悪魔と神父の話
どうして俺は、教会の裏にある神父のいえにいて、どうしてその神父に朝食を振る舞われているのだろう。
拘束具をつけられている訳でもないし、飲み水が聖水という訳でもなければ、十字架がテーブルの上に置かれている訳でもない。
神父はただ俺の対面に座り、俺に出した朝食と同じものを食べている。
「おい。」
「なんだ。」
「なんだと言いたいのは俺の方だ。なぜ、ここに俺を連れてきた。」
「・・・悪魔と神父が人々になんと言われているか、知ってるか。」
「聞いたことぐらいはあるが。」
曰く、悪魔は孤独で、下賎な生き物である。仲間内でさえ群れることはなく、その上人を騙し地の底へ堕とす。
曰く、神父は孤独で、神聖な者達である。その身は神に捧げられ、生涯一切の穢れもなく人を天へと導く。
両者は孤独だが決して相いれぬ存在であり、この世の善と悪の象徴であると。
「神父である私は、人々に無償の愛を等しく平等に与える存在でなくてはならない。かつては一人の女性を愛そうとしたこともあったが、自分の立場が明確なものになっていくうちに諦めてしまった。」
「惨めなことだ。」
「あぁ、本当に。同じ孤独でも私と君は全く違う。それでも、仲間が欲しかったのだ。君も知っての通り人間という生き物は酷く、弱い生き物だ。それは神父だとて例外ではない。寂しさを、紛らわしたかったのだよ。」
「それで悪魔を招き入れるとは、馬鹿な神父も居るものだな。」
「魔が差した、というやつだよ。」
「俺は人間が嫌いだ。人間はすぐ、自分の本質から目をそらすだろう。進歩と生産性の無さには毎度呆れる。お前のような馬鹿が多ければもう少しまともだろうにな。」
そう言って啜った神父の作ったスープは、存外に美味かった。




