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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪の幹部は正義のヒロインたちとイチャラブしたい?

作者: 龍ヶ崎太一


『心を照らす金色の太陽! リュミエレイユ!』

『心を導く白銀の月! リュミエルーヌ!』

『私たちは光の姫騎士。リュミエール・シュヴァリエ!』


 二人の少女が華麗なポーズを決める。

 片方は肩まで届くショートの金髪で、白とピンク、金色を基調にした衣装。

 もう片方はポニーテールにまとめた長い銀髪、黒と青、銀色を基調にしている。

 スカートと袖の長さや、細かいアクセサリーなどが異なる以外は、ペアルックと言っていい。

 映像の向こうで、凛々しい姿を見せる二人を微動だにせず見ているのは一人の青年だった。

 カラスのような仮面で顔を隠し、黒いマントと装束に身を包んでいる。

 彼女たちが纏う金と銀のコスチュームがそうであるように、これが彼の正装だった。

 映像は、彼女たちが戦っている場面に切り替わり、黒一色に身を包んだ雑兵たちを流麗な動作で次々と打ち倒していく。

 だが殺しはしない。”正義のヒロイン”たる彼女たちにとっては暗黙のルール。

 そして、本来ならば、この現状に対し怒りと憎悪をあらわにしなくてはならないのだが……。

「お兄様。また見ていらっしゃるのですか?」

「わっ!?」

 背後の自動ドアが開き、冷め切った声をかけられ、慌てて画面の再生を止めた。

 振り向いた視線の先にいるのは、ゴスロリ服に身を包んだ黒髪の少女。

詩杏(しあん)か、脅かすなよ」

「今の私は”エクリプス”です。それで、我らノワール四天王の”黒騎士コルボー”さまともあろうお方は、何をされているのでしょう?」

 エクリプスの金の目は光を発さず、完全に見下した目つきでこちらを見ていた。

「リュミエール・シュヴァリエの研究に決ま……」

「という口実で、彼女たちの戦いの動画を様々なアングルで視姦し、日々の業務で溜まった性欲を発散するための材料に」

「するかぁっ!! 生々しい喩えしてんじゃねぇっ!!」

 思わず叫ぶ。半分は当たっているが、エクリプスの言うような真似まではしていない。

「ところで、次の作戦案を確認していただいてよろしいでしょうか? 本来の目的はこちらですが」

「わかった、データよこしてくれ」

 エクリプスが持っていたタブレットを操作すると、コルボーが再生していた画像データの上から作戦の計画書が表示される。

「リュミエール・シュヴァリエ奴隷化作戦?」

「はい。戦闘用合成生物研究部に協力を仰ぎ、触手状の生物とオーク型の怪人を大量に生産し、シュヴァリエたちを捕獲。

 もちろん、お兄様が彼女たちが普段通う”陽ノ丘学園”に潜入して調べ上げたデータをもとに、家族及び友人を人質にとることも忘れません。

 そして、捕獲後は先の合成生物との行為及び、神経系に作用する薬品によって次第に精神を侵していき『くっ、殺せ』『くやしい……』『心までは屈しません』などのセリフが出れば8割方こちらの勝利は揺るがないでしょう。

