふわふわとした頭の裏の感触に目を覚ますと目の前には双丘と木漏れ日と青空が広がっていた。


「あ?」


「…ん」


 頭を少し動かすと頭上から声が漏れる。場所は少しばかり丘の上の木陰にて、俺はどういうわけか寝ているネロに膝枕をされていた。

 

「これはどういう状況なんだ…あー、そっか俺初めての魔法に興奮して」


 そう、初めて魔法が使えたのが嬉しくなり連発していたら意識を失ってしまったんだっけか。

 もし魔物と戦っている時に魔力切れを起こすと厄介だな、これからは気をつけないといけないな。

 ネロにも迷惑をかけてしまったなと、そんな事を考えて彼女を見ると目尻から一滴の涙が滴っていた。

 何となしに右手を上げて拭ってやると少しくすぐったそうにして、やがてその大きな瞳を開けると俺と目が合った。


「…ご主人様?」


「?…よう、おはよ。なんか迷惑かけちまったみたいで悪かったな」


「…えっ?あー!お兄さん駄目じゃないの、初めてであんなに魔法使っちゃ!そりゃ倒れもするわよ。今回は私が居たから良かったものの次からは気をつけてよね」


 起き上がって俺はネロに礼を言うと、ハッと彼女は何かを誤魔化すかのように捲し立てて糾弾してきた。


「おー、気をつけるよ。それにしても…」


「な、なによ!?」


「喋り方崩れてるぞ?いつもの余裕そうな雰囲気は何処にいったんだ?もしかしてそっちが素なのか?」


「え?嘘…いいえそんな事…ない、わ」


「でも…そっちの方が似合ってるぜ」


「…あの…私ね、ううん、なんでもない!うー、なんでもなくはないけど…そ、そろそろ日も沈むから早く帰りましょ」


「どうしたんだ?」


「お、おう?あー、でも少し待ってくれもう一つの魔法だけでも確認したいんだ。今回は倒れたりしないからさ。な、一回だけ頼むよ」


 焦るようなネロに促されるが、俺の魔法の確認だけさせてもらうことに了承を得た。


 その後約束通り一回だけの発動だけだったのだが、どんなものか把握は出来た。だが中々に使いどころの難しい魔法だ。


 木陰を後にして街へと戻ってくる頃には、ネロの様子も落ち着いてきていたが、どうにも気まずい雰囲気が漂っていた。

 後はこの通りを真っすぐに行って右だっけか…と、もう辺りは徐々に日が落ちてきて街の明かりがぽつりぽつりと点き始める。

 

 ネロと並んで宿への道を曲がろうとすると、彼女はフード越しの耳をピクリと動かしグルリと身体ごと反対側を睨みつける。俺もネロの反応に釣られ見ると分かれ道の方向へ、遠目にだが数人の人影が歩いて行くのが見えた。

 

「どうしたんだ?」


「私行かなくちゃ」


 言うが早いかネロは一瞬で気配を希薄なものにして、音もなく駆けていく。


「おい、待てって」


 今までのネロの雰囲気とは違うものに若干の焦りを感じ、彼女の後を追う。


 薄暗くなった路地裏に躓かないようにネロの後を追うと、着いた場所は孤児院だった。

 遠目に見えた人影は昨日ネロと別れる前に見た金持ちの取り巻きだろう、今は孤児院から漏れる光に照らされているお陰で、その姿がぼんやりとだが窺える。


 先行していたネロに追いつくと、彼女は男たちからは気付かれないように隠れて様子を見ていた。

 ドン、ドン、と孤児院の扉を叩く音と男たちが扉へ向かい何か、「出てこい」「扉を開けろ」などと叫んでい。

 これは何か事情があるのか、首を突っ込んでいいかわからないが聞かなければいけない事だと思い、なるべく小声で彼女に話しかけた。


「なぁ、あいつらはなんなんだ」


「…あいつらはコスムカの使いの様なものよ」


「コスムカ?」


「コスムカは―」


 ネロが説明をしようとしたその時、バァン!とけたたましい音と孤児院からキャーと悲鳴が漏れ聞こえた。瞬間走り出したネロと共に俺も向かう。


「面倒くせえことしねぇで最初からこーすりゃ良かったんだよ」


「ヒッ」


「おーおー、せっかくの孤児院が壊れちまったじゃねーか」


「ハッ、元からオンボロだったのがいけねーんだ」


「違ぇねぇ、まーいいさ今夜は楽しくなりそうだな、ヘへヘッ」


 三人の男たちはズカズカと壊れた扉を踏みつけ、無造作に中へと入っていくと何が面白いのか馬鹿みたいにに笑う。

 俺達が入り口に着くと部屋の隅で震えて固まっているシスターのシャルと4人の子供達と、そこに近づく男たち。テーブルの上には夕食時だったのだろう手つかずの食事が並んでいた。


