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小話集  作者: ライ
3/12

勇者が嫌いな魔物の話

子供の頃から勇者と呼ばれる人間が大嫌いだった。人間の正義の代行者。魔物を悪だと決めつけて誰であろうと問答無用で斬り捨てる。

それで何人の魔物の命が奪われただろうか。


勇者の一行の中には、勇者に助けられたからと寝返りこちらに刃を向ける者がいる。しかし、勇者の気まぐれに過ぎないその行為で今までの恨み全てを捨てるとは、かなりの世間知らずだと見える。彼が私の友人として存在していた頃は、そんなことは思わなかったのだが。


しかし、そうだな、恨みこそすれ憎みきれないのが奴の嫌なところだ。我々の希望が唯一にして絶対の力を持つ魔王様であることと同様に、人間達の希望は聖剣と神の加護を受けた勇者一人に集中している。人間にとっての善が奴にとっての善であり、人間にとっての悪が奴にとっての悪なのだ。


奴も一人の被害者であるということは理解している。守るべき存在を、時には恨みたくなることもあるだろう。人間は愚かな生き物だから。だが、


「人間なんか、人間なんか、人間なんかっ!」


動かなくなった人間の死体をただひたすらに突き刺す奴を前にして思う。それは間違っていると。

きっと堕ちてしまうことが奴にとっての最適解。一番楽な道なんだろう。

でも、それは絶対に認めてやらない。おれはアイツが嫌いだから、アイツの悪など認めてやるものか。

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