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小話集  作者: ライ
5/12

食卓

テーブルには一人分の食事。一人の食卓。

独身の食卓は一人。夫婦なら二人。子供が居るなら三人、四人、エトセトラ。


私の食卓は一人。両親、祖父母は居るし、姉兄も三人いるけれど、それでも一人。それはそれぞれが妙に合わないから。

たまに合うと、彼らはいいはけ口を見つけたとでもいうように私に話しかけてくる。両親、祖父母は世間話程度で何度も聞いた話が反芻することもあるが、姉兄の話は聞いていて飽きない。と、食後の紅茶の用意をしたところで。


「やぁ。」


と。透る声がかかる。身内の贔屓目を抜きにしても整った容姿をした彼は、この家の長男である。変人一号とは、私の友人が彼の話を聞いた時につけた呼称で、友人曰く、姉兄にまともな人が誰一人として居ないっていろいろと心配なんだけど、大丈夫?君の家パンドラの箱だよね、と。何を失礼な、とは言わない。友人の言うことが私にも分かってしまったから。


「また新作ができたよ。」

「それは・・・喜ばしいことですね。」

「ありがとう。ところで最近は何をしていたのかな?」

「先日、庭の梅の花が一輪咲きましたので、それを押花にして栞に。」

「それは良いね。梅の花を愛でる姿を想像するだけで高揚するよ・・・。新作が思いついた。僕はこれで失礼するね。」


彼は重度のシスコンだった。ちなみに新作というのは私をモチーフにした人形の衣装のことで、人形の衣装よりは時間がかかるが、後から私用にも作ってくれる。今では私服の八割が彼の作品である程に。ネグリジェを渡してきた時は流石にどうかと思ったが、彼はなかなかにセンスが良い。

一息ついてティーカップに角砂糖を入れる。


「あ。」


珍しい、長男に会った上に次男の彼が部屋から降りてくるとは。

長男とはほとんど同じ容姿をした彼は所謂双子というやつで、長男のような煌びやかさはないものの、所々の行動は酷似している。趣味趣向も含めて。

さぁ、できればここで察してほしいのだけれど、衣装作りが兄の役目であるのならば、次男である彼の役目は人形を作ることだ。

つまりは彼もシスコン。ちなみに彼は人形作りの関係もあって引きこもりだが、ニートではない。通販サイトを設営してレジン等で作ったアクセサリーを販売しているのだ。試作品をよくくれるので私の持つアクセサリーやストラップは全てが彼の自作だ。


「先程兄様が新作が思いついたとおっしゃっていましたよ。」

「本当?じゃあ僕も新しい人形を作らなくちゃ。」

「後でコーヒーをお持ちしますね。」

「ありがとう。」


ティーカップに2杯目をそそいで角砂糖を2つ落とす。


「あら。」


あぁ、今日は本当に珍しい。彼女にまで会うことになるとは。


「おはようございます、姉様。」

「お早う。紅茶、私にももらえる?」

「はい。」


立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花。美を体現したような彼女はこの家の長女で、兄達よりも歳上になる。はたから見ていれば美しいだけなのだが、美しいものには裏がある。

彼女はストーカー気質なのだ。愛する人の捨てたものは全て回収して保存し、ボイスレコーダーに音声も保存、カメラを仕込んで盗撮等々・・・口にすればキリがない。

そんなストーカー行為の対象はというと、彼女の先輩でその生徒会長をやっている人だ。スートーカーの一人二人、居てもおかしくはないと言えるレベルの人気がある。

とはいえ、ストーカー行為というのはされて心地のいいものではないだろうと思っていたのが、どうやら似たもの同士は惹かれ合うらしい。かの生徒会長もまた、まぁ、少々歪んだ人だった。運命的な出会いを果たしたようでなにより。


とまぁ、ここまでが私が彼女にどんな家族なの?と訊ねた時に返されたとあるあさのことなんだけど・・・。うん、やっぱり友人として色々と心配なもんだから、彼女の家に遊びに行った時、彼女が居ない間に結局一番ヤバいのは誰なの?って聞いてみたわけさ。


そしたらまぁ、家族全員口を揃えて彼女だとさ。家族は似るね。

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