「…ふっ!」


 ネロはその状況を見て、軽くジャンプするとその間に割り込むと先頭に居た男に蹴りを入れると、彼らは突然の出来事に回避する間もなく直撃して数メートル滑る。


「お兄さん今のうちに皆を!」

 

「わかった!シャル、皆も無事か!?」


「ショウゴさん!」


「「兄ちゃん」」


 すかさずシスターのところへ向かうと皆涙目になって震えていたが、知っている人間が来たからかどことなく安心した表情をしたが、すぐにその表情が曇る。

 

「おうおう、痛えじゃねーか」


「チっ、俺もあんまり状況が分かってないけどここに居たら危ないからあんたらは逃げてくれ」


「…は、はい!」


 シャルはそう言うと震える足で立ち上がり、子供たちを連れて逃げていく。

 俺は立ち上がった男たちを即座に鑑定した。


ガスクト

種族 人間 

年齢 35

Lv4

STR17 VIT12 DEX6 AGI5

INT3 MND2 LUK4

【スキル】

剣術Lv3 威圧Lv2 筋力上昇(小) 


バーミヤ

種族 人間 

年齢 24

Lv2

STR10 VIT7 DEX7 AGI11

INT6 MND3 LUK5

【スキル】

短剣術Lv2 敏捷上昇(微)  


イラーク

種族 人間 

年齢 22

Lv2

STR9 VIT6 DEX9 AGI13

INT8 MND11 LUK7

【スキル】

杖術Lv2 魔力上昇(小) 隠密Lv3 

【魔法】  

突風(エアロ)


 鑑定の結果、俺の能力値よりも随分と低いみたいで内心は物凄く安堵した。いやね、だって見るからに輩というか、日本で言うところの喧嘩屋みたいな、ねえ。でもこれでこちらも強く出ることが出来るってもんだ。スキルの上昇がどれぐらいの幅なのかは分からないがこれなら。


「お前ら俺達が誰かわかってんのか?あぁ?」


「あー、こんな夜に孤児院に押し掛ける犯罪者か?」


「…ぷっ、ふふ、お兄さんそのまんまじゃない」


 わかってる限りの事をそのまま答えたら、ネロのそれまで張り詰めていた空気が柔らかくなり、声をあげて笑っていたが、奴さん達にはお気に召さなかったらしい。


「てめぇ!俺達を馬鹿にしてんのか!!」


「お前ら、やっちまうぞ!」


「おらぁ!」


「お兄さん来るわよ気をつけてね」


「ああ」


「おらぁあ!」


「はっ!」


 得物を抜き放って威勢よく飛び出してきた二人に対応するため一歩前へ、と思ったがここで暴れたら孤児院が大変なことになってしまうので、先に突っ込んできた長剣の男の袈裟斬りを重心を左へとずらして躱すとともに反転して左拳の裏拳で顔面を殴ると壊された扉から外へと出る。


「あんたはこっちよ」


「おらおらおらぁ!」


「あらあら、全然当たらないじゃない、ほらこっちに来なさい」


「てめぇ!女だからって調子に乗んなよ、待てこらぁ!」


 短剣術の男の相手はネロが相手をしてくれているみたいだ。さすがに敏捷上昇があるので素早いがネロに掠るどころか完全に見切られていた。ネロも俺の意図に気付いたみたいで挑発し外へと誘導する。


 外へ出ると俺が裏拳をお見舞いしたせいで鼻血を垂らしながら男が追いかけてきた。


「待てやこらぁ、ぶっ殺すぞ!」


「おー怖い怖い、でもやれるもんならかかって来いよ」


 スキルの威圧のせいか、俺が喧嘩慣れしてないからかはわからないが少しだけブルりと震えるがなんてことはない。


「はっ!おらぁ」


「よっと、ほい、はっ」


「がはっ」


 左からの横薙ぎの一撃をバックステップで躱すと、斬り返す剣の出どころから男の手首を狙って蹴り落とし、正中に突きを放つと男は一瞬にして地面へとダイブした。


「ふう、そーだ!ネロ!…は大丈夫そうだな」


「ふん、こんなやつくらいどうってことないわよ」


 彼女の方を見ると傷一つどころか息一つ切らすこともなく、短剣の男が沈んでいた。

 と、あと一人いたっけかやばいと思い、急いで孤児院の中へ戻ろうとしたが男は入り口付近で杖を構えたまま唖然としていた。


「ガスクトが…まじかよ…」


「どうする?まだやるなら相手になるけど?」


「ちっくらえ!突―」


「てい!」


 舌打ちし杖を構え、今にも魔法を放ちそうだった男の背後へ、どうやってこの一瞬で回り込んだネロは可愛らしい掛け声で男の意識を刈り取った。


体調崩して全く書く気が起きませんでした。すみません。


引き続き、評価、感想、ブクマよろしくお願いします。

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