 最終的には快楽に堕ちきった状態まで追い込み、お兄様の奴隷として永遠の忠誠を……」

「却下」

 得意げに作戦内容を説明するエクリプスをわずか二文字で撃墜した。

「い、いったいこの完璧なプランの何がご不満だというのですか! 詳細な説明を求めます! 黒騎士コルボー!」

 コルボーはため息を一つ吐き、カラスの仮面を外す。

 エクリプスと同じ黒髪と金の瞳を持ち、彼女とそう変わらない年頃と思われる少年の顔が現れた。

「じゃあまず、こっからは黒羽玲(くろばれい)、お前の兄貴として詩杏に聞かせてもらう。どっから手に入れたそんな知識。というかそれ系のゲーム?」

「鉄火のおじさまにおねだりをしたら、作戦立案用の参考資料として、経費で落としてもらえました」

 古参幹部の一人”鉄火のウルス”。エクリプスもとい詩杏のことは姪っ子のように可愛がっているのは玲も知っていた。

「贔屓しすぎだろ、あのオッサン。というか歳考えろ……」

 そして、年齢制限のあるゲームをやり込んだ末のこの作戦を思い至ったようだが、玲にとっては問題がありすぎる。

「問題点一つ、あの二人は子供の憧れのようなものだ。そんな真似をすれば世論を敵に回す。

 二つ目、ノワールの総意はともかく、俺の目的は侵略でも破壊でもないし、過度に目立つ作戦は控えたい。

 そして三つ目、俺がリュミエール・シュヴァリエにそんな下劣な真似をしたくない。これでいいか?」

「それが悪の幹部が言う台詞ですか! 卑怯もラッキョウも大好物なのが悪の組織というものでしょう!」

「俺らが入った理由忘れたか?」

 黒羽玲、詩杏の兄妹は両親を事故で亡くし、その後身寄りがなく生活にも困っていた。

 頼れる親類のいない二人にとって身を寄せた先が、悪の組織ノワールなのだ。

 玲は戦闘員から始まり、本人も知る由のなかった戦闘技術が開花していき二年で幹部の座にまで上り詰めた。

 そして、見所のある戦闘員、研究員を自分の派閥に抱え込み、組織そのものを乗っ取る機会を虎視眈々と狙っているのだが

 玲をそうさせるに至った動機というものは……、一言で言えば『恋』だった。

「そうでしたね。わざわざ潜入任務を請け負って学園に通っているのも、変身前のあの人達とお近づきになりたかったからでしたね。

 潜入調査任務という名目があれば、学費は組織が受け持ってくれますから」

 詩杏は呆れモード全開だ。

「悪かったな。けどよ、付き合ったりその後色々は、好きな人とじゃなきゃかわいそうだろ」

「相手役に自分をねじ込もうとしてるって魂胆がなければかっこいいセリフなんでしょうね。

 しかもどっちも可愛いから、組織のトップ取った暁に、裏から両方の重婚を許可する法律を成立させた上で、両手に花を娶ろうなんて考えてなければ」

「と、とにかく当面はあの二人に直接関わるのはなし。ただ、他の四天王が立てた作戦をシュヴァリエにそれとなく学園でリークして防がせる。

 あとはこっちに不都合な企業、他にも新興宗教と詐欺団体を叩き潰して、溜め込んでる金を奪い取る。もちろん裏帳簿を警察に匿名で送り込むのも忘れずにだ」

 資金調達は目立った成果として認められやすい。もちろん戦闘任務もそれとなくこなす。

「それと、今月お前の誕生日だったな?」

「それが何か?」

「戦闘員の259号。今月づけでお前の補佐に任命したから。近いうちに新しい命名もあるだろう」

「えっ!?」

 詩杏は顔を真っ赤にしていた。

 259号の戦闘員、それは陽ノ丘学園に通う学生であり詩杏のクラスメイトであった。

 一人より兄妹の方が怪しまれる可能性が低いとみて、二人で学園生活を送っているという便宜上の理由になっている。

 玲の本音は学校にきちんと通い、いずれは表社会に戻って欲しいからであったが。

「な、何を勝手にそんな身内人事のような真似を! こここ公私を混同するような真似をされては、お兄様の幹部としての勤務態度が」

「これくらいはさせてくれよ。お前の好みのプレゼントなんてこれしか浮かばなかったんだから」

「だ、だだだだいたい私は、かか彼のことなんて、実家がノワールの出資者であってその財力を利用できる相手だとしか見てなどいません!

 決して彼がそういうのを鼻にかけない気さくな人だとか、サッカー部で頑張ってる姿が爽やかでカッコいいなと思ったわけではなくてですね!」

 この兄にしてこの妹ありだった……。

 そして、その259号がノワールに所属した理由というのは……。

「詩杏がエクリプスになるのを見て、悪の組織に入ってるのはきっと理由があって力になりたいなんて、いい奴じゃないか。

 脈ありなんじゃねーの? 俺的にはそいつが家督継いで、詩杏が寿退社してくれれば万々歳だぞ?」

「きっ、気が早すぎますお兄様っ!!」

 詩杏の顔はゆでダコのごとく、耳の穴から蒸気を噴射していた。

 こうして、残念な悪の幹部とその妹は今日も野望を成就すべく、作戦を練っていた。

 果たして幹部の兄が正義のヒロイン二人と恋愛成就できるのか? 呆れ果てている妹はどうするのか? 答えは誰も知らない。


ふと思いついたネタで箇条書き程度の山なしオチなし意味なしな代物ですが、笑っていただければ幸いです。